JAPAN NATIONAL TOURIST ORGANIZATION
体験型ツーリズム訴求で訪日観光客数増大目指す |
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堀内丈太郎所長
1989年東京大学法学部卒。1995年米国ワシントン大学でMBA取得。89年運輸省に入省。国鉄改革推進部管理課、鉄道局幹線鉄道課、大臣官房文書課を経て、2001〜04年、石川県企画開発部次長兼能登空港開港企画室室長。2004〜06年、国土交通省鉄道局危機管理室長。2006年4月より現職 |
外国人旅行者の訪日を促進するための独立行政法人、JNTO(国際観光振興機構)は現在、2010年までに年間1,000万人の外国人観光客を誘致するという、小泉純一郎前首相が2003年に表明した「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の目標を達成すべく、国内外でさまざまな活動に取り組んでいる。その前線基地の1つとしてシドニーで活動を展開するJNTOシドニー事務所の堀内丈太郎所長に、同所の具体的な取り組みについて話を聞いた。
■JNTOの概要
JNTOは、国の政策目標である「訪日外国人旅行者数と日本人海外旅行者数との格差をできるだけ早期に是正すること」「2010年までに訪日外国人旅行者数を1,000万人とすること」の達成を使命とし、特殊法人・国際観光振興会の事業を引継ぎ、03年10月1日、独立行政法人としてスタートしている。
観光立国基本法が今年1月1日に制定され、本格的に日本を観光立国として高めていくことが政府全体の方針として決まった。「ようこそ日本へ」。これは、単に外貨を獲得するだけではなく、他国との交流の中で日本への理解を深めてもらうことで、対外的なビジネス面での環境を改善し、日本の主張を聞き入れてもらいやすくするなど、さまざまな意味での国としての存在価値、地位向上を目的としている。「実際に外国人に日本に来てもらう。これが日本に関する理解を深め、日本人に対する好感度を高める最も効果的な方法だろう、ということで、政府を上げて観光立国を実現しようという気運になってきています」と堀内所長。実際、ビジット・ジャパン・キャンペーン開始時には年間500万人弱だった訪日外国人旅行者数は、06年では730万人強と、ハイ・ペースで増加を続けている。
残りあと約4年弱の間に目標が達成できるか。大きな枠組みの中でシドニー事務所も、数字という結果を出すことを命題として、一般の民間企業と同様、決められた予算の中で効率的にオセアニア市場を開拓することに取り組んでいる。
■豪州進出の経緯
もともとシドニー事務所は、日本に来る豪州人向けの観光案内を主な業務として、30年以上前からあった。ただ、現在のように明確な目標の下に活動していたわけではなく、訪日に興味がある人に対してカウンターで接客しながら紹介するという、受け身の形での対応が中心。それを、キャンペーン開始を契機に積極的な事業内容に大きく転換させた。
事業活動は大きく分けて、.瓮妊ア露出を促すためのプロモーション活動、⇔更垈饉匕けの支援および啓蒙活動、N更塲遒悗了臆辰覆匹鯆未靴唇貳名暖饉垳けのコミュニケーション活動の3分野が柱。
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| 訪日促進のための広告展開例 |
■豪州市場の特徴と戦略
中国や東南アジアの国々など、海外旅行は団体でのパッケージ・ツアーが大半という国と違い、オーストラリアは欧米のように、一般消費者が旅行のプランニングを自ら行い、それを旅行会社がサポートするという個人旅行(FIT)が一般的。自ずとプロモーションの方法は変わってくると堀内所長は言う。「団体客が中心の国では、旅行会社が旅行商品を作ってマーケットをリードするという、パッケージ商品の販売が中心になります。しかし、FITが97%と言われるこの国では、一般消費者向けのコンタクトというものが最もプライオリティーが高い。そういう意味でメディアへのPR戦略が大切になってきます」。
ただ、メディア露出によって日本への旅行希望者を作り出しても、消費者の窓口となる現地の旅行会社が日本について知らなければ意味はない。そのためには、実際に消費者から相談を受ける旅行会社に対して日本に関する教育・啓発、セミナーなども地道に行う必要がある。「車の両輪のようなもので、行きたい気持ちを高めるとともにそれを実現する側のレベルが上がっていくように取り組む、その両方が重要」と考えている。
上記のグラフが示す通り、過去10年間のオーストラリアからの訪日客数は増加基調にある。もともと日本語学習者が多く日本文化への関心が高いことに加え、円に対する豪ドルの上昇も手伝って、1995年に7万7,000人だった訪日客は2005年には20万人を超えた。これは、英国をはじめとした欧州への里帰り客や旅行客が、経由地として日本に滞在する数字を加えた全体数。しかし、経由の際に1、2泊だけ東京に滞在するといったこのストップ・オーバー客は、06年に減少に転じている。日本経由欧州行きの航空座席数が減ったことに加え、ドバイやアブダビなど中東国経由欧州行きのキャパシティーがここ数年で大幅に増大していることが主な要因。現在、エミレーツ航空のドバイ経由便は1日7往復。豪州政府は2011年までにこれを1日12往復に増やすことをこの4月に承認している。他航空会社を含め、中東経由便は同年までに1日18往復になる見込みで、日本がこれに対応するのはかなり厳しい状況と言える。
一方で、日本を主目的地として訪日する観光客数も過去10年で約2.5倍に増え、06年には初めて10万人の大台を超えた。JNTOは「こうした状況を踏まえ、主目的地としての日本がいかに魅力ある観光目的地であるかを理解してもらうための活動に注力していく」としている。そのテーマは「ホリデー」。“癒し”を求めて東南アジアのリゾート地に長期滞在するオーストラリア人旅行客が非常に多いことに着目し、日本をアジアン・リゾートのような長期滞在ができるホリデー・ディスティネーションとして認知度を高めていこうという戦略だ。
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| 訪日促進のための広告展開例 |
■体験型観光の認知度向上がカギ
「統計によると、日本を訪れるオーストラリア人の8割がファースト・ビジターで、その大半が東京と京都を見て、桜を見て、富士山を見てと、1週間強の日程で“日本を1回見てみよう”というような旅行客です。しかし、これでは日本の深い理解にはつながらないし、リピーターにもなり得ない。必要なのは、長期滞在に合うような英語圏観光客に向けた体験型観光メニューの拡充と広報の強化。そして、これに温泉などの“癒し”を組み合わせて、日本の魅力を訴求していくことです」。
実際、茶道や着物、工芸、日本料理、温泉、座禅、酒蔵、買い物など、英語による体験型観光メニューは03年以降、増えてきている。交通標識や旅館の英語対応化も進み、外国人観光客を受け入れる下地は整いつつある。問題はそれを認知させるための取り組みが遅れていること。英語のパンフレットやウェブサイトが登場し始めたのは最近で、これまでは自分で問い合わせをするなど外国人旅行客にとって困難が多かったのだ。
JNTOシドニー事務所は、英語版ウェブサイトの拡充を促すなど受け入れ側への要請を強めると同時に、日本での多様な体験型観光の魅力を認知させるため、テレビや新聞など豪国内のメディアに向けたプロモーションを活発に行っている。近年、爆発的人気の北海道スキー旅行に動物園観光や雪祭り体験などを組み合わせた旅のスタイルが、この4月にチャンネル7の旅番組「グレート・アウトドア」で紹介されたのもその成果の1つ。同番組では今後、京都での町屋宿泊体験や酒蔵での酒造り体験、大阪道頓堀での蝋製食品サンプルなどが紹介される予定だという。
「対円の豪ドル高によってシドニーに比べて日本の物価が非常に低くなっている現状や、英語対応のカーナビも登場して大都市以外ではレンタカーが利用しやすくなってきていることなど、伝えるべきことはまだまだある。日本国内の受け入れ側の体制強化を促すことを含め、数字を上げるために逆算していって、自分たちにできることはすべて自分たちの管轄だと思っています」。目標達成のための探求心には一点の曇りもない。

<堀内所長に聞く10の質問>
1. 座右の銘:「結果がすべて」
2. 今読んでいる本:「メモアーズ・オブ・ゲイシャ」英語版
3. オーストラリアの印象:人がフレンドリーで住み良い場所。自由なライフスタイルで休みも取りやすい。ゴルフなどのアクティビティーが手軽に楽しめる。
4. 外から見た日本の印象:細かいことまできっちりしている。食事なども手が込んでいる。何事にもこだわりがある。
5. 好きな音楽:かっこいいのはショパン(小さいころはピアノをずっとやっていたので)。今は歌謡曲をよく聴く。aikoのファン。
6. 尊敬する人:イチロー選手
7. 夕食に招待するなら:和久田哲也さん(TETSUYA'S)。うちでご飯を作って欲しい(笑)
8. 趣味:電車旅行(運輸省入省も電車好きが高じて)、テニス、ピアノ、最近はゴルフに力を入れている。
9. 将来の夢:日々探している状況です。
10. カラオケの18番:ミスターチルドレン「es」