新・パソコン講座
- ペーパーレス [2008/6/13]

質問
先日、事務所の引っ越しがありました。小さな事務所の割にはたくさんの荷物があって、そのほとんどが書類でした。ペーパーレス時代と叫ばれて久しくなりますが、一向に書類がなくなりません。事務所はおよそ3年ごとに引っ越しをするので、毎回大変な思いをすることになります。書類を減らす方法を教えてください。
岩戸あつし
<著者プロフィル>
大学院卒業後、貿易商社を経て、コンピュータ・エンジニアとして活躍。日経CGなどへの執筆、PCショーの講師を勤める。1992年、オーストラリアに移住。シドニー大学の非常勤講師、シドニー日本商工会議所コンピュータ・セミナー講師などを勤める。現在ジャパン・コンピュータ・ネット代表取締役社長。ACS(Australian Computer Society)学会員。
回答
オーストラリアでは、小さな事務所の契約期間は通常3年くらいで、契約終了後、再契約をしようとすると、家賃がさらに上がるという事情があります。そのため、ほとんどの企業が再契約せずに新しい事務所を見つけて移転しているようです。そういうわけで、3年ごとに引っ越しするために書類を極力減らすという努力が必要になります。昨今のコンピュータやUSBフラッシュ・メモリーなどアクセサリの発達によって、本棚全体の書類を1つの小さなメモリーに保存・保管できる時代になりました。ただ税法などの関係で印刷物で保管しないといけないと思っている人がまだかなりいるようです。今回、ご質問に答えるために調べた中で、オーストラリアの法律も時代に伴って変わってきていることが分かりました。以下に詳しくご説明します。
税法上の問題
数年前までは、オーストラリアでも税法に関わる会計記録(インボイス、契約書、銀行明細など)は、印刷物としての保管が義務付けられていました。現在の法律はどうなっているかというと、書類を電子化して保管してもよいということになっています。ただし、必要があれば、印刷物としてすぐにハードコピーが取れること、という条件が付けられています。
例えば、ある会計ソフトを使っていて、その会計ソフトの会社が倒産などの理由でサポートを打ち切り、システムも動かなくなった場合は、データだけ持っていても無効になるということになります。こういう場合は、データを何らかの形でコンバージョンできる新しい会計ソフトを見つける必要があります。
どういうフォーマットで保管するのがよいか?
先ほどの例ですが、税法上会計記録は7年の保管が義務付けられていますので、まず7年間はなくなることがないソフトで記録することが必要です。例えばマイクロソフト社のワード、エクセル、アクセスなどは長く続いているソフトで、今後もすぐにはなくなることはないと思われます。
最近は、アドビ社のアクロバットで作成することも多くなっています。アクロバットを使うと、どんなソフトで作ったデータでもPDFという拡張子が付いた読み込み専用ファイルに変換できます。できたデータは元のソフトと関係なくアクロバット・リーダーで読むことができるので、マイナーなソフトで作ったデータはこの方法で変換しておくことをお薦めします。またPDFデータは、読み込み専用で書き換えられることがないという意味で、多くのインボイスや見積もりに使用されています。
何のソフトで作ったデータか識別する方法は?
各ソフトで作ったデータには、そのフォーマットに合わせて拡張子というのが付いています。例えば、マイクロソフト・ワードは「doc」、エクセルは「xls」、アクセスは「mdb」という具合です。何のソフトで作ったか分からないデータを見つけた時は、そのデータ・ファイルをダブルクリックすることで、データを作成したソフトが立ち上がります。もし何も立ち上がってこない場合は、コンピュータ内にソフトがないということなので、その場合は、拡張子を検索エンジンなどで調べてソフト名を割り出すことができます。
どういう形でデータを保管するとよいか?
データの保管の仕方は、各社によってさまざまですが、重要なことは、年度別のフォルダを最上位にして、その年度内にすべての項目のフォルダを作ることです。つまり、1年ごとに、その年度が終了した時点で、永久保存版のバックアップを取っていき、古い年度から順番にハード・ディスクから消去していくことができます。逆に言うと、例えば「インボイス」や「銀行明細」という各項目の中に各年度の項目を作った場合は、その年度が終わった時点で、その年度の永久保存版を簡単に作ることができないばかりか、古い年度を消去する際に煩雑になり、いろんなミスに繋がる可能性があります。

年度を最上位にしたファイリング例

部課を最上位にしたファイリング(悪い例)
どういうメディアに保管するのがよいか?
コンピュータは日進月歩で、3、4年に1度は交換する必要があります。したがって7年間データを同じハードディスク内に保管することは事実上不可能で、しかもハードディスクは故障する可能性があるので、いずれにしても別のメディアに(毎日でも)バックアップを取っておく必要があります。バックアップを取るためのメディアは、データの量や、どの程度のセキュリティーが必要かによって異なりますので以下を参照ください。
●外付けハードディスク:1つのメディアで最も多くの容量が記録できます。ただ1TB(テラバイト=1,000ギガバイト)などの容量の大きいものは、電源と一体になっており、簡単な持ち運びが困難です。USBから電源を取るコンパクトなものもありますが、その場合は比較的少ない容量になります。外付けハードディスクはほかのメディアに比べて大容量で価格も安い点から人気がありますが、電子部品だけでなく、ハードディスクを動かすメカニックを内臓していて、それが壊れやすいという理由と、書き込んだものが簡単に消去できるというメディアそのものの性質から、ほかのメディアと比べて故障したり、データが消去される確率が最も高いと考えられます。例えば記録ずみの外付けハードディスクの電源を外して7年間倉庫に保管し続けるのは、リスクが高いと思われます。外付けハードディスクの使い方としては、永久保存版を作ってしまい込むのではなく、コンピュータのハードディスクのバックアップ用として、常にパラレルで使用し、3、4年ごとに新しいものと交換することをお薦めします。
●テープ:現在のものは、1つのカセットで100〜300GBくらいまで記録できます。またカセット・タイプなので、持ち運びが容易で、万一の災害(近年では特にテロ攻撃)からデータを守るために、毎日別の離れた保管先に持っていくことがよく行われています。金融機関などは、セキュリティーの度合いが最も高いので、ほとんどの企業がテープでバックアップを取っています。問題としては、テープやそれを動かすドライブやソフトの価格が高価で、バックアップに関する専門的な知識が必要になることです。
●CD、DVD:記録メディア媒体としては安定して、1度記録すると簡単に消去することができないので永久保存版向けなのですが、CDで700MB、DVDで4.7GBという容量(中には倍の容量が記録できるものもある)では、昨今の大容量データに対応できず、1回のバックアップに何枚ものCD、DVDが必要になると面倒臭いということになります。よくあるのは、通常は外付けハードディスクでバックアップを取り、年に1度の永久保存版をDVDに複数枚に分けて保管しておくというものです。
●USBメモリー:簡単にバックアップが取れるということで便利ですが、最大でも32GBくらいまでという容量に制限があるのと、本来の使い方は、読み書きをするためのもので、永久保存版を作るためのものではありません。バックアップというよりは個人のデータ移動向けです。
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