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    税務&会計 REVIEW
     - オーストラリアにおける不動産投資信託(REIT)事情  [2008/4/29]

税務&会計 REVIEW税務&会計 REVIEW

アーンスト・アンド・ヤング パートナー/日系ビジネス・サービス・ナショナル・ディレクター:菊井 隆正


オーストラリアにおける不動産投資信託(REIT)事情

 オーストラリアのREIT(AREIT)は、30年以上前から取引されており、市場の洗練度と透明性が功を奏し、国内外から資金を集めることに成功しています。賃金の9%相当額を雇用者が拠出するよう義務付けられているスーパーアニュエーションが、オーストラリアで成長を続ける大規模な不動産投資信託市場を支え続けています。オーストラリアのREIT市場は、米国に次ぎ2番目の規模を保っています。過去1年間、AREIT、つまりListed Property Trust (オーストラリアでの名称)の上昇率は非常に堅調に推移しており、2007年6月30日までの12カ月間で時価総額が45.45%増加、770億米ドルから1,120億米ドルとなりました。

日本を中心とした対外投資が成長を牽引

 AREITによる対外投資傾向が継続していますが、それがオーストラリアREIT市場の成長に貢献しています。ここ数年、AREITは商業施設やオフィス・ビルを中心に、また、規模はそれほどではないにせよ工業施設を含めた米国の不動産の投資に成功してきました。最近では、AREITは、広範な欧州およびアジア市場にも投資しています。
 2007年の最も顕著な傾向は、オーストラリア証券取引所において、日本のオフィス(および商業用)不動産市場に特化したAREITのIPOが増加したことでしょう。
 AREITは円を借り入れ、円金利と不動産利回りのスプレッド(利ざや)を有利に活用しました。このような環境で負債比率を拡大させることにより、AREITはオーストラリア市場の配当利回りよりも好調な収益を生んできました。このようなIPOは、AREIT資本市場の有利なポジションを認識しうまく活用するものです。
 オーストラリア市場は規模が拡大しただけでなく、市場の厚み(取引高)も著しく増しています。平均的なAREITの2006年の取引高は10億米ドルでしたが、2007年には、これがREIT当り16億米ドルになりました。
 AREITの年間TROR(総収益率)は、2006年から24.64%増となりました(ただし、世界的に非常に好調な年だったことから、第8位にとどまっています)。
 また、昨年1年間にはAREITの利回りも6.50%から7.05%に上昇しています。この水準は、全世界でREITを上場している国の中で2番目に高くなっています。

低金利が負債比率の拡大に寄与

 1990年代終わりから2000年代初めには、平均的なAREITの負債比率は約15〜20%でした。しかし、低金利が数年間続き、また債務証券の利用が高度化したことから、この数字は着実に上昇しています。2006年には、平均的なAREITの負債比率が34.09%でしたが、2007年には43.93%に上昇しました。
 AREITは、債務の水準によって2種類に分けられます。通常、海外不動産に投資する信託では、オーストラリアの国内不動産のみに投資するAREITよりも債務水準がかなり高くなっています。海外不動産AREITの負債比率の水準は、多くの場合50%を超えます。これに対して、平均的な国内不動産AREITの負債比率の水準は44%の平均を下回ります。
 金利が上昇する中、こうした負債比率の水準が来年どう動くかが興味深いところです。

REITの収益源の多様化によりボラティリティが上昇

 AREITのボラティリティ(変動性)も、2000年代初めの約0.35から、昨年の0.55、今年の0.59へと、着実に上昇しています。AREITが純粋にパッシブな賃貸料収入から、利益に貢献するよりアクティブな事業に移行したことが、このボラティリティ上昇の主な理由であり、投資家がAREITを広範な上場株式のように扱う傾向が続いていることを表しています。

還元利回りの縮小が、資本の「リサイクリング」に拍車

 過去1年間、基調となるオーストラリアの不動産業界では、還元利回りが、既に低いと考えられていた昨年の水準からさらに低下しました。特に、オフィス・ビルおよび商業施設では、優良不動産のキャップレートは一般的に5〜6%であり、「5%台前半」の場合もあります。
 優良不動産の還元利回りの低下により、AREITには投資家が期待するようになった分配金利回りを引き続き達成しなくてはならないという圧力がかかり、資本の「リサイクリング」というトレンドを生んでいます。大手AREIT数社は、主要不動産の一部をホールセールの非上場不動産投資信託に売却しました。重要なことは、これらのホールセール信託は、ファンドの運用委託により、「目玉」不動産を売却したAREITが運用を継続するということです。こうして、AREITはファンド運用の手数料収入を増やし、高リスク、高リターンの市場へ再投資するための資本を調達します。
 こうした大型ポートフォリオをAREITから買い取るホールセール・ファンドは、投資資金の大半をオーストラリアのスーパーアニュエーション基金や年金基金から得ています。ホールセール信託の投資家は、不動産の資本成長見通しを評価する際に、単に不動産の利回りだけでなく、収益について、より包括的な見方をしています。
「資本リサイクリング」という解決策は、少なくとも今のところ、売却する側であるAREIT(資産に対して一定のコントロールを維持し、手数料収入を受け取る)と、購入する側であるホールセール信託の双方に有利な取引のように思われます。この傾向は2008年も続くと見られます。

北米プライベート・エクイティの参入

 昨年、大手AREIT、InvestaとMultiplexの2社が、北米のプライベート・エクイティ・グループにより買収されました。これらのREITを合わせると、オーストラリアREIT市場の時価総額の約100億米ドルに相当します。この2件の取引は、国際的な水準、特に北米の水準では、AREITが相対的に割安であるという事実を反映しています。InvestaとMultiplexはいずれも「ステープル証券」(後述)であり、したがって、不動産の開発および運用、並びにファンドの運用において活発に事業を展開し、同時にオーストラリアで最も需要の高いオフィス不動産を一部所有しています。

ステープル証券が大多数

「ステープル証券」という考え方は、数十年前からオーストラリアのREIT市場に存在していますが、ここ数年で、AREIT市場において大勢を占めるようになりました。基本的に、この仕組みでは、アクティブな事業会社の株式とパッシブな不動産信託の受益権が組み合わせられます。ステープル証券は課税優遇措置が変わらないまま、不動産産業に関連したリスク、リターンの高い事業活動に従事することができます。
 AREITはパッシブな不動産賃料収入のみで得られるよりも高い収益の組み合わせを実現するために、取引を多様化させる手段を模索しており、そういった動きがオーストラリアで不動産の利回りの低下という結果を招いています。Macquarie Bank のAREIT部門など、信託が外部で運用され、外部にファンド運用手数料を支払うという従来のAREITの仕組みで引き続き好成績を挙げているグループもいくつかあります。しかしながら、オーストラリアの上場市場ではステープル証券の「内的」運用が好成績を挙げるようになっており、今後もこの傾向は続くと考えられます。
 結局のところ、注目すべきは、優れたパフォーマンスを達成するためには、どんな仕組みであろうと、不動産とファンド運用チームの両方が「最善」である必要があるということです。

今後の見通し

 過去の水準から見ると比較的低くはありますが、オーストラリアの金利は上昇しており、AREIT、特に負債比率の高いAREITの収益には圧力がかかるでしょう。
ステープル証券および資本のリサイクリング傾向の継続に加え、AREITは、海外の不動産市場への投資を続け、その勢いはこれまでよりも加速するでしょう。既存および新規のAREITの両方にとって、欧州および中国を含むアジアがターゲットとなると思われます。しかしながら、AREITを介した米国市場への資本流入はまだまだ終わりそうにありません。2008年は恐らく、不動産セクターにおいて、そしてオフィス・ビルや商業施設という「コア」セクターを超える企業の事業がさらに活発化するでしょう。

*本記事に関するご質問はこちらまで 
Ernst & Young Centre Tel: (02)9248-5555


菊井 隆正(シドニー=ナショナル、ブリスベン/パース)
Tel: (02)9248-5986 Email: Takamasa.Kikui@au.ey.com

堀口 寿人(メルボルン)
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