法律相談室
- 第2回 遺産処理計画 [2008/8/05]

デュー里香
ハートネット法律事務所
QLD州弁護士 MARN 0425896
第2回 遺産処理計画
質問:オーストラリアでは、遺言状がないと相続人に渡る遺産価値が大きく減少すると聞きましたが、弁護士を雇って、遺産処理計画をする必要があるのでしょうか ?
遺産処理計画の概要
遺産処理計画とは簡単に言うと、自分の資産が、経済的・税法的に最も効率よく遺産相続人に渡るようにするため、生前から準備しておくものです。主に、遺族への経済的負担の軽減や遺産をめぐる遺族間の紛争の防止などがその目的となりますが、自分の資産を、いかに最大限に自分のために有効活用するかもその検討の対象となります。統計によると、オーストラリアに在住する人口の60%は、有効な遺言状なく死去しています。その60%の1人になる前に、合法的な遺産の処理計画を構築することをお薦めします。
遺産処理計画において必要となる書類
最も重要な書類として挙げられるのが、遺言状と委任状(POA)です。遺言状は、自分の資産を死後特定する相続人に引き渡すため作成される書類です。POAは、何らかの理由により、自分の財務・健康・私的事項に関して、意思決定が不可能になった際、第3者に委任することによりその効力を発揮する法的書類です。
遺産処理計画の作成における留意点
* その行使にあたり簡潔であること
* 維持費が安価であること
* 自分のために活用する資産と、遺族に残す資産のバランスが取れていること
* 定期的に見直すこと
主な遺産分割方法
遺言状により、遺産をある特定個人に直接残すのも、遺産分割の1つの方法です。遺言状がその効力を発揮するには、資産が確実に指定遺族へ譲渡されるよう、遺言状でその仕組みが構築されていることが必要です。
もう1つの選択肢として近年普及しているのが、信託保管組織「トラスト」の活用です。これは通常、弁護士・会計士により作成されます。中でも最も活用されているのが「ファミリー・トラスト」で、これは資産の名義はトラストに譲渡されますが、自分で管理できる種類のトラストです。
また、トラストを遺言状に盛り込むケース「遺贈トラスト」の活用も増加しています。その利点は、
* 社会保障に関する権利を保護できる
* 生存する配偶者が再婚した場合、遺産が確実に自分の子どもだけに遺贈される
* 純資産利得税(キャピタルゲイン・タックス)・収益税面での利点がある
* 知的障害・感情障害の子どもがいる場合、その子どもを確実に保護できる
* 遺産相続人が破産・離婚した場合も、相続される遺産を保護できる
遺産処理計画は必ず必要なもの ?
各個人の経済状況によります。スーパーアニュエーション、またはある程度の資産を持つ場合は、譲渡される資産価値の最大化につながるので検討する価値があります。
実際に遺産処理計画が有効な事例を下記にまとめます。
* ファミリー・ビジネスを遺族に譲渡したい場合
* スーパーアニュエーションの支給金がある場合
* チャリティーに遺産を寄贈したい場合
* 純資産損がある場合
* 純資産利得税が発生する資産を所有する場合−1985年9月19日以前に購入した資産
* 家族に負債がある場合
* 遺産分割を柔軟的に行いたい場合−多数の子息・税法上の利点
既に遺産処理計画を持っている場合の留意点
もう既に遺言状・POAを作成ずみの場合も、いくつか考慮すべき点があります。
* 日本で遺言状を作成した場合、オーストラリアにある資産に適用されない場合があるので、QLD州法に則り合法的な内容であるか確認することをお薦めします。その合法性の立証には高額な費用が必要となり、QLD州法に則った遺言状を別途作成される方が、安価な場合もあります。
* 遺言状作成後の結婚・離婚などにより、存在する遺言状・POAが、その効力を失う場合があります。
* 個人的な状況・経済的な状況に変更がある場合、既存の遺言状がその状況にそぐわないケースがあります。
* 現在の配偶者と再婚で、再婚前の子息が存在する場合、自分の子息をほかの家族より保護したいケース。
遺産処理計画は、自分の状況に合わせ、自分の意思で構築するものです。死後の計画立案と受け取ると、そのイメージは暗いものとなりますが、愛する家族への経済的・精神的な負担を軽減するという意味で、前向きに取り組むべき課題と言えるでしょう。
※ここに記載する内容は、一般的な案内で、法的アドバイス・法律の詳細な解説ではありません。
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