税務&会計 REVIEW
- オーストラリアにおけるインフラ投資事情 [2008/3/15]
税務&会計 REVIEW
アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正
オーストラリアにおけるインフラ投資事情
インフラ分野で、オーストラリアは長い間、資本と専門知識を輸出してきました。10年以上前に、オーストラリアのマッコーリー投資銀行が、オーストラリアにおけるインフラ・プロジェクトの資金調達の手法で海外に進出しました。今日では、バフコップ・アンド・ブラウンなど、オーストラリアを拠点とするほかの投資銀行、オーストラリアのスーパーアニュエーション(年金)基金、そして世界中のインフラに資本投資するさまざまな投資家が参入しています。
現在、オーストラリアは、国内市場でますます巨大化し複雑化する主に輸送インフラ・プロジェクトの資金を調達し運用するため、世界から資本と金融の専門知識を求めています。オーストラリアでは、主に数十億ドル規模の超大型取引が増えているという理由から、国際投資家の収益機会は増えていると言えます。こうした取引には、多額の資本と高度な金融知識が必要です。プロジェクトは、規模が大型化しているだけではなく、費用も増大しています。その理由は、オーストラリアの活況を呈する国内市場において、建設労働者と資材の不足が開発コストを押し上げていること、また、人口の集中した都市部のトンネルなど、より複雑化した費用のかかるプロジェクトが行われていることが挙げられます。
最近、オーストラリアのインフラ市場には、ABN Amro、CKI、Cintra、Bilfinger Berger Investments、HOCHTIEFなどの海外投資家が資本投資家として参加しています。
有料道路
オーストラリアのインフラへの投資の大半は、官民パートナーシップ(以下PPP)によって行われています。例えば、オーストラリアの有料道路セクターには、PPPによる民間投資の長い歴史があり、過去20年に11件の契約が締結されています。現在、9件の道路プロジェクトが進行しており、143億ドル以上のインフラが民間部門によって建設されています。
PPP有料道路は、シドニーの環状道路網、メルボルンの交通網の強化、また、クイーンズランドでは、堅調な経済成長を下支えするなど全国的に価値をもたらしています。クロスシティ・トンネルの問題は広く報道されましたが、連邦や州の政府は引き続き、PPPから良好な成果を上げています。ドライバーの多くは、3.50豪ドルの料金を嫌ってトンネルを避け、9万台という1日当りの使用量は、予想を大きく下回りました。同トンネルは一昨年管財人の管理下に置かれ、管財人は7億ドルでトンネルを新たな投資グループに売却することを発表しました。
近年、オーストラリアの有料道路プロジェクトのコストは、平均約5億ドルから約10億ドルに上昇しており、今後控えているプロジェクトの大半は、1件当り20億〜50億ドルと見積もられています。これらには、M4の延長(NSW州)、イースト・ウエスト・リンク(VIC州)、F3/M2リンク(NSW州/連邦政府)、パシフィック・ハイウェイの改良、トゥーウンバ・バイパスなどがあります。
オーストラリアでは、民間部門から資本を調達するために、従来のPPP以外のアプローチも試みています。投資家の中には、有料道路の資金調達、建設、管理のために会社を設立し、株式公開する例もあります。
例えば、オーストラリア最大の株式公開会社の1つで、ブリスベンの南北バイパストンネルを建設したRivercity Motorway Groupによる30億ドルのプロジェクト建設は、2010年に完成が予定されています。
ボトルネック
オーストラリアには、ほかの多くの国同様、インフラ能力についての懸念があります。オーストラリア経営評議会は、「経済にとって最も重要で相互関連性のあるリスクの1つは、オーストラリアの継続的な成長と生産性を支えるためにオーストラリアの経済基盤が十分であるかどうか、また能力があるかどうかということにある」としています。また、インフラ・プロジェクトに対する長期的な国の見通しが投資家に示されない限り、オーストラリアのインフラ市場は、切望している投資を集められないということが、ますます明確になっていると考えられます。ある政府高官は、オーストラリアは、輸送のボトルネックのせいで資源ブームを逃していると発言しています。
公的投資
こうした問題に対応するため、新労働党連邦政府は、公的投資専門機関「インフラストラクチャー・オーストラリア」を設立することを発表しました。各州政府においては、今後10年間で、最大1,000億ドルの投資計画があります。こうした連邦や州による投資の大半は、輸送を改善しオーストラリアの輸出インフラを効率化するため、道路、鉄道、港湾、エネルギー・インフラおよびトンネルに向けられると考えられます。政府は、オーストラリアが競争力とグローバル市場での地位を維持するためには、中国やほかの輸出市場への原料の納入を迅速化するための強力なサプライ・チェーンが必要であるということを十分認識しています。
グローバルな投資家との提携
オーストラリアの連邦政府および州政府は、インフラに投資する資本を、プライベート・エクイティを集めるためのシード・マネーとして利用する計画です。政府の投資1ドル当り、一般的に2〜3豪ドルのプライベート・エクイティ投資を集めたいと考えています。この資本の一部はオーストラリアのスーパーアニュエーション基金から提供されるでしょう。オーストラリアの被雇用者は賃金の9%を年金基金に拠出することが義務付けられていることから、同基金には毎年数十億ドル規模の資本が集まります。しかし、インフラ・プロジェクトの規模、コストそして複雑性が高まっていることから、国内投資家は、リスク、資本そして専門知識を共有するため、ほかの国内投資家やほかの国際的な投資銀行、プライベート・エクイティ・ファンドなどの投資家との連携を求めるようになってきています。
オーストラリアは、新たな資本源になるという理由だけでなく、国内にはインフラプロジェクトに資本のリスクをかけるほどバランスシートが大きい建設会社が数社しかなく、国内市場の競争促進のため、よりグローバルな建設会社を呼びたいと考えています。
投資環境
オーストラリアの各政府は、プライベート・エクイティの資本増大を求めて、インフラへの民間投資がしやすい環境醸成に取り組んでいます。公的機関はほかの機関とのコミュニケーションを大きく改善し、アイデアやベスト・プラクティスを共有し、PPPモデルを改善しようと努めています。
さらに各政府は、例えば入札のより標準化したモデルの構築により、入札手続の効率化に取り組んでいます。また、入札に時間と費用をかけたが落札できなかった人に何らかの補助金を出すなどして、投資家を囲い込もうともしています。
民間投資家の方では、公的機関の懸念に耳を傾けるようになっています。 クロスシティ・トンネルは、投資家にとって警鐘となりました。クロスシティによって、特に国民と政府に受け入れられる料金を設定する際の政治的リスクに注意を払う必要性があることが明らかになりました。
これは、オーストラリアのインフラ市場への投資機会を求めている世界中の投資家にとって無駄な教訓ではありません。
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菊井 隆正(シドニー=ナショナル、ブリスベン/パース)
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