書家れんのつきいち年中行事
- 第4回 中秋の名月 [2008/8/16]
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第4回 中秋の名月
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著者プロフィル
れん(書家)。アーティストとして永住権を取得。シドニー市内「東」「四季」「だるま」「霞」の各レストラン、「Yuga Floral Gallery」に作品を常設。Government Houseでの企画展参加をはじめ、日豪両国で個展・グループ展を多数開催。NSW州立美術館やChannel 10での大書パフォーマンスの経験も。「書団れん倶楽部」主宰。書道教室運営。renclub@digisurf.net.au
ご機嫌いかがですか、れんです。
旧暦8月15日(太陽暦では9月中旬〜下旬)は中秋15日、「八月節」とも「中秋節」とも言います。
この十五夜は日本人には特別でした。古くから観月の絶好期とされていて、夜に皆でお月見の酒宴を催すのです。ススキを飾り、団子、里芋、枝豆、栗などとともにお神酒を供え、詩歌を詠じます。
この風習も中国からの伝来で、平安貴族の間に取り入れられました。村上天皇が宮中で観月の歌会を催したのが始まりと言われています。
「月ごとに 見る月なれど この月の 今宵の月に 似る月ぞなき」。これは村上天皇の歌で、鎌倉時代に編纂された勅撰の続古今和歌集に収録されていますが、これが原歌だと言われているのが「月々に 月見る月は多けれど 月見る月は この月の月」という歌です。作者は不詳ですが、有名な歌ですからこちらの方は皆さんきっとご存知でしょう。
このように中秋の名月は歌の題材としても親しまれています。「今宵の月」「三五夜」「望月夜」「名月」とあれば、それはすべて中秋の名月を指します。昔から日本人にとって「花」と言えば「桜」、「名月」と言えばこの日の月というわけですね。
ところで満月になぜウサギがいるのかご存知でしょうか。インドにこんなお話があります。
昔、ウサギと猿、狐、カワウソの4匹が森に住んでいました。ある満月の日、菩薩の生まれ変わりであるウサギは、修行として餌を困っている人に分け与えてから食べようと提案します。猿は木からマンゴーを、狐は畑仕事の農民が残した肉を、カワウソは川魚を持ってきました。
これらは人間も食べますが、ウサギの食べ物は草です。困っている人に与えるにも、草が欲しい人はいません。ウサギは考えた末に困っている人には自分の身体を差し出す覚悟を決めるのです。
それを見ていた天の王サッカは、皆を試すために乞食に変装して各々に食べ物を乞います。猿も狐もカワウソも餌の全部を差し出しました。そして最後にウサギに食べ物を乞うと、ウサギは薪に火を点けるように言い、そこに本当に自分の身を投げるのです。
感心したサッカはこの善行を後世に伝えるために、月にウサギの形を描いたんですと。
さて、それでは今月も書の作品について説明させてください。今回は少し楷意の残る行書(甲)と、草意の入った行書(乙)の2つを準備しました。(甲)は筆圧を十分に加えて線を太目にし、ボディを引き締めるために中心線に比重を集め、文字の中の白い部分を少なくしてあります。それに対して(乙)の方は、筆圧を筆の先端のみに加えて線の太さを細目に抑え、文字の内側に白い部分を多くとって文字そのものを明るく見せる工夫がしてあります。
こうして並べるといろいろなことが見えてきます。両者にはどんな違いがあるのか。どこが長くてどこが太いか。どの位置にあって傾きはどのくらいなのか。
自分がどんな雰囲気の文字を書きたいかという目的を明確にすれば、自分の意思でそれをコントロールできます。筆でなくてもかまいません。鉛筆でもボールペンでも、とにかく手にとってみて、実際に自分で書いてみるのがいいと思います。
月に対する日本人の思い入れは本当に強く、日ごと一々に名前を付けています。毎日形を変えながら夜空にポッカリ浮かぶ月は、本当に「いとをかし」な存在だったのでしょう。私たちも夜空に目を向け、月や星をゆっくり眺める、そんな心の余裕を持ちたいものですね。
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