税務&会計 REVIEW
- 税務考察 移転価格制度 [2008/5/25]
税務&会計 REVIEW
アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正
税務考察 移転価格制度
アーンスト・アンド・ヤングは、世界24カ国の多国籍企業850社を対象に隔年でグローバル移転価格調査実施しており、その調査結果が発表されました 。「2007/2008年度移転価格制度の世界的な傾向、実務および分析」と題した調査結果は、多国籍企業が世界中で起きている経済、規制、財務上の変化にどのように対応しているかを調査したものであり、税務当局の計画や認識、動向を知る手がかりとなります。今月号から2回に分けてその調査結果の主要内容についてご案内します。
主な調査結果
オーストラリア国税庁(ATO)は、ますます複雑化する多国籍企業の移転価格への対応に関心を寄せており、リソースを投入してきています。今回の調査は、オーストラリアを本拠地とする企業が自社の税務リスク管理プロセスを評価するための貴重な考察を提供します。
■世界全体の回答企業の40%は、移転価格を自社グループにとって、その他あらゆる税務関連の中で最も重要な税務問題であると認識しています。
■親会社の74%、子会社の81%は、自社の移転価格問題は今後2年間にとって「絶対的に重大」または「非常に重要」な問題であると考えています。
■効果的なリスク管理戦略としての事前確認申請(APA)への依存も増大し続けています。オーストラリアの回答企業の38%はAPAを移転価格リスクへのエクスポージャーを減少させる手段とみなしており、この比率は2005年の26%から上昇しています。
■企業は事業再編が移転価格に関してATOが反応する引き金になる可能性があると認識していますが、本調査によれば、回答企業はまだ対応策を講じていません。ATOとの間で移転価格が最も問題になりそうな状況として本グローバル調査に回答したオーストラリア企業の50%は、「事業再編」を挙げていますが、これは2005年の48%からわずかに上昇しているだけです。
■関連企業間の資金調達は、依然として移転価格税制の中で問題になりやすい主要分野です。過去10年間で、この取引が特に移転価格税制で問題になりやすいと考えている回答企業の割合は、世界全体で25%から41%へ、オーストラリアでは40%から62%へと上昇しています。
監査経験
移転価格調査に重点を置く税務当局が増加しており、移転価格調査は広範囲かつより高度なものになってきています。
本調査では以下のことが明らかになっています。
■オーストラリアの回答企業の65%(世界全体の52%)は、2003年以降に移転価格の税務当局の調査を経験しており、22%(世界全体の27%)は最終的に税務当局から課税所得が更正されています。
■オーストラリアの回答企業の81%(世界全体の78%)は今後2年以内に移転価格の監査を受けるだろうと答えています。
こうした調査結果はATOの取り組み方と一致するものです。ATOの活動や広報内容から、移転価格に対する取り組み方がこれまで以上に精力的で高度であることを示しています。例えば、「ATO2007/2008年度コンプライアンス・プログラム」では、ATOは利益(と税金)をオーストラリアから他国へ移転するために、オーストラリアと国外にある関連法人の間で、適用されているさまざまな取決めを調査していることが明らかになりました。その例として、
―オーストラリアを拠点とする業務の再編で、機能、資産、リスクをオフショアへ移転する。例えば、ロイヤルティー収入を得る代わりに、知的所有権を額面で売却するなど
―過剰な保証金その他費用の支払い、オーストラリアの本社企業から国外の子会社に対する、無料サービスの提供
中小企業層(年間売上高200万〜2億5,000万ドル)では、ATOは特に、過少資本税制、事業再構築、サービスおよび無形資産の取引に関わるコンプライアンスを調査しています。
財務報告がコンプライアンス・コストに与える影響
国外の税法管轄権局による報告要件の違いにより、多国籍企業が関連当事者取引の証拠に必要な書類が質量ともに増大しています。例えば、米国財務会計基準審議会(FASB)解釈指針第48号(FIN48)は、すべてのSEC登録企業と米国GAAPを採用する多国籍企業に適用されるため、オーストラリアを含む多くの国々で、移転価格リスク管理と費用の面で、重大な影響を与えています。
財務報告がコンプライアンス・コストに与える影響は、このグローバル調査の結果でも明確になっています。
■多国籍企業の87%が、財務報告の発展によってコンプライアンスに必要とされる要件が増大しているため、財務報告書を管理する上で、移転価格はリスクであると考えています。
■調査回答企業(世界全体およびオーストラリア)の半数以上は、移転価格のコンプライアンス・コストは増加したと回答しました。これは、財務報告や規制の強化の結果、費用が増加したと回答した企業が、親会社の29%、オーストラリアの回答企業の5%にすぎなかった2005年の調査結果から急増しています。
リスク管理
各国の税務当局の間の協調や情報交換がさらに進んでいるという世界的な傾向を背景に、企業が移転価格のリスク管理を重視する必要性が高まっています。特に、過少申告に対する国境を越えた多角的に行われている法の執行は、税務当局が移転価格制度管理に関してもはや狭い視点ではなく、世界的視野で物事を見ていることを物語っています。
以下の表で明らかなように、回答企業は引き続き、サービスと関連企業間の資金調達取引を特に税務当局との軋轢を産みやすい移転価格の問題として見なしています。
企業の回答からすると、移転価格問題を惹起する可能性のある状況が多岐に渡っていることを示唆しています。これは、企業にとって移転価格税制は「絶対的に重大」または「非常に重要」と考える回答企業の割合が高いという全体的な調査結果にも一致しています。
世界経済の成長が鈍化しオーストラリア経済に影響する可能性と、大幅な財政黒字を維持するようオーストラリア政府にかかる圧力を前提とすれば、73%の回答企業が金融監督庁の指示および監査の増加を、税務当局との問題を惹起しやすい状況であると認識していることは驚くにはあたりません。
(以下、次号に続く)

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