企業研究
- 三菱東京UFJ銀行シドニー支店 豪大手投資銀行へ出資提携 [2007/11/01]
三菱東京UFJ銀行シドニー支店 豪大手投資銀行へ出資提携
アジア・オセアニア地域の金融市場での新たな事業展開を視野にこの8月、豪州の投資銀行大手チャレンジャー社への200億円に上る大型出資を決め話題となった邦銀最大手、三菱東京UFJ銀行。シドニー、メルボルン、オークランドの3都市を拠点に活動を行う同行の対馬康平・オセアニア総支配人兼シドニー支店長に、その経営戦略を聞いた。
90年以上前に遡る豪州進出の歴史
「邦銀の国際業務といえば従来はNY、ロンドン。アジアなら香港やシンガポールが中心で、豪州が大きくフォーカスされることはなかった。しかし日本にとってこの国は、資源や食糧の供給国という以外に、金融市場が非常に発展したビジネス・チャンスにあふれる金融先進国という側面を持っています」
豪州が日本にとって非常に重要な金融マーケットであると強調する対馬氏。現地投資銀行への大型出資によってオセアニア地域での飛躍が期待される三菱東京UFJ銀行の豪州進出の歴史は、その前身の1つである横浜正金銀行がシドニー支店を開設した1915年にまで遡る。当時の業務は日本向け羊毛輸出の貿易金融が中心だった。
第2次世界大戦の勃発とともに支店を閉じるが、豪州政府は終戦後も国内銀行の保護・育成の観点から外国銀行の進出を認めず、1946年に横浜正金銀行を引き継ぎ普通銀行として開業した東京銀行も、シドニーとメルボルンに駐在員事務所を設置し支店開設の機会を窺うことになる。その後、終戦から数えて40年、同行が現地法人の設立に至るのは豪州政府が外国銀行に門戸を開放した1985年になってから。その時に営業認可を得た外国銀行は16行で、そのうち邦銀は東京銀行、三菱銀行、日本興業銀行(現みずほ銀行)の3行だった。
その後、三菱銀行と東京銀行の合併により現地法人も1996年に豪州東京三菱銀行となり、2003年には当地での貸出業務拡大を目的に現地法人のステータスから銀行本体の支店に移行。さらに2006年のUFJ銀行との合併を経て現在に至っている。
同行が融資する豪国内の港湾事業
貸出残高は外国銀行トップクラス
邦銀で唯一、シドニー支店以外にメルボルン出張所、ニュージーランドのオークランド支店を有し、3拠点を中心にオセアニア地区で営業活動を行う同行は、企業向けに融資を行うコーポレート・ファイナンス業務、資源開発や発電事業など特定の事業に対して融資を行うプロジェクト・ファイナンス業務、そして外国為替業務という商業銀行としての業務が主要。現在の貸出残高は約50億ドル(約5,000億円)と、豪州に進出する外国銀行の中でトップクラスの規模を誇る。従業員数は約120人(オセアニア地区全体では約130人)。
近年は豪州企業への貸出額が増加し、その規模は日系企業向け貸出の2倍以上にまで成長している。また、最近はLBO(レバレッジド・バイアウト、企業の買収を行う際に買収先の企業の資産を担保に資金調達を行う)、MBO(マネジメント・バイアウト、会社の経営陣が株主から自社の株式を買収したり、事業部門のトップが会社からその事業を買収したりすること)といった企業買収に関わる融資業務も増加しているという。
一方で、投資銀行案件が豊富な豪州市場において、同行は新たな事業分野への展開も図る。「この国は複数の金融機関がシンジケート団を組成して企業や事業に大規模融資する“シンジケート・ローン”が盛ん。また、道路や港湾、空港、発電所などインフラ資産への投資や開発・運営事業が非常に活発です。当行もさらなる事業拡大を図るために今年8月、インフラ・不動産の投資や運営、管理を専門的に行う現地投資銀行第3位のチャレンジャー社に200億円を出資。業務提携関係を結び、新事業への展開を始めました」(対馬氏)。
同行が融資する豪国内の資源開発プロジェクト
豪投資銀行と連携し新事業展開
日系企業だけでなく豪州、オセアニア地区の現地企業へと顧客基盤を広げることによって貸出額を拡大してきた同行だが、同行を利用する顧客の立場に立ち、いかにして顧客にとってより役立つ銀行へと成長できるか、その課題に対する答えが「商品力の強化」であり、チャレンジャー社との提携だったと言う。
「チャレンジャーが持つインフラや不動産に対する投資・オペレーション・管理スキル、または住宅ローン証券化のスキル、そういったものを取り込むことで、顧客のニーズにさらに応えていけるようにしていきたかった」(対馬氏)
豪州は今や各国の経済成長を陰で支える世界随一の資源国だが、実は金融先進国という顔を持つと対馬氏は指摘する。実際、GDPに占める金融セクターの割合は8%と、鉱業・エネルギー産業の割合に匹敵。REIT(不動産投資信託)市場の成熟度は極めて高く、その規模は米国に次いで現在世界第2位を誇る。企業に義務付けている年金拠出制度(スーパーアニュエーション)によって年金資産残高は1兆ドルにも上り、その潤沢な資金を背景に投資銀行はインフラ・不動産関連への投資を活発化させている。
「ニューヨーク勤務が長かったが、豪州に来て初めてこの国の金融先進性、市場の深みに驚かされた」という対馬氏。元気のいいこの国の金融機関と手を組むことで、豪州顧客のニーズへの対応のみならず、アジアをベースに大きな顧客基盤を持つ同行と、チャレンジャーが持つ投資スキルや証券化ノウハウというお互いの長所を生かし合い、アジアのビジネスの強化・発展にも貢献したいと語る。
提携関係を結んだ豪大手投資銀行チャレンジャー社
豪が世界に誇るインフラ・ファンド
チャレンジャー社の主要業務、インフラ・不動産ファンド・ビジネスとはどういったものなのか。そのビジネス・モデルは、道路や港湾、空港、発電所などインフラ資産を買収し、事業活動を効率的に改善するなどして企業価値を高める。そしてその後に投資家や年金基金に株を売却し利益を享受する一方で、その後も資産の運営・管理を行ってキャッシュ・フローを確保していくというもの。
最近では水道会社サザン・ウォーター・キャピタル、ガス会社ブリティッシュ・ガス、電力会社エレクトリックシティ・ユーティリティーなど英国インフラ企業を買収し、実績を上げ世界的な注目を集めた。
「豪州はもともと、空港や道路、港湾、石炭の積出港などのインフラ・アセットが世界でいち早く民営化された国。世界に先駆けてインフラ事業がビジネスとして競争にさらされたのです」(対馬氏)。そのため、インフラ運営に関するオペレーションのノウハウや優れたスキルを蓄積した、豪州のインフラ・ファンドに世界的な注目が集まっているのだ。
欧米や日本では、今後どんどんインフラ資産の民営化が進むであろう。そして豪州金融機関はその流れを予測し、先行メリットを大いに生かそうとしている。
「今後、豪州や日本国内はもちろん欧米での事業にも発展していくという意味で、今回の提携は当行全体にとって非常に意味のあること」と対馬氏。日本を代表するメガバンクの急先鋒の手腕に期待が集まる。
対馬康平オセアニア総支配人兼シドニー支店長
1979年、一橋大学卒、東京銀行入行。1984年カリフォルニア大学バークレー・ビジネス・スクールでMBA取得。資本市場部、為替資金部、世界銀行派遣、ニューヨーク支店勤務を経て、1997年資本市場部次長、2001年三菱東京フィナンシャル・グループ広報IR室長。2005年よりオセアニア総支配人兼シドニー支店長
対馬総支配人・支店長に聞く10の質問
1. 座右の銘:「為せば成る」
2. 今読んでいる本:「フラット化する世界」トーマス・フリードマン著
3. オーストラリアの好きなところ:mateship
4. 外から見た日本の印象:サービス、製品の質の高さ
5. 好きな音楽:モーツァルト、アントニオ・カルロス・ジョビン
6. 尊敬する人:祖父
7. 有名人3人を夕食に招待するなら:小澤征爾、伊達公子、宮里藍
8. 趣味:テニス、ドライブ、コンサート鑑賞
9. 将来の夢:飛行機の操縦
10.カラオケの十八番:サザン
|
その他の注目記事: |
























