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    企業研究
     - ライオン・ネイサン キリン・グループの中核的存在  [2008/3/18]

企業研究

巨大企業へと発展を続ける
キリン・グループの中核的存在

 ライオン・ネイサン社は、豪州ビール市場の約半分のシェアを誇るキリン・ホールディングス傘下のビール会社だ。キリン・グループ初の大型の海外投資として1998年、1,000億円を出資し、同社の46%の株式を取得している。2007年の売り上げは1,967億円、営業利益は470億円に上り、グループ全体の営業利益の約4分の1を占めるまでに成長している。同社のエグゼクティブ・ダイレクターとして舵取りを行うキリン・ホールディングスの三木文夫氏に、ライオン・ネイサン社、そしてキリンの経営戦略について話を聞いた。

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豪州を軸に国際化・多角化
 キリン・グループの豪州進出は、WA州パースでビール原料の麦芽を製造するためにキリン・オーストラリア社を設立した1976年にさかのぼる。「当時のキリンは国内のビール・シェアの6割以上を誇り、原料の供給が間に合わないこともしばしばあった。そのため、上流のオーストラリアまで原料を確保しに行く必要があったんです」(三木氏)。これが豪州進出のスタートであり、同社は現在も日本向けに麦芽を製造している。
 ライオン・ネイサン社の買収は98年。これは、80年代後半に競合メーカーのアサヒ・ビールが発売した銘柄「スーパードライ」が大ヒットし市場を席巻した、いわゆる“ドライ・ショック”を機に、キリンの国内ビール市場でのビジネスが頭打ちの状況に転じたことが大きく影響している。「さらに98年は、“ドライ・ショック”よりも強烈な事件が起きた年。キリンがビールにおけるトップ・シェアをアサヒに奪われた年なんです。そして、当時のトップの出した戦略が、海外に出ていくことでした」(三木氏)。
 90年代以降、少子高齢化が進行し市場自体が頭打ち傾向にある日本で同社はビールのシェア争いをするよりも、事業を多角化にシフトさせるという展開を模索。その1つがその後に続くM&Aによる海外進出の布石となった豪ライオン・ネイサン社の買収だった。当時、ちょうど買い取り先を探していた同社の株式の46%を1,000億円で取得している。
 また、15年ほど前まで国内ビールのみで売上全体の約9割を占めるという状況だったのが、この多角化展開によってグループ全体の売上構成比は大きく変化。2007年の売り上げ構成比は、酒類事業66%、飲料・食品事業23%、医薬品事業4%、不動産やホテル開発事業、アグリバイオなどその他事業7%となっている。
 さらに、現社長が就任した2006年以降は、M&Aによる企業拡大をより積極的に推進。06年の国内ワイン・メーカー、メルシャンの買収を皮切りに、07年に3,000億円規模の買収を2件実施。医薬・バイオ・化学品企業の協和発酵工業、そして豪乳業最大手のナショナルフーズ社を買収している。
 グループは加速度的に拡大しており、07年12月期の連結決算は、本業の営業利益が前期比3.7%増の1,206億800万円と5期連続過去最高を更新。売上高もメルシャンの買収効果で8.1%増の1兆8,011億円と過去最高に達した。08年12月期は協和発酵工業や豪ナショナルフーズの買収が寄与し、売上高は食品メーカー初の2兆円の大台となる2兆1,000億円を見込む。
「国内でキリン・ビールというと、ビールの会社で“ラガー”“一番搾り”“発泡酒”の会社。しかし、キリン本体は何の会社かと問われると、答えに困る規模の会社になった」(三木氏)
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豪を代表する総合酒類メーカーへ
 ライオン・ネイサン社はもともとニュージーランド(NZ)の総合酒類メーカー。パースのスワン社(SWAN)、アデレードのSAB社、シドニーのトゥーヒーズ社(Tooheys)、ブリスベンのフォーエックス社(XXXX)など、豪州の各都市にあったビール会社を買収することで成長した、豪ビール市場のシェアの大半をフォスターズ社と2社で分け合う大手ビール製造・販売会社だ。
 トゥーヒーズ・ニュー(Tooheys New)、ハーン・プレミアム(Hahn Premium)、フォーエックス(XXXX)、ジェイムス・スクワイア(James Squire)などの人気銘柄のほか、海外銘柄としてはハイネケン(Heineken)、ベックス(Beck's)、そしてキリン(Kirin)などをオーストラリアで販売。NZではライオンレッド(Lion Red)、スパイツ(Speights)、スタインラガー(Steinlager)などの銘柄を販売している。
 これに加え、ワイン・ブームなど豪消費者のアルコールの嗜好の変化に対応し、2000年以降はペタルマ(Petaluma)、ウィザーヒルズ(Wither Hills)、ストニア(Stonier)などのワイン・ブランドの買収や、レディ・トゥー・ドリンク(RTD=すぐに飲めるカクテルなどの容器入りアルコール飲料)の開発など、ビール以外の酒類事業も展開。NZ同様に豪国内でも総合酒類メーカーとして発展を遂げようとしている。
 全豪の5つの工場に約3,000人の従業員を有し、2007年の売り上げは1,967億円。このうちの営業利益は470億円を誇り、キリン・グループの営業利益の4分の1近くを稼ぎ出す。
 その豪州市場の特徴について三木氏はこう分析する。
「何しろビール好きな国民。1人あたりのビール消費量は日本人の約1.7倍もあり、そしてビール文化がとても豊か。アルコール度の高いものから低いものまで、高価格のプレミアム・ビールから低価格ビールまで、いろんな種類のビールをいろんなオケージョンで楽しむ工夫を身に着けています。また、BBQやクリケットなど、ビールの消費には事欠かないイベントもたくさんある(笑)。
 加えて景気が良い。消費財の最たるものであるビールはその国の経済状況を如実に反映しますが、ハイネケンやベックスなどプレミアム・ビールの伸びが顕著。そして、好景気を背景にこれから日本が学ぶべきおもしろいトライアルをたくさんしている」
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「キリン恵み」はグローバル企業としての第一歩
 ライオン・ネイサン社のその最も最近の興味深い動きが、昨年10月に行った日本ブランド「キリン」のパッケージ・リニューアルだ。同社はこれまで、一番搾り麦汁だけを使用したキリン独特の製法を用いて作る「キリン・イチバン」を、高品質の「プレミアム・ビール」を少量生産するシドニー工場で製造・販売していたが、このパッケージ・デザインをオージー・スタッフが中心となって斬新にリニューアル。販売拡大に伴いアデレードのSAB社に製造拠点も移した。
 オージーの目から見た日本をイメージしたというデザインは、シンプルかつ柔らかくエキゾチック。“ジャパニーズ・モダン・クール”と市場の評判も良く、1ケース55ドルもするスーパー・プレミアム・ビールながら、売り上げが倍増するなど売れ行きは好調だ。
「キリンが本当の意味でグローバルな会社になっていく象徴的な第一歩になったのでは」と三木氏。豪州がキリンにとって現在、さまざまな意味で最も注目している市場の1つであることは間違いない。

三木文夫エグゼクティブ・ダイレクター

1985年一橋大学卒、同年キリン・ビール入社。横浜支社営業部に配属。グループ会社である米国ボストンのコカ・コーラ事業、キリンの経営企画、グループ会社アグリバイオの海外ビジネスを担当し、2006年より現職。

<三木社長に聞く10の質問>
1、座右の銘:特になし
2、今読んでいる本:「波乱の時代」アラン・グリーンスパン著/「私の男」桜庭一樹著/「農家が教えるどぶろくのつくり方」農山漁村文化協会
3、オーストラリアの好きなところ
イージーなところ。人生を楽しむならこの国。シドニーは風景や環境が素晴らしい街
4、外から見た日本の印象:政治規制や移民など、もう少しいろんなところで解放するべき
5、好きな音楽:こっちに来て日本の歌謡曲が好きになった
6、尊敬する人:ボストン勤務時代のアメリカ人社長のエルマ氏。今も仕事上で「彼だったらどうするだろう」と考える
7、有名人3人を夕食に招待するなら誰:雅子様、ウイリアム王子と婚約が騒がれているケイト・ミドルトン、英女優のケイト・ベッキンセール
8、趣味:映画と漫画と本
9、将来の夢:健康で長生きする
10、カラオケの十八番:カラオケは歌いません

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