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企業研究


JTBオーストラリア

豪州が誇る世界遺産の魅力生かし
新・熟年層の取り込み狙う

企業研究
岩月光司
JTBオーストラリア
取締役社長

1972年早稲田大学卒。同年、日本交通公社(現JTB)に入社。都内の海外旅行専門支店で15年間、団体営業に従事。支店・本社での課長職を経て、93年より霞ヶ関、神田、教育旅行東京の各支店長を歴任。2001年、JTBヨーロッパに常務取締役として出向。03年より現職。

 前身である日本交通公社がシドニー事務所を設立したのが1962年。それから数え、同社は今年で設立45周年を迎える。新婚旅行と家族旅行のブームによって90年代半ばにピークを迎えた豪州の日本人観光客市場は、その後、多少の増加はあったものの現在に至るまで縮小傾向が続いている。45年間にわたりこの経緯とともに歩んできたJTBオーストラリアは、現状をどう考え今後の戦略にどう生かすのか。岩月光司取締役社長に話を聞いた。

■歯止めが利かない日本人観光客の減少傾向 
  ケン・ドーンのブームなどを起因に日本人の海外旅行地として一大ブームとなった豪州は、ハワイやグアムに代わるリゾート地としてファミリー客に人気となったケアンズと、新婚旅行先としてハネムーナーに支持を得たゴールドコーストへの訪問者数の急増を背景に、その市場規模が右肩上がりで急成長、97年の年間訪問者数は82万人に上った。
  しかし、その数はこの年をピークに縮小基調に転換。2001年の米同時多発テロ、03年の新型肺炎SARSの流行、イラク戦争などの影響が減少傾向に拍車をかけ、06年までの10年間でその数は65万人にまで減少した。実に20%以上の減少率だ。なおかつ、07年に入ってからも1〜5月の累計では昨年比で13%減。このマイナス比率が続けば、年間の訪問者数はついに60万人を割ってしまう。
  この要因として「目に見える外的な要因は3つ挙げられる」と岩月氏は言う。1つは1豪ドル当たり108円近くまで高騰している最近の「対円豪ドル高傾向」。同じ1,000ドルでも昔なら7万円だったのが今は10万円を超える。これは日本人にとって大きな割高感となっている。
  2つ目が2年前に導入された航空代に加算される「燃油サーチャージ」。これが現在、各種税金などを含めると日豪の往復で3万円以上かかる。例えば7万円の格安航空券でも税金と燃油サーチャージを加えれば10万円以上に。アジアに比べ距離がある豪州は余計割高なイメージとなる。
  3つ目の要因が「航空会社・航空便の減少」。全日空が豪州路線から撤退したのに続き、アンセット航空が倒産。最近では既存航空も一部路線からの撤退や、間引き運航、減便などを行う傾向にある。航空会社からすれば、乗客数が少ないから便数を減らすというのは経営の論理からして当然のこと。「しかし、我々の立場から見れば、物理的に座席数が少ないからお客様が来られない」(岩月氏)。以前に比べて平準化されたと言えども、日本人の旅行時期はまだまだ一時期に集中する傾向が強い。実際に豪州旅行の夏の予約はキャンセル待ち状態だという。

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JTBオーストラリアが6月、シドニー市内ザ・ロックスのシャングリラ・ホテル隣りにオープンした「マイバス・トラベルセンター」。格安航空券、ホテル予約(国内・海外)、JRパス、携帯電話レンタル、ミール・クーポン、手数料無料の両替サービスのほか、数多くのサービスを提供する

■本質的な要因とは
  ただ、岩月氏はこれだけが減少傾向に歯止めが懸からない要因ではないと分析する。円安傾向は豪州に限らず対欧州、対米国でも同じこと。少し前まで120円程度で推移していたユーロは現在、160〜170円と高い。なおかつ欧州は距離もあり当然ながら航空運賃もかかる。しかし、日本人観光客の訪問者数は今年に入っても落ちていない。前述の要因だけでは説明がつかない。
  その理由を岩月氏は「旅行地・観光地としての魅力の差」と指摘する。「これが雲泥の差。歴史のある欧州にはそれぞれ魅力のある国が多い」。豪州も、日本との時差はほとんどなく、治安も良い。多国籍な食事が楽しめることも多民族国家ならではの特徴だ。自然は雄大で、人々は明るく気質は大らか。「こんなに良い点があるのに、残念ながら“これ”というものがないんです」。結局、前述の外的要因が重なると、行ってみたいという気持ちはあっても、どこか1つを旅行先に選ぶとしたら、日本人はよりイメージの強い欧州にするというのだ。
  もう1つ、豪州が抱える課題として指摘するのがリピーター率が低いという点。いくつもの魅力的な選択肢がありリピーター率が高い欧州に比べ、豪州のリピーター率は20%。1度来てしまうと100人中80人は2度と来ないことになる。今まで豪州旅行の中心がファミリー、新婚夫婦、修学旅行生というリピーター率が少ない客層が中心だったことも一因として挙げられるが、「それ以上に、何度も足を運びたくなるインパクトのある魅力をアピールできていないことが大きい」と推測する。

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豪州人旅行者に近年人気が高い日本のスキー・ツアー用販促パンフレット

■世界遺産をクローズアップ
  この9月からオーストラリア政府観光局が中心となって日本人訪問者の誘致を目的に行うキャンペーンに、業界は大きな期待を寄せている。それが豪州に存在する世界遺産をクローズアップするプロジェクトだ。既に同様のPRを以前より行っているJTBだが、同社もこの機会に同調して大々的にキャンペーンを張る予定だ。
  豪州には実に17の世界遺産があるが、そのうち15が自然遺産。有名なグレート・バリア・リーフや、エアーズロックを含むウルル-カタ・ジュタ国立公園、ブルー・マウンテンズのほかにも、NSW州ロード・ハウ島群、大陸中東部の多雨林保護区群、QLD州の湿潤熱帯地域、WA州シャーク湾、QLD州フレーザー島、SA州・QLD州の哺乳類化石地域、WA州パーヌルル国立公園、NTカカドゥ国立公園、NSW州ウィランドラ湖群地域、タスマニア原生地域などがあり、日本人には馴染みのない場所も多い。岩月氏はこれらが、豪州観光が再び脚光を浴びるための起爆剤になり得るという。
「やはり豪州の最も大きな魅力は、世界にも稀なこれらの自然なんです。特に世界遺産に登録されているということは日本人にとって大きなポイントになります」。日本では屋久島や知床がそうだったように、世界遺産に登録された場所は特に注目され爆発的な観光人気につながる可能性が高い。キャンペーンではテレビでの露出を増やしたり、地下鉄の車内広告を全車両に展開するトレイン・ジャックも行う予定。旅行会社の店頭にもパンフレットなどの販促物を充実させるという。
  そして同社は、ハネムーナー、ファミリー、修学旅行という今までのメイン客層にあぐらをかいていた業界の現在までの反省点を生かし、今後はリピーター率が特に高いと言われる熟年層の誘致に力を入れる。年輩の女性同士、熟年・団塊世代のカップルなど、時間的にも経済的にも余裕があるこの層をいかに取り込むか。この層に人気が高い世界遺産のキャンペーンも奏効すると期待している。
「このほかにも世界に目を向けた事業展開も必要。今後は一豪州企業として、海外に行くお客様向けのアウトバウンド事業の拡大を図ります。現地企業の招待旅行で米国や欧州にお連れしたり、インバウンドではシドニーで昨年行われた世界空手選手権に各国から訪れた方々2,500人のうちその半分のお世話をした実績もあります。全世界を相手にしたグローバルな展開は非常に楽しみ」。
  逆風の中だからこそ敢えてより高い目標を掲げる同氏の戦略にこそ、オーストラリア市場での成功のカギが隠されていそうだ。

岩月社長に聞く10の質問
1. 座右の銘:率先垂範
2. 今読んでいる本: 「鈍感力」渡辺淳一著
3. オーストラリアの好きな所:食べ物の美味しさと大らかさ
4. 外から見た日本の印象:良くも悪くも贅沢な国
5. 好きな音楽: 70年代フォークソング
6. 尊敬する人:両親
7. 有名人3人を夕食に招待するなら:トルシエ、ジーコ、オシム(サッカー日本代表の歴代監督)
8. 趣味またはスポーツ: サッカー、ウォーキング、釣り
9. 将来の夢: 晴耕雨読の隠遁生活
10.カラオケの18番: 無縁坂(さだまさし)


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