特別レポート
- 「第15回 国際栄養士会議ICD 2008 〜人類のために、世界中の栄養士の連携と協力を〜」 [2008/11/04]
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| 国際栄養士会議ICDの様子。次回開催はオーストラリア・シドニー |
世界中の栄養士、栄養学者が参加
「第15回 国際栄養士会議ICD 2008 〜人類のために、世界中の栄養士の連携と協力を〜」 に参加しました。
国際栄養士会議ICD(International Congress of Dietetics)は4年に1度開催され、栄養問題・政策、栄養教育および栄養士活動などに関する研究発表や意見交換を行う場として今回で15回目を迎えた。今年は日本が開催国となり9月7〜11日の5日間、世界57カ国から約4,500人が参加し、各国の最先端の栄養情報交換、討論などが行われた。その中から、会議にボランティアとして参加したシドニー在住の栄養士、佐古しのぶさんに、日常生活に役立つトピックを紹介していただく。
研究発表の中で最も演題の数が多く、世界が注目する食品は何だと思いますか? 正解は「大豆」です。一般的に大豆は心がけないとなかなか摂りにくい食品ですので、私も長年、大豆摂取の推奨には力を入れてきました。近年、大豆に含まれるイソフラボン、大豆ペプチド、レシチンなどの機能性成分がクローズ・アップされ、研究が進むにつれて「大豆がもたらす健康」は揺るぎない事実になってきています。その効果として、コレステロール低下作用、血糖値上昇抑制作用、抗酸化作用、抗癌作用などが挙げられます。
次に、皆さんはヨーグルトや乳酸菌飲料を積極的に摂るように心がけていますか? 毎日摂っている私でも、意外や意外、知らなかった真実が明らかに。腸は、その役割として栄養分の吸収とともに、有害な細菌やウイルスから体を守るという大事な働きがあるため、「体内最大の免疫臓器」ともいわれています。人の腸内には、良い菌(有用菌)、悪い菌(有害菌)も含めて数百種類、約百兆個もの細菌が棲みついていて、それらの細菌を並べると地球2周半の長さにもなります。これらは、お通じの問題だけでなく免疫系の発達などにも関与しています。ですから人は、腸内細菌に棲み家を提供する代わりに、さまざまな恩恵を受けている「共生関係」にあるといえます。有用菌が減り、有害菌が増えると体調不良の原因になります。健康維持のためにはこのバランスを保つことが大切。バランスを崩す要因として、高たんぱく・高脂質の食事、過食・過飲・偏食、ストレス・過労、薬・抗生物質、細菌汚染(食中毒菌)、加齢などが挙げられます。
では、乳幼児期においてはどうでしょう。生後約1週間までに、急激に有用菌であるビフィズス菌がどの菌よりも増え、赤ちゃんの体は有害菌などの外敵から護られています。しかし、離乳食開始後、たんぱく質が大好物である有害菌が急に増え始め、有用菌と有害菌がせめぎ合う大人のバランスに変化していきます。有用菌を維持するためには「幼いころからバランスの良い食事を習慣づける」「適度な運動をして排便を促進させる」「乳酸菌を摂取する」ことが有効な手段といえます。
「ビフィズス菌を維持したいのに、なぜ乳酸菌 ? 」と思うでしょう。実は、ビフィズス菌は酸素があると増殖できない(=死んでしまう)のです。ですから、「すべてのヨーグルトにビフィズス菌が入っている」というのは大きな誤解です。大半の商品の容器内は真空ではないので、口に入る時には死んでいます。生きたビフィズス菌を大量に摂取できる食品は、そう多くありません。そこで活躍してくれるのが「乳酸菌」です。
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| さまざまなブースが設置された展示会場 |
乳酸菌は、酸素があっても増殖でき、多くのヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれています。一般的な乳酸菌は胃液でほとんど死んでしまうそうですが、ある種の乳酸菌は生きたまま腸内に到達し、なんとビフィズス菌を増やしてくれるとのこと。もちろん、ヨーグルトのような乳発酵食品は、カルシウムやたんぱく質の摂取に最適ですが、さらにもう一歩踏み込んだ、新しく研究・解明されている機能を食生活に取り入れていくことはより有効だといえます。
ところで日本といえば、世界一の長寿国ですよね。今回は開催国ということもあり、最新の日本の栄養政策についてのシンポジウムが数多く行われ、各国の栄養士たちも非常に注目していました。そこで他国には見られない、国を挙げての大規模な取り組みを報告します。
現在、日本で増加している生活習慣病(心疾患・脳卒中・糖尿病・がんなど)は死亡原因の約6割を占め、深刻な問題となっています。この生活習慣病の予防対策として、2008年4月からメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の概念を導入した「特定健診・特定保健指導」(41〜74歳対象)が始まりました。
この“メタボリック・シンドローム”(通称メタボ)とは、内臓脂肪の蓄積、肥満により、そこから糖尿病や高血圧、脂質異常症や動脈硬化を引き起こすさまざまな物質が放出され、これら高血圧などが複数重なると心筋梗塞や脳梗塞、脂肪肝や通風の発症リスクが高くなる病態のことをいいます。日本では、このような科学的な解明によりメタボリック・シンドロームにいち早く着目し、新しい保健制度を打ち立てたというわけです。
このメタボという言葉、日本では流行語大賞にも入るなど認知度は高く、「健康でいたい、そのために何かをしなければいけない」と考えている人がそれだけ多いからだといえます。それでは「メタボ自己チェック」をしてみましょう。
※内臓のまわりに脂肪がつく内臓脂肪型肥満は、お腹がぽっこり出てくるので腹囲測定で自己チェックできます。
問1:あなたの腹囲(おへそ位置)は何センチですか ?
男性85センチ以上、女性90センチ以上に該当する方は問2へ
問2:下記で当てはまる項目はいくつありますか ?
a. 血糖:空腹時血糖値110mg/d1以上、または薬剤治療中
b. 脂質:中性脂肪150mg/d1以上、またはHDLコレステロール40mg/d1未満、または薬剤治療中
c. 血圧:最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上、または薬剤治療中
問1に該当し、かつ、問2のうち2項目以上に該当する人は、メタボリック・シンドロームです。問2で1つだけ当てはまった人は、メタボリック・シンドローム予備軍です。
「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」のスローガンのように、予防対策を1人ひとりがしっかりと習慣づけることが最も重要です。適度な運動をして、バランスの取れた和食を食べていますか ? 日本を離れ、海外で暮らす。人の体は住む環境や食の変化に順応していきますが、すべてがうまく機能するとは限りません。やはり日本人には日本人特有の持って生まれた体質というものがあり、長年培われた日本の風土や食習慣に適した機能が備わっています。それを十分把握した上で、大人も子どももこの国での食生活の見直しや運動による健康づくりが大切です。ですので、前述のような日本人を対象とした国の政策を指標にするのも1つではないでしょうか。私自身、そのような配慮も交えながら、皆さんのより良い健康づくりのサポートを担えればと願っています。
プロフィル 佐古しのぶ
日本では管理栄養士、HACCP管理者(食品衛生管理者)として病院や特別養護老人施設、保育園、セントラルキッチンなどに勤務。渡豪後、パーソナル・トレーナーの資格を取得し、現在、Fitness Centreに勤務。食事と運動の両面から健康作りのサポートを行う。豪州において日本人の栄養士として貢献すべく「世界に誇る長寿食=伝統的日本食」の紹介や栄養コンサルティング活動を展開。
Email: shinobusako@gmail.com


































































































