スポーツ・インタビュー
- 来豪インタビュー 女子プロ・ゴルファー宮里藍 [2008/2/20]

来豪インタビュー 女子プロ・ゴルファー宮里藍
女子国際ゴルフ大会、レディス・マスターズが2月8〜10日、ゴールドコーストのロイヤル・パインズ・リゾートで開催された。05年同大会で、優勝こそ逃したものの、豪女子ゴルフ界のトップ、カリー・ウェブと熾烈な1位争いを繰り広げた宮里は、以来豪州でも注目されている。今季の全米ツアーに入る前に、同大会をシーズン開幕戦に選んだ宮里が2月5日、ロイヤル・パインズ・リゾート・ホテルで行われた記者会見に姿を現した。
こんがりと日焼けした小柄な少女がステージへと上がる。深くかぶったサンバイザーのつばから、きらきら輝く瞳が覗いている。「Welcome back ! 」とどこからともなく声が上がると「Thank you」と答えて、彼女は太陽のように明るい笑顔を浮かべた。
当日、会場に詰め掛けた地元記者団から次々と質問を浴びせられた宮里は、物怖じする素振りもなく、流暢なアメリカ英語でハキハキと応答した。「アイ、君の英語はすごく上達したね」と一記者から絶賛された一コマが印象深い。その反面「悪天候にフラストレーションを感じているか」という質問に「すごく練習をしたいと思うけど、お天気には勝てない」という、なんともあどけないコメントを残すなど、22歳らしい若々しさも覗かせた。そんな中、質問の矛先は“スランプ”に陥った昨年米ツアーの終盤へと移行していった。
宮里は07年7月、ニューヨークで行われた全米女子ツアー「HSBC女子世界マッチ・プレー選手権」に参戦し、“初優勝”に大手をかけた。決勝相手は韓国人の李宣和。しかし、序盤のミスが最後まで後を引き、李に逃げ切られる形で涙を呑んだ。大会後に「最後までいいプレーができた」と充実感あふれるコメントを残した宮里だったが、この時、彼女の中で何かが変化していた。しかしその時点ではまだ、その変化に気付いていなかったと宮里は言う。
その後スイングは乱れ、5回連続で予選落ち(棄権を含む)するなど、“不調”“スランプ”という言葉が宮里にまとわりついた。その原因はいったいなんだったのか、そして今、その逆境にどのように立ち向かおうとしているのか、彼女は胸の内をこう語った。
■勝ちたいと強く思い過ぎた
―― あのマッチ・プレー以降「いつでも勝てる状態だな」と思うくらい、本当に自信がついたんです。そしたら逆にうまくいかないと「何で ? 」とストレスを抱えるようになっていた。あの時「ちゃんと力がついてきているから、この調子でいけばいいや」と、一歩引いて考えられれば良かったんです。それが「早く勝ちたい、アメリカでの夢を叶えたい」と強く思いすぎて、空回りしてしまった。だいたい“勝つことを前提にプレーをする”という状態に陥ること自体が、本来の私のスタイルではなかったのに、その時は全然気づかなかったんです。“勝つこと”しか見えていなかった。
■シャフト・フェイスを直したのは間違い
宮里がシャフト・フェイスの修正を本格的にスタートさせたのは、ちょうど気持ちが空回りし始めたのと同時期だった。彼女は当時を振り返って「あの修正は失敗だった」ときっぱり言いきった。
―― 今までずっと、父に「ここを直せ」と言われたらそこを直すというのが習慣のようになっていたんです。今回のシャフト・フェイスの修正もそんな調子で始めてしまったこと。でも、特にシャフト・フェイスを直すことは、長年にわたって自分の体に深く染み付いたフィーリング(感覚)を180度変えるようなことだった。そういう類の修正を、あのタイミングで、しかもシーズン中にやるべきだったかというと、そうではなかったと思う。将来的にどういうスイングにしたいのかなどという、自分に対しての計画性がまったく足りていなかった。
■影響を受けた大リーガー、イチローの言葉
時に険しい表情を見せながら、自分の思いを体全体でさらけ出す宮里は、その状況をさらに悪化させた左足の怪我についても触れた。怪我のせいで思うように体が動かなかったこと、また予想以上にその怪我が長引いたことは、気持ちをさらに焦らせ悪循環を引き起こしたという。そんな彼女を、ある人物の言葉が前向きにさせた。
――イチローさんが「物事にはすべて原因がある」とおっしゃっていて、それは「自分がこうなったからには必ず原因があり、それを分かっていればやるべきことが絶対に出てきて、そして必ず解決していける」ということ。自分も地道にやればできるんじゃないかなと思いました。
■自分のペースでフィーリングをつかんでいきたい
その言葉通り宮里は、本来の自分のスタイルを見失っていたこと、スイングに対する計画性の欠如、左足の怪我が気持ちにもたらした悪循環という、昨年の“不調”に対する3つの原因をしっかり分析している。そうした上で、今季の方向性を明確にしてみせた。凛とした面持ちで彼女は最後にこう語った。
――(あの不調は)長い目で見ていい経験になったと思っている。いかに自分をよく理解していかなくちゃいけないかを学ぶことができたから。今の課題は“どれだけ無駄のない練習をするか”。「これがどれだけ自分の現状に必要な練習なのか、そして今やるべき練習なのか」という見極めをするように心がけている。そして、どこかを修正するというのではなく「どれだけいいフィーリングで打てるか」という基本に戻ってやっていくつもり。あくまでも自分のペースで自分のフィーリングをつかんでいきたい。
10日に終了した今大会では、通算6アンダーで14位に食い込んだ宮里。米ツアーに先駆けて好調な滑り出しを見せたと言えるだろう。
プロになって以来最大の“スランプ”に陥り、若干22歳の若さにして、自分自身と自分のゴルフをじっくり見つめ直す機会を得たプロ・ゴルファー宮里藍。その経緯を経て、精神的にも大きく成長した彼女が、念願の米ツアー初優勝を果たす日は近いかもしれない。
宮里藍(みやざと あい)
1985年6月19日、沖縄県生まれ。ゴルフをする兄2人の影響で、4歳からクラブを握り始める。小・中・高とゴルフを続けるうち、みるみる頭角を現し、2003年に現役女子校生ながらプロ・ゴルファーに。翌年、賞金ランキング2位を獲得。05年にはANZレディス・マスターズに参戦し、強豪カリー・ウェブ(豪)に1打差まで詰め寄り2位。その後全米女子ツアーに参戦。今季で3年目を迎える。
Q:GCの印象は ?
基本的に、やっぱりサーファーが多いなという感じですかね。それと、毎日サーファーズ・パラダイスに行っているんですが、(2年前と比べて)ずいぶん雰囲気が変わりましたね。入っているお店も変わっていたし。
ちょっと行けば町もあるし海もあって、すごく良い所だなと思います。日本人が多く住んでいるっていうのは分かる気がする。(今住んでいる)アメリカは何しろ大きいというのが特徴で、遠くまで行かないと楽しいことができませんから。
Q:GCにいる藍ちゃんファンにひと言いただけますか ?
さっきもあるご夫婦が「お会いできるのを楽しみにしていました」と言ってくださって、純粋に嬉しかったです。またここに来れて嬉しいなって本当に思います。GCではゴルフが楽しみの1つという人も多いと思うので、私のプレーを見て、またプライベートの方でも体に気をつけながら楽しんでもらえたらいいなと思います。
Q:今季の目標は ?
もちろんチャンスがあれば試合は勝ちに行きたいし、自分がコントロールできる範囲で上位に行きたいと思っていますが、1試合1試合を丁寧に、そして早く自分に自信をつけられるようにしたいというのが、今年一番の目標です。

レディス・マスターズ最終日、11番ティー・ショットを放つ宮里
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