特別インタビュー
- 『The bone man of Kokoda』著者チャールズ・ハペル氏インタビュー [2008/9/04]
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37年間温めた戦友への約束のため すべてを犠牲にする ―そんな西村氏の忠誠心に強く惹かれました
話題の1冊『The bone man of Kokoda』著者チャールズ・ハペル氏インタビュー
『The bone man of Kokoda』――。オーストラリア人ジャーナリストが元日本人兵士の戦友に対する忠誠心を描き注目を浴びている1冊の本を、書店で目にした人も多いのではないだろうか。著者であるチャールズ・ハペル氏にインタビューを行った。
「ポートモレスビー作戦」は、太平洋戦争のニューギニア戦線において、日本軍と連合軍とがポートモレスビーの支配を巡って行った戦い。この作戦で多くの戦友を失った高知県出身の西村幸吉さん(南海支隊第144連隊所属)はその時、「生き残ったら必ずこの地に戻り、戦友たちを日本の家族のもとに連れて帰る」と心の中で固く誓った。
64年後の同じ場所。オーストラリア人ジャーナリスト、チャールズ・ハペルさんは、現在は当時の戦闘を偲ぶトレッキング・コースとなっている、その「ココダ・トレイル」を歩いていた時、日本語の忠魂碑を見つけ、道の案内人から遺骨を収集していた元日本兵が建造したものだと聞く。やがて西村さんの存在を知り、『The bone man of Kokoda』を書くに至った。
本は西村さんへの取材や調査を通して、西村さんの生い立ちから第二次世界大戦への出征、ニューギニア東海岸に上陸後、オーエンスタンレー山脈にあるココダ・トレイルの過酷な条件下での豪州軍を主とした連合軍に対する日本軍兵士たちの必死の戦いが描かれている。所属小隊42人のうち、たった1人の生存者として奇跡的に生還した彼の終戦後の生活。そして定年後、ニューギニアで戦没者の遺骨・遺留物収集に尽力した25年間。高齢のためやむなく2005年に日本へ帰国するまでの西村さんの半生をドキュメンタリー風に追ったノン・フィクションだ。
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| 西村幸吉さん、著者のチャールズ・ハペルさん、西村さんの娘サチコさん |
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| ギルワで観光客の見世物になっている2人の日本人戦死の頭蓋骨。銀歯がある左の頭蓋骨はココダ作戦で最後まで戦った第144連隊長山本重省大佐のものと思われる |
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| 1988年7月、エフォギ付近のココダ・トレイルで収集作業を行うため、手伝ってくれた地元村民とキャンプで寝泊りした。ここで1942年9月、第144連隊第2大隊第5中隊第3小隊、42人のうち西村さん以外の41人が戦死した |
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| ウィリアム・スケイト元パプア・ニューギニア首相一行と西村さん |
――西村さんについて書こうと思った動機は ?
パプア・ニューギニアで西村氏のことを聞いてすぐに感心を抱きました。もし聞いた話が事実の半分であったとしても素晴しい話だと思った。本人に会って話を聞き、調査をしていくうちに、事実は倍以上にいいものだと感じたんです。戦後37年間温めた約束のために、家族や財産そしてビジネスを犠牲にする――僕自身には到底できないこと。そんな西村氏の忠誠心や行動力に強く惹きつけられました。西村氏にとってはニューギニアでの戦友への誓いが何よりも重要なプライオリティーだったようです。
――本を書きたいと申し出た時の西村氏の反応はどうでしたか ?
オーストラリア人は、知らない人には戦争経験を話したがらないと聞いていたので、西村氏がどう反応するかは分かりませんでした。しかし、氏は僕の申し出にすぐファクスで快諾してくれました。それで僕はすぐに日本へ。彼は高齢なのに自宅の近くの駅まで僕を車で迎えに来てくれました。初めての印象は知的で実直、丁寧ながらも物事をはっきりと言う人、そして戦争の傷の深さを感じました。
――取材のために日本へ2回行かれたそうですね。
2006年の8月と10月の2回、それぞれ1週間ほど東京のほか、西村氏の出身地である高知へも行きました。今年の3月には出版された本を持って西村氏へ会いに行きました。とっても喜んでもらいました。彼はかつて敵国のオーストラリア人が日本人兵士の本を書くのは因果なことだと苦笑いをしていましたから。
――本ができるまでの過程を聞かせてください。
西村氏へのインタビューや、彼の日誌(西村氏は戦時中日誌を大事に保管していた)、ほかの生存している元日本人兵士や、4人の元オーストラリア人兵士のインタビュー、そして戦争資料、歴史書、文献などを参考に、調査をしました。書き上げるのに約1年かかりました。
――著者としてこの本で何を達成したと思いますか ?
ニューギニアでの恐ろしい戦いのことをオーストラリア軍と日本軍の両方の立場で学んだことです。特に日本のことや、日本人については戦前・中・後における姿勢について多くを学びました。調査ではオーストラリアに詳細な資料がありますが、日本サイドとなると言葉の問題が大きく、通訳や翻訳に頼らねばならなかった。時間と費用がかかりましたが、障害を越えて完成できたことは誇りに思っています。
――この本にどのような影響を望みますか ?
日豪両国の人たちが相互に理解を深めることです。オーストラリア人へは帝国日本軍の中にも人道はあり、すべての兵士が残酷で野蛮ではないことを。私は既にオーストラリア人の元兵士から西村氏の偉業を尊敬して書いた手紙ももらっています。日本の読者には、戦争で何が起こっていたのか、戦争がいかに残酷無比なものか、また、国のために戦死した若い兵士たちのことをいかに忘れるべきではないかを感じてほしい。
――出版後に感じたことはありますか ?
太平洋諸島・諸国で亡くなった日本人戦死者は約116万人と言われています。日本政府が戦没者の遺骨収集に積極的でないことは、西村氏にとって非常にフラストレーションを感じるところで、僕も同感です。日本政府は戦争や日本がしたことを後世に伝えるべきだと思う。現在は話すことがタブーのようになっているが、そうではなく、自由に討論されるべきだと思います。
――日本語訳版は発行されるのでしょうか ?
現在、ある出版社と交渉中です。2009年には日本語訳版が発行されることを願っています。その時まで西村氏には健在でいてもらいたい。西村氏は日本人に広く知られるべき人だと思います。
最後にハペル氏は、「もし彼がオ−ストラリア人で戦没者の遺骨収集に25年間の人生を費やしたとあれば、彼はとっくの昔にある種の国民的英雄になっているでしょう」と語ってくれた。
仲間のためにもう1つの戦いに身を投じた元日本兵、西村さんの人生。彼に敬意を表し1冊の本にまとめ上げたオーストラリア人著者、ハペル氏の言葉。あなたはどう感じるだろう。
■『The bone man of Kokoda』Charles Happell
Macmillan Australia $32.95
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