税務&会計 REVIEW
- 税務考察−移転価格制度 2007/2008年度グローバル移転価格調査 (後編) [2008/7/02]
税務&会計 REVIEW
アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正
税務考察−移転価格制度 2007/2008年度グローバル移転価格調査 (後編)
アーンスト・アンド・ヤングは、世界24カ国の多国籍企業850社を対象に隔年でグローバル移転価格調査を実施しており、その調査結果を発表しました 。「2007/2008年度移転価格制度の世界的な傾向、実務および分析」と題した調査結果は、多国籍企業が世界中で起きている経済、規制、財務上の変化にどのように対応しているかを調査したものであり、税務当局の計画や認識、動向を知る手がかりとなります。今月はその調査結果の主要内容について前月号からの続きをご案内します。
リスク管理
(以下は、先月号からの続きです)
移転価格のリスク管理として、データと記録の保持、定期的なドキュメンテーションの見直し、関連事業社間取引を適宜反映する同時文書化の実施が、リスクを低減するための重要な対策として認識されています。
本調査では、以下のことが明らかになっています(右下グラフ参照)。
* オーストラリアに本社のある回答企業の50%は、同時文書化を実施しています。
* 一方で、移転価格のドキュメンテーションをグローバルな協調体制で同時に作成していると回答した親会社は3分の1(オーストラリアでは38%)に過ぎません。
* 大部分の回答企業は移転価格リスク軽減が最優先事項であると考えており、その理由で、ドキュメンテーションを作成しています。
オーストラリアの移転価格の文書化要件で重要なのは、税務通達TR98/11に記載されている通り、同時文書化という点です。この要件は、オーストラリアに本社を置く回答企業で同時文書化していると回答した企業が50%に過ぎず、2005年の63%から低下しているという今回の調査結果と対照的です。今回の調査でみられた同時文書化の減少は、この文書化の規則が最初に導入されたのが10年も前のことであることからの制度疲労と、ますます複雑化する規則と要求を管理しようとして企業の税務部門がいっそう負担を感じたことに帰することができるかもしれません。
事前確認制度(APA)
世界的には、移転価格についての争議解決にあたっては、税務当局へ照会という方法が優先されています(47%)。オーストラリアの回答企業では、APAが最多で(46%)、税務当局への照会(42%)、提訴(12%)と続きます。
論争管理の手段としてAPAをグローバルに利用している親会社である回答企業は21%に過ぎない一方、APAを利用したことのある企業の86%は再度利用するだろうと答えています。オーストラリアでは35%の回答企業がAPAを紛争管理の手段として利用しており、78%が再度利用するだろうと回答しています。
2007年9月、ATOは、2006/2007年度に終了する会計年度のAPAプログラムについての最新情報を発表しました。これによれば、2007年度には31件のAPAが完了しました。内訳は、11件が更新、コンプライアンス促進活動により新規にAPAが5件増え、自発的なものが15件となっていました。おそらく、「税務当局のコンプライアンスプログラム」における無形資産の重視が影響しており、自発的なAPAの多くはライセンスまたは無形資産が関係しています。
事業再編
事業再編はATOが反応する引き金になる可能性があるとの認識が企業にはありますが、本調査によれば、企業再編における移転価格の影響にATOが予想以上に関心を高めていることにはまだ反応していません。
移転価格制度が税務当局との間で最も問題になりそうな状況はどんなものであったかと尋ねたところ、本グローバル調査に回答したオーストラリアの回答企業の50%が「事業再編」を挙げていますが、これは2005年の48%からわずかに上昇しているだけです。
2007/2008年の調査では、事業再編はあまり目立つものではありませんが、OECD、ATOの両者がこの問題を主要課題にしていることは明白です。世界的には、独立企業間原則は一貫して受容されていますが、その一方で原則の適用に関しては国ごとに大きな違いがあり、それが拡大化してきています。
特に、事業再編に対する独立企業間原則の適用方法についてはさまざまな見方が存在し、国際的な再編を実行する多国籍企業にとってますます不透明になっています。長期的には、このプロセスを準備・簡潔化するために追加措置を取らない限りは、これもまた、おそらく相互協議に大きな負担をかけることになるでしょう。
今後、多国籍企業の中で、自社の国際的な事業再編における移転価格のリスクを管理する必要性についての認識が高まっていくだろうと予測されます。
関連企業間の資金調達
過去10年間で、関連企業間のでの資金調達が移転価格税制で問題になりやすいと考えている回答企業の割合は、世界全体で25%から41%へ、オーストラリアでは40%から62%へと上昇しています。
企業からの回答は、利子や保証料の形での過剰な資金調達費用を通して利益を海外に移転しようとする多国籍企業の措置についてATOが最近注目していることと一致しています。
ATOは、税務通達(草案)TD2007/D20を発表し、その中で利子や保証料など控除可能な費用の価格決定についてのATOの見解を論じています。この税務通達(草案)は、過少資本および移転価格規定の相互作用について、暫定的な見解を明確にするものです。
それによれば、過少資本税制には「セーフ・ハーバー規定による負債額」が存在するが、税務長官は納税者の負債財源すべてに対して適切な独立企業間価格を独自に算定できるとしています。また、セーフハーバー規定による負債額は過少資本税制に特有の概念で、過剰な負債に対する控除を認めないための仕組みであり、一般的に負債関連の独立企業間価格を設定するためのものではないともしています。したがって、過少資本税制の適用にかかわらず、納税者は関連会社間との資金調達の価格決定にあたっては、独立企業間価格を基準とする必要があります。
移転価格制度に要するリソースの増大
世界中の税務当局が移転価格における独立企業間原則の確保を目指して調査を拡大し、洗練化してきているため、税規則の遵守確認に要する時間とリソースにも影響を与えています。
回答企業の3分の2は、過去3年間で移転価格制度に要するリソースの増大を国内外で経験しています。
移転価格取引とその調査の範囲と洗練化が世界中に広がっていることを踏まえ, この調査が、多国籍企業が自社の移転価格の慣行が税効率の良い方法で行われ、国外関連者との取引を正しく文書化することにより確実にリスクを軽減しているかを確認するきっかけとなればよいでしょう。
全回答企業の40%が移転価格は自社グループが直面する税務関連の問題の中で、最も重要な税務問題であると考えており、税務部門責任者は今後の経過を完全に把握していく必要があります。
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