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    来豪特別インタビュー
     - 国連環境計画(UNEP)親善大使 歌手 加藤登紀子さん  [2008/10/09]

来豪特別インタビュー
最後は、観客も一緒になって大合唱

国連環境計画(UNEP)親善大使

歌手 加藤登紀子さん


加藤登紀子 プロフィル
1943年ハルビン生まれ。1965年東京大学在学中に歌手デビュー。翌年、レコード大賞新人賞、また2度にわたるレコード大賞歌唱賞を受賞。以後60枚以上のアルバムと多くのヒット曲を生み出す。日本人歌手で初めて、カーネギー・ホールでコンサートを開き、1992年芸術文化活動における功績に対し、フランス政府からシュバリエ勲章を受章。WWFジャパン(世界自然保護基金日本委員会)評議員に就任したのに続き、2000年国連環境計画(UNEP)の親善大使に任命される。歌手としての活動のほか、女優、声優としても活躍。現在、65歳。

人間は、いろいろなものを削ぎ落として生きている。
もっと素晴らしく生きようとするべき――。

 2000年に国連環境計画の親善大使に任命されて以来、アジア・オセアニアなど世界各地を訪問。草の根レベルの環境保護活動の現場を精力的に視察し、自らの目で見た現状を伝えるとともに音楽を通じた交流で世界の人々にメッセージを送り続けている。ここオーストラリアでは、ケアンズ、ジロング、メルボルンを視察し、シドニーでは2度目となるチャリティー・コンサートを開催した。加藤さんが考える自然の大切さ、歌うことの素晴らしさについてインタビューした。

インタビュー=編集部・五十嵐麻衣、写真=山内大輝


来豪特別インタビュー
親善大使として、さまざまな活動を行う

――今回、UNEPの親善大使としての来豪ですが、何がきっかけとなり環境保護活動に携わるようになったのでしょうか。
 環境保護活動に関しては、夫とともに80年代から日本各地でイベントを行っていました。その中に、環境省が主催する音楽家たちが集まるコンサートがあったんですね。これに参加したことがきっかけで、環境省の方から今の活動に関する依頼がありました。子どもも自立し、夫が他界した今、環境保護活動は私に残された大きな仕事という気がしています。

――実際に、オーストラリア各地を訪問された印象はいかがでしたか。
 視察した3カ所は初めての訪問でしたが、夢のように素敵でした。それぞれ各地の環境基準はとても厳しく、水の汚水処理、海水の淡水化、自給管理などのシステムを見させていただきました。また、環境に悪い物は使わない、洗剤には気を付けるなど随分極めの細かな管理がされていました。工事の際は一切木の伐採をせず、徐々に森を蘇らせる活動もされていましたね。私も記念に、1本樹を植えてきました。
 オーストラリアという国は、さまざまな規制に対して積極的に実行するという1人ひとりの意思で保たれている国だなと思いました。水は出すけど、たくさん使わないようにするとかね。人間も水に困っているけれども、自然を保護することの方が、人間にとっては長い意味で非常に大切であり必死の戦いであることを聞いて、たいへん素晴らしいなと思いましたね。

――これまで世界の各地を訪問されて、特に印象に残ったことはありましたか。
 最初に訪れたインドネシアですね。国立公園を訪問したんですが、保護区として守られているギリギリの所まで開発されていたんですね。ビルの周りが、原生林の壁面で囲まれているといった感じです。徐々に山になるのではなく、突然ボンと熱帯雨林の壁ができるといった感じです。それは本当にビックリしました。この時、すごい勢いで自然や畑が失われていることを認識しましたね。守ろうという意志を持った地域は守られているんですけど、それはいつでも脅かされているという気がしました。

――UNEPの活動を通して感じたことはどのようなことでしょうか。
 だいたい、アジア各地が抱えている問題は、経済開発が進むことによって、農業が非常に衰退していくということです。人々は農業では食べていけなくなり、都会へ出ていく。そして農村は荒れ果てる。日本も一緒ですね。私は、このように自然を潰していってしまうことはとても大きな問題だと思いますが、それと同時に人間の命を支えるという意味で重要な第一次産業が廃れるということが不安ですね。ですから、私自身としては、UNEPの活動とともにもっと農業が保たれるよう、そして過疎化を防げるよう、都会からの流れを作っていきたいですね。

――加藤さんにとっての音楽活動とはどのようなものでしょうか。
 環境保護の活動と2:1でバランスをとっています。歌う時は幸せですね。歌う時が私だなという感じがします。やっぱり歌の中から届けられるものというのは、生きていることの一番大きな喜びに繋がること。その大きな喜びである命を全うしていくという喜び、それをいろんな意味で身体の中で感じる、確かめる、訴える、伝える、それが歌うことだと思います。歌うことと人生を生きることは、いつも自分の中で同じ重さにありました。私は、結婚した時に、歌うことよりも女として生きる方がずっと大事なのではないかと思っていた時期があったんです。でも、どうしても自分が生きていることを確かめられるのが歌っている時なんですよね。自分の心の中を確かめられるものであり、詞を作ること、曲を作ることによって自分に気が付く、自分に出会える気がするんです。自分自身が今、何を感じ、どう生きているのか絶えず確かめることが私にとっての歌うことですね。


来豪特別インタビュー
数々の名曲を謳いあげ、感動に包まれたステージ

――故・美空ひばりさんをとても大きな存在と発言されていましたが。
 私が歌手になったきっかけは、エディット・ピアフ(フランスの国民的象徴の歌手)なんです。彼女が大好きでずっとピアフを歌い続けてきましたが、いつか美空ひばりさんを歌ってみたいと思っていたんです。それは彼女が演歌の女王だからという意味ではなく、ピアフと同じように、日本という時代を象徴する、その中を生きてきた人、人々の心の中に深く残る曲を残した人だからです。だからピアフと彼女を、同じ位置に置きたいというのがあったんです。

――現在でも、多岐にわたるさまざまな活動をされていますが、それについては。
 すべてが面白いんですね。普段、生きていてなんとなくもどかしいんですよね。人間はもっと素晴らしい生き物なのに、それをいろいろ削ぎ落としながら生きているっていう感じがするんです。だから、いろいろな活動を通して、大好きな世界、大好きな自分、人としての素晴らしさを自分のイメージのまま表現することができるし、そこで出会うことができるし、それはすごく幸せなことです。人間はもっともっと、素晴らしく生きようとするべきだと思うんです。削ぎ落としてはもったいないです。

――2度目のシドニー訪問ですが、印象は変わりましたか?
 ずいぶん都会になった気がしますね。でも飛行機の上から見たんですけど、大都会の周りに森がたくさんあるのには驚きました。これだけ緑があるということは、まだまだ安心材料なんではないでしょうか。フラっと来ちゃおうかなと思うくらい、いい街ですね。多くの人から、とても暮らしやすい国だと聞いています。ですから、もっと日本との関係が深くなればと思います。

――最後に読者にメッセージをお願いします。
 オーストラリアには、本当に若い人たちがたくさんいますね。私の目に写った人々は皆、なんとなく流されて生きているのではなく、自分の意志で生きている、自分の夢を遂げるために生きているというアクティブな感じがします。今の日本は、少し疲れてきている気がするんです。ですから、ここに来てフレッシュな気持ちになった若者たちが、日本に戻りその風を吹き込んでくれればいいですね。

 シドニー市内で行われたコンサートには、多くの人が来場し満席となった。ギターの弾き語りやサックス、ディジュリドゥ奏者との共演によるステージでは、名曲「100万本のバラ」や「知床旅情などが披露された。「UNEPの集大成とも言えるように、今ステージにたった1人立っています」と、体全体から込み上げる思いを歌うその姿に、会場全体は感動に包まれた。同コンサートで集まった寄付金は約7,000ドル。「Clean Up Australia」キャンペーンなどの活動に役立てられる。

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