税務&会計 REVIEW
アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正
オーストラリア各州予算における印紙税改革の発表
2008年5月6日から6月12日の間に発表された、2008/09年度オーストラリア各州および準州の予算により、オーストラリアで行われている事業や住宅所有を奨励するための重要な印紙税改革が行われることになりました。本税務考察では、特記すべき変更が発表されなかった南オーストラリア州を除く各州・準州において、オーストラリアで行っている事業にとって最も重要となる改革を考察します。
主要な改革と免税
VIC州およびNSW州の不動産投資信託(REIT)に対する新たな免税措置
ビクトリア(VIC)州およびニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の両州では免税措置を拡張し、一部のステープル型不動産投資信託(トラスト証券とResponsible Entity *の親会社である上場会社の株式が一対で取引される)に対して優遇措置が取られます。これにより両州の免税措置は、連邦政府によるキャピタルゲイン税(CGT)ロールオーバー優遇措置と一致することになります。
*通常、不動産会社や銀行、または生保の100%子会社でプロパティートラストの外部運用責任主体
CGT免税は、大規模不動産信託による外国不動産信託への投資を促進するため、税務上不利とならないような構造改革を可能とすることを目的として、2006年7月1日に発効しました。しかし、ステープル証券取引に多額のランド・リッチ税が賦課される可能性があったことから構造改革は進まず、CGT免除の資格を有する事業体によるCGTロールオーバーは行われませんでした。VIC州とNSW州の予算で発表された免税措置の拡張はこの阻害要因を取り除くため、不動産信託に歓迎されることでしょう。
新たな主要信託が既存のステープル事業体と既存のステープル証券所有者の間に入るという前提条件を満たした上で、以下のように免税が行われます。
*NSW州:有価証券取引税とランド・リッチ税の免税。
*VIC州:ランド・リッチ税の免税。VIC州では有価証券取引税が課税されないため、免税の必要はない。
また、以下の点にご留意ください。
*NSW州およびVIC州共に、2008年7月1日より免税が適用される。
*NSW州とVIC州において必要となる前提条件は異なる。
*NSW州およびVIC州において免税対象となる場合であっても、事業体がNSW州またはVIC州以外に土地を所有する場合、かかる州または準州の政府によりランド・リッチ税が課税される可能性がある。
ノーザン・テリトリー探鉱ライセンス、探鉱保持ライセンス、およびファーム・イン合意書
2008年7月1日以降、ノーザン・テリトリー(NT)における土地の売買・譲渡およびランド・リッチ税上の「土地」の定義が拡大され、鉱業法に基づいた探鉱ライセンス、探鉱保持ライセンスなどの資源の探査開発権を含むようになります。これにより以下が発生します。
*これら権利の譲渡は、土地の譲渡と同様に扱われる。
*これら権利の価値は、企業または信託が納税者としてランド・リッチ税納税額を確定する際に、土地の価値に含まれるようになる。
さらに、そのほか多くの州および準州と同様に、ファーム・イン合意書に基づき探鉱ライセンスおよび探鉱保持ライセンスが譲渡される場合、印紙税の優遇措置を利用することが可能になります。しかし、印紙税の引き下げは、一般的な鉱業不動産にまで拡張されることはありません。
タスマニア州における土地以外の事業資産の譲渡に対する印紙税の廃止
タスマニア(TAS)州は予算案の前にも発表した通り、予算案では、土地以外(営業権、知的所有権など)の事業資産譲渡に対する印紙税が2008年7月1日をもって廃止されることを承認しました。
税率と限度額の変更
変更内容に関しては、次の表をご覧ください。
| NT | |
| 対象 | 不動産譲渡 |
| 適用開始日 | 2008年5月6日 |
| 改定前 | 500,000ドル超過に対して最高税率5.4 % |
| 改定後 | 525,000ドル超過分に対して最高税率4.95 % |
| QLD州 | |
| 対象 | 不動産譲渡 |
| 適用開始日 | 2008年7月1日 |
| 改定前 | 980,000ドル超過に対して最高税率4.5 % |
| 改定後 | 700,000ドル超過に対して最高税率5.25 % |
| VIC州 | |
| 対象 | 一般 |
| 適用開始日 | 2008年5月6日 |
| 改定前 | 870,000ドル超過に対して最高税率5.5 % |
| 改定後 | 960,000ドル超過に対して最高税率5.5(据置き)% |
既存の印紙税の廃止
QLD州における不動産ローンに関する印紙税廃止の繰り上げ
2008年7月1日をもって、不動産ローンに関する印紙税が廃止されます。これは、2009年1月1日廃止予定を繰り上げたものです。この変更の発表により、不動産ローンに印紙税の課税を継続するのは、NSW州と南オーストラリア(SA)州のみとなります(ただし、両州ともに既に廃止予定日を発表しています)。
NSW州における土地以外の事業資産の譲渡に対する印紙税廃止の繰り上げ
2011年1月1日をもって、土地以外の事業資産の譲渡に対する印紙税が廃止されます。これにより、営業権、知的所有権、法定ライセンスなどに対する税の廃止が18カ月繰り上げられたことになります(当初予定されていた廃止日は2012年7月1日)。
NSW州における商業漁業権の譲渡に対する印紙税の廃止
2009年1月1日をもって、商業漁業権の譲渡に対する印紙税が廃止されます。これは、有価証券への印紙税廃止との一貫性を保つために実施されます。現在、商業漁業ライセンスシェアは法定ライセンスとして印紙税の課税対象となっています。そのほかの法定ライセンスへの課税は、2011年1月1日まで廃止されません。
オーストラリア首都特別地域における信託設置に対する名目印紙税の廃止
2008年7月1日をもって、不動産を対象に設定される信託(これ以外の方法では税法に基づく課税対象にならない)およびスーパーアニュエーション債権の設定あるいは改正に対して課税される名目印紙税が廃止されます。
NTにおける大多数の証書に対する名目印紙税の廃止
2008年7月1日をもって、NTにおいて証書に対する名目印紙税が廃止されます。これには、譲渡税の課税対象となる証書および信託の設定または変さらに関する証書は含まれません。信託を制定する証書、信託を変更する証書、実際的、潜在的あるいは未確定の権利に関する証書、信託に基づく受益権に関する証書および信託を取消す証書については、引き続き課税対象とされます。
2008年度西オーストラリア州印紙税法
西オーストラリア(WA)州予算では事業に関する主要な改正は採用されませんでしたが、WA州予算の発表は、2008年7月1日に発効する2008年度印紙税法(WA州)と時を同じくしています。
新印紙税法は、既存のWA州印紙税の規定を大幅に書き換え、新たな構造を盛り込み、数々の重要な政策イニシアチブを含んでいます。
特に以下の分野が著しく変更されます。
*譲渡取引に基づいた印紙税制度の採用
*既存のランド・リッチ税規定に変わる幅広い土地保有印紙税制度の導入
*企業とユニット・トラストの印紙税処理の一致
*ユニット・トラストを含めることによる企業再建免税措置の拡張および事前事後要件の緩和
*包括的な脱税防止規定の導入
*譲渡に関する印紙税の一般税率改正
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菊井 隆正(シドニー=ナショナル、ブリスベン/パース) Tel: (02)9248-5986 Email: Takamasa.Kikui@au.ey.com
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