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![]() 日本経済新聞社シドニー支局長:野澤 康二
オーストラリア・ドルが、主要通貨に対して上昇基調を続けている。観光業などからは「これ以上豪ドル高が進めば大変なことになる」と危機感を訴える声が出始めた。ただ、狂牛病騒ぎなどによって商品価格も上がっているため、主要輸出産品である牛肉や鉱物資源は海外需要が堅調で、大きな影響は出ていない。
シドニー中心部のフード・コートで昼ご飯を食べれば、飲み物を入れるとすぐに10ドル近くいってしまう。10ドルといえば800円を超す。物価の下落が続いた東京では、800円出せばそこそこのものが食べられる。タロンガ動物園やシドニー水族館の入場料は、どちらも2,000円ほど。ちなみに東京の上野動物園は600円、しながわ水族館でも1,100円で済む。電車の初乗りもシドニーは180円、東京は130円。
昨年、私のシドニー転勤が決まると、豪州に駐在や旅行経験のある友人たちは、物価が安いのが魅力の1つと口をそろえた。しかし、いざ暮らすと大違いだった。友人たちは数年前の情報をもとに話していたからだ。 豪ドルは1997年に0.8米ドル台をつけた後、アジア通貨危機などをきっかけに急落し、2001年には0.47米ドル、対円でも56円程度まで下がった。日本人旅行者が「何でも安い」と感じた時代だ。だが日・米・欧に比べ好調な国内経済を反映して、豪州の金利が相対的に高くなったことで、特にゼロ金利の日本人が豪ドル建ての国債などを大量に買った。その結果、豪ドルの需要が高まって、1月下旬に1豪ドルは0.76米ドル、81円を超え6年ぶりの高値で、1年前に比べて20〜30%近く上昇した。 「豪州は物価の高い国」という認識が広がれば、海外からの観光客が減りかねない。観光客数はSARSやイラク戦争の影響からようやく抜け出して、昨年8月から11月まで前の年に比べて毎月上回る水準をちょうど確保したところ。ほっとしていた豪政府観光局は最近、豪ドルが1%上がると観光客が0.4%減るとの試算を公表し、豪ドル高に対する警戒感をあらわにした。 自国通貨が上昇すると、普通は輸出産業や製造業がまず音を上げる。米ドル建ての輸出価格を自国通貨にすると目減りするだけでなく、製造業にとっては安い輸入品との競争を強いられるからだ。経済団体の豪産業グループは、会員の半数以上が競争力を失ったと述べ、農業者団体も「干ばつの影響から抜けきれない中での豪ドル高はこたえる」と不満を漏らす。 ところがよく見ると、輸出産業がすべて息切れしているわけではない。昨年末に米国でBSE(牛海綿状脳症、狂牛病)に感染した牛が見つかり、日本が消費の3割を占める米国産牛肉を禁輸にしたため、豪州産が高値で取引されている。中国の経済成長に支えられ、銅や亜鉛などの国際価格も堅調で、豪ドル高による為替差損を十分補っている。マクファーレン連邦産業相も、多くの企業が利益を出しており、豪経済全体にとって豪ドル高は大きな懸念材料になっていないとの見方を示した。 それでは今後、豪ドルはどう動くのか。豪州の国内経済は、雇用や消費を中心に引き続き堅調に推移しており、豪準備銀行が政策金利を再び上げる可能性が高い。コモンウェルス銀行証券部門のクレーグ・ジェームズ上級アナリストは「世界経済が急変しなければ、年半ばまでに1豪ドル=0.8米ドル、後半には0.85米ドルまで進む可能性がある」と予測する。ただ米国経済が本格的に回復してくる2005年早々には、0.76米ドルあたりまで米ドルが持ち直すとも見ている。 いずれにせよ、「昼ご飯800円のスイス状態」は当分解消されそうにない。 |
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