企業研究 ビジネス・インタビュー
- 「人こそが最も誇るべき 日本の観光資源」 [2008/7/27]
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「人こそが最も誇るべき日本の観光資源」
間宮忠敏・JNTO(日本政府観光局)理事長
6月13日、来豪中のJNTO(日本政府観光局)理事長の間宮忠敏氏に、官民が一体となって取り進めている、年間の訪日外国人数を2010年までに1,000万人にするための「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の現状と今後の抱負を伺った。
−−前職は日本郵船顧問とのことですが、2010年までに年間訪日外国人数を1,000万人とする命題を持つJNTOのトップに就任されたこと、そして1年経ったことについてのご感想をお願いします。
瞬く間の1年だった。「観光」というものは身近で入りやすいが、その一方でJNTOの事業がどのようにして成果に結びつくかが分かりにくい。それが実感だった。
ただ国内の観光全体の消費額が約24兆円で、自動車の国内出荷額49兆円の約半分と考えると、産業としての大きさを実感でき、成長産業として将来性を確信できた。
観光は国民全体が関わる非常に裾野が広い産業。GDP比も6%に近い。産業としての大きさや重要性を、広くPRしていくことも私の仕事と考える。
JNTOの担当する外国人旅行者の誘致(インバウンド)は、2003年に国として本格的に取り組んだ若い分野。観光先進諸国に学び、市場・顧客についての理解を深め、日本の良さを発信していきたい。
観光事業に携わるまでは感じなかったが、日本は多様性に富んだ観光資源に恵まれている国。四季があり、文化があり、食べ物やエンターテイメントも非常に幅広い。「観光資源大国」とも言えるのではないか。
そしてこれらハード、ソフト面に優るのが「人」。私はこの「人」こそ、日本の最も誇るべき観光資源ではないかと考える。シャイな国民性なのですぐには伝わらないかもしれないが、1度訪れてもらえれば日本のホスピタリティーの素晴らしさを理解してもらえるのでは。
ちなみに、JNTOが実施した、日本を訪れた外国人のアンケート調査では、全体の94%が日本滞在について満足と答えており、その理由については日本人の親切なところをまず第一に挙げている。
このホスピタリティーをはじめ、日本の観光資源の魅力はまだまだ生かし切れていないこともあり、我々の発信の方法次第で、日本の観光産業の将来性はますます期待がもてると言える。
幸い、今は多くの外国人が日本を訪問してくれているが、これを一時の現象に終わらせず、永続的に観光国として定着させたい。1,000万人はその過程の1つの道標と考えている。
−−2007年の訪日外国人数は前年比13.8%増の約835万人となっています。どのような戦略が実を結んだとお考えでしょうか。
2003年に政府、民間、地方自治体、JNTOなど官民一体でスタートしたビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)の効果が数字となって現れてきた。世界景気や為替動向などの環境に恵まれたことも確か。しかし、キャンペーンによってベクトルが1つになったことで、日本の魅力を広くPRでき、また浸透したとも思っている。
VJCは重点市場を12カ国に絞ったが、そのシェアは88%に上っており、戦略は間違っていなかった。これらの市場に対し、JNTOが長年持つノウハウを使いながら、市場特性を踏まえた、多岐にわたる的確なプロモーション事業を実施してきたことが、目標達成に大いに寄与したのでは。
テレビや新聞などの媒体を複合的に使ったメディア・ミックスによる訪日観光PR、訪日旅行商品の新規開発など、インバウンド関係者の地道な誘客活動の努力が奏功し、シナジー効果が現れたのではと考えている。
−−2010年までに訪日外国人1,000万人。残り3年となった今年2008年の達成目標と、その戦略をお聞かせください。
2003年のVJC開始から5年間は年平均12%増と順調に推移してきたが、残り3年、人の動きに影響を与える自然現象、政治・経済・社会的なハプニングは予測不可能だ。成果が出せるまでのタイムラグを考えると、今年が勝負年なので楽観視せずに勢いを付けたい。今年の数値目標は915万人、前年比で9.6%増。
登山で言えば今年は8合目。やっとここまで来たかという感慨がある一方、胸突き八丁にさしかかったということであり、これからが最も苦しい時期であることも認識している。
目標達成までの3年間のロードマップを作り、戦略的・計画的に臨みたい。特に市場変化を常に把握し、それに基づきターゲット・セグメントを明確にし、的確な事業計画の実施に努めたい。
具体的には、訪日客全体の約70%を占めるアジアを戦略の中心に置くことに加えて、経済成長が著しく外国旅行市場が拡大して訪日観光への関心が高まっているBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に対する取り組みを強化する。また、訪日観光ポータルサイトとして、JNTOウェブサイトを通じた情報提供の拡充による需要喚起を図るべく、現在の7言語に加え、今年はロシア語とポルトガル語版ページも新設。年内には動画の配信も予定している。
そのほか今年は、洞爺湖サミットがあるほか、日仏交流150周年や日韓観光交流年でもある。これらイベント、交流事業を契機とした誘致促進や、コンベンションやインセンティブ旅行誘致、リピーター対策強化なども図っていく。
−−日本には魅力的な地方が数多くあります。地方の外国人受け入れ態勢、地方との連携などについて、現状と今後の方針をお聞かせください。
観光地の多くは地方にある。JNTOも地方との連携を積極的に進め、訪日促進活動や外国人が訪れやすい地方での環境作りに関わって行くことが大切だと思っている。
環境作りという面では、各地方自治体の観光協会などが運営する外国人旅行者対応の観光案内所「ビジット・ジャパン案内所」(JNTOが資料提供や研修会実施などで支援)は、現時点で日本全国222箇所にあり、外国人旅行者に情報を提供すると同時に彼らの意見も参考に取り入れている。さらに、研修会の開催やネットワークの質量両面の拡充強化に力を入れている。
また、VJCの地方連携事業にもJNTOが積極的に関与し、連携を深めて誘致の効果を出すべく、引き続き、受け入れ態勢・広域観光の充実、外客ニーズに合った情報提供に資するよう地方支援を継続し、シナジー効果を図っていく。
一例として豪州関係では、訪日スキー客誘致にあたり、北海道(ニセコ、富良野など)、北陸・信越(白馬、志賀高原など)、東北地域などと連携した宣伝広告、旅行博出展、セミナー開催などを行っている。
また、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8広域観光圏にはそれぞれ「広域観光振興機構」が組織され、観光商品づくりが行われているので、JNTOはこれらの組織とも協力している。
現在は、知事や市長自らが海外に赴き自治体のPR活動をするトップセールスが多い。JNTOはそういった活動も側面からサポートさせていただいている。
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−−キャンペーンの中のオーストラリアの位置づけを教えてください。
訪日誘客数では昨年、イギリスを抜いて第6位で、12の重点市場の中堅に位置する大事な市場。日本語学習者も36万人と多く、経済関係でも最大級の貿易相手国であるなど、関係が深い国だ。
これまで国内の英語による受け入れ態勢整備の問題や、日本は物価が高いといった固定観念があったため、なかなか観光目的地としての日本の認知度は高まってこなかった。しかし、2005年に豪州をVJC重点市場として指定して以降、プロモーションを通じて、スキーに限らず、英語圏から来た旅行者でもいろいろな体験ができる国、という認識が浸透しつつあると感じられる。今後は、スキーなどの冬季のみならず、アウトドアなどを中心に日本の夏季の魅力の発信にも力を入れていきたい。
また豪州は、スキー、温泉、食をはじめ、名所旧跡やポップカルチャーなど、多様な日本の観光資源をすべて紹介できる国だと思っている。
最近は訪日客の数字も急速に増えており、プロモーションのしがいがある大事な市場と考えている。
5年ほど前にニセコに行っていた豪州人の多くは、若者スノーボーダーが多く、スキー場での滞在が中心だった。最近は家族連れや中高年の層がだいぶ増え、滞在期間も平均2週間ぐらいに増加し、スキー以外にも日本食や日本文化をじっくり楽しむようになってきた。
例えば温泉に浸かったり、居酒屋で地元の人との触れ合いを楽しんだり、東京や京都でショッピングや英語による文化体験を楽しんだりと。そういった意味で豪州人の日本での観光のあり方も、やっと「ホリデー」と言えるものになってきた。
また、特に欧米の若者の間では日本のポップカルチャーに惹かれて訪日する人が急増しており、豪州でも近い将来に大きなうねりとなるのでは。いずれにしても日本には豪州人にとって魅力的に映る文化が数多くあるように思う。それを伝えていくことで訪日誘致をさらに促進できると考えている。特定の季節、場所に限定されない、すべての日本の観光資源に豪州の観光客が触れることで、日本が永続的な訪問地として定着し、ひいては日豪の友好親善が堅固になれば良い。
−−市民の草の根レベルの交流が豪州人の訪日に役立つこともあるかもしれません。在豪の日本人へのメッセージをお願いします。
日本に行った豪州人の多くが、「日本のことがよく分かって好きになった」「人が親切」「清潔で安全」「豪州にはない文化がある」「食事が美味しい」と口々に言ってくれる。大半の豪州人は日本に行った後、日本に対する理解が一層深まり、親近感を持ってもらえていると感じている。
外国人にとっての日本の魅力は、日本人が気付かない意外に身近なところにある。JNTOとしてはメディアを通じて、あるいはダイレクトに、現地の方々に訪日旅行の魅力をなお一層伝えていくとともに、草の根レベルの交流もとても大事なことだと思っている。 近所の、職場の、同級生の日本人に、日本のおもしろさを薦められて興味を持ち、1度日本に行ってみたいと思う、そうした交流の積み重ねが実際に日本に赴く豪州人の増加に繋がる。そして、その豪州人がコミュニティーの中で日本の魅力を伝えてくれる仲間になってくれると思う。
そういった意味で在豪の日本人の方々には、身近な豪州人にぜひ1度日本に行ってみるよう働きかけていただければたいへんありがたい。
プロフィル まみやただとし◎昭和41年、東京大学経済学部卒、同年日本郵船入社。アジア事業部長、NYK BULKSHIP (EUROPE) LTD.社長を経て、平成10年に取締役、平成12年に代表取締役常務、14年に代表取締役専務、15年に代表取締役副社長に就任。平成17年より特別顧問。平成19年4月1日より現職

























