兼松豪州会社
Kanematsu Australia
117年の歴史が物語る
地道な繋がりが安定成長の秘訣 |
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小島健一社長
1954年東京都出身。1976年3月横浜市立大学経済学部経営学科卒業。76年4月兼松入社。東京本社で飼料原料の日本向け輸入に30年携わる。80年ニューヨークに1年、92年チリで3年の駐在経験がある。06年6月から現職。 |
兼松豪州会社は、日本を代表する商社・兼松株式会社の100%出資の在豪現地法人。その歴史は1890年、日本の企業として初めてオーストラリア・シドニーに支店を開設したことに始まる。2006年6月に赴任した小島健一社長に、その歴史と現状、今後の展望について聞いた。
創業者である兼松房治郎が兼松の前身である兼松商店を神戸に創業したのが1889年。翌年、兼松房治郎自らが初めてオーストラリアを訪問し羊毛や牛脂に注目、1890年日本向けに輸出するため99クラレンス・ストリートにシドニー支店を開設した。これがオーストラリアにおける初めての日本企業の誕生となる。その後、羊毛を主な取り扱い品目として発展を続け、1922年に現地法人として改組、現在の兼松豪州会社の設立となった。
羊毛は原料と一部、毛布や敷布団などの加工製品を日本に輸出していた。オーストラリアの羊毛は品質が高く高価格で取引されたことに加え、他社よりも先駆けていた歴史を強みに、ほぼ独占状態を築き上げる。全盛期であった1970年代には、シドニー、メルボルン、ブリスベン、アデレード、パースに支店を置き、豪州全体で200人を超える従業員を抱えていたという。
現在の取り扱い品目は、羊毛はほとんどなく、代わりに食品が45%、ステンレスが45%、石灰石が10%といった割合だ。食品分野に関しては、主に牛肉や羊肉、小麦、牧草などの商品を手がけている。特に牛肉は豪州では主に脂身のないグラスフェッド(牧草飼育牛肉)という肉が一般的だが、同社は日本で人気のあるグレインフェッド(穀物飼育牛肉)、いわゆる霜降り牛を飼育・と蓄、その数約2,000頭近くだという。現在、東南アジア諸国で牛肉、特に高級牛肉の需要が拡大しており、「アジア市場は新しいマーケットになりうる」と小島社長は期待を寄せている。現状では日本向けに約9割で、アジア・マーケットへは10%弱の取り扱い高だが、利益率は日本向けよりも高く、利益の拡大が期待できる。「今後2〜3年後に2〜3割ほどまで成長させたい」と意気込んでいる。
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| 世界一高品質と定評のある高知県産の石灰石 |
豪州の食品は「安全・安心」の信頼性が高い。干ばつの影響により「安定」供給面に懸念があるが、それでも品質において世界各国からの信頼は厚いと言える。小麦の輸出については、豪州の専門輸出機関AWBの独占権がなくなり、今後の政府の政策に注意が必要だという。「もし自由化が進めば、それこそ商社の踊り場。今後、日本だけでなく、東南アジア向けの輸出に参入し、新しいビジネス展開もありうる」と今後の動向に注目している。
ステンレスと石灰石については日本からオーストラリアに輸入している。ステンレスはオーストラリアで生産するメーカーがなく、すべて輸入に頼っているが、その中で日本のステンレスは高品質で人気が高い。事実、売上の伸びはかなり大きく、「今期は前期の30%増」と小島社長が語る通り、近年の豪州建設ラッシュは少し落ち着いてはきているものの、住宅の厨房や屋根などの需要が大きく、供給が追いつかない状態が続いている。
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| ステンレス建造物の一例。クアラルンプールのペトロナス・ツイン・タワー |
石灰石については、世界一高品質と定評のある高知県産の日鉄鉱業株式会社鳥形山鉱山から出荷したものを、豪州の鉄鋼会社であるブルースコープスティール社やワンスティール社などに1971年以来30年以上にわたって供給している。石灰石は鉄鉱石に含まれる不純物を除去するために使われるが、鉄鋼生産の効率を上げるには、質の良い石灰石を用いることが不可欠。もちろん豪州でも石灰石は採掘されるが、長年にわたって日本の石灰石が使われてきた理由がその品質にあり、豪州鉄鋼業界の発展を支える重責を担っている。
また、将来の展望について、現在構想を練っているのがIT(情報技術)分野だ。携帯電話などの着メロのソフト関連やIC(集積回路)チップなど、豪州に持ち込める分野はまだまだ大きいと見て、現在、準備を進めている。特に携帯電話の着信音を配信するシステムは、アメリカ市場においては、米国兼松株式会社がかなり力を入れて進め、取り扱い高も大きくなってきているが、豪州ではほとんど浸透していない点に注目した。こうしたソフト配信など従来の商社的なものだけでなく、新しい知的財産の分野への方向も探っている。
同社の強みについて小島社長は「歴史を背景に作り上げてきた地場とのつながり」に尽きるという。他社大手商社が出資やM&A(企業の合併・買収)を通してなど、資金を投入して利益を生み出す方法が主流を占める中、同社のやり方は昔ながらの地道な方法であると言えよう。農家や現地企業、豪州政府関係者との結びつきといった商社本来の機能を生かしつつ、安定的な成長を続けてきた同社。現在の従業員はシドニーに4人、パースに1人と少数精鋭ながら、創設以来、一度も赤字を出していないことがその強さを証明している。
<小島社長に聞く10の質問>
- 座右の銘:「我慢」
- 今読んでいる本:司馬遼太郎「峠」、愛読書は「坂の上の雲」
- オーストラリアの好きなところ:ゆっくり時間が過ぎるところ
- 外から見た日本の印象:怖い(最近日本で起きている事件を聞いて)
- 好きな音楽:オールディーズ
- 尊敬する人:皆さんを尊敬しているので強いては挙げられません
- 夕食に招待するなら:吉永小百合
- 趣味:読書、スポーツ観戦、11年ぶりに始めたゴルフ
- 将来の夢:チリで生活したい。チリのために何かしたい
- カラオケの18番:兄弟舟(鳥羽一郎)
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| 初めての在豪日本企業、兼松シドニー支店 |
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| 創業当時の兼松房治郎 |
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