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    税務会計最前線
     - オーストラリア2008年 連邦予算案税務解説  [2008/6/30]

八郷 泉KPMG会計事務所 
税務の解説/KPMG会計事務所 パートナー 八郷 泉


オーストラリア2008年 連邦予算案税務解説

 ウェイン・スワン財務大臣の初めての予算は、オーストラリア経済の見通しについて、2.75%の経済成長率、3.25%のインフレ率、失業率はわずかに上昇する4.75%と穏健であることが特徴である。

▼黒字の継続 (Surpluses continue)
 豪連邦政府は、成長が持続するオーストラリア経済および法人税収入の歳入増により、さらなる黒字予算を組んでいる。

財政バランス (Underlying Budget Balance)
 底堅い企業利益および個人所得税徴収の伸びにより、政府の税収は堅調に増加している。2007/08年度予算の実績額は、昨年の予算案と比較して、122億ドル増加する見込みである。
 2008/09年度の全体の税収額は、2,990億ドルを超える見込みである。1,267億ドルの個人所得税は、依然として税収に占める最大の単独項目ではあるが、個人所得税の減税の影響により、16億ドルの微増 (1.3%増) に留まっている。
 次年度の法人税収入は、81億ドルの増加の764億ドルとなる見込みである。見積増収額全体の60%以上は、昨年度は13.6%増加し、2008/09年度はさらに11.8%の増加が見込まれている法人税収入に基づく。
 州政府については、2008/09年度では25億ドルと見込まれるGSTの増収から引続き大きなベネフィットを受ける。
主要な税収項目 (Key Revenue Items)主要な税収項目 (Key Revenue Items)


▼個人所得税(Personal Taxtation)
個人所得税率と課税所得区分
(Personal tax rates and thresholds)

 表1のように、オーストラリア居住者の個人所得税率および課税所得区分は現在議会の上院委員会で検討されており、今冬の会期中に制定予定である。

 多くの課税所得区分が引き上げられ、さらに収入テストが以下のように導入される。

・現在750ドルである低額所得税額控除(low income tax offset)の上限額が、2008/09年度は1,200ドル、2009/10年度は1,350ドル、2010/11年度は1,500ドルと段階的に増加する。
・2008年7月1日以降、メディケア・レヴィの徴収が行われない所得上限金額を個人では1万7,309ドルに、家族では2万9,207ドルに引き上げる。
・2008年7月1日以降、1%のメディケア・レヴィ追加税が発生する最低所得金額を、独身者の場合は5万ドルから10万ドルに、夫婦の場合は10万ドルから15万ドルへ引き上げる。
・2008年7月1日以降、保育料税金還付割合が30%から50%に増加し、子ども1人当たりの保育料還付額が最大7,500ドルになる。また、還付は四半期ごとになる。
・2009年1月1日から新生児一時金(baby bonus)のための収入テストが導入される
・家族手当(family tax benefits)パートBのための収入テストが2008年7月1日から導入され、主たる稼ぎ手の課税所得額が最大15万ドルまでの家族に支給が限定される。
・15万ドル超の収入がある個人に対する配偶者税額控除が2008年7月1日から廃止される。
 その他関連する発表は下記の通りである。

・2008年10月1日から自宅初購入預金口座(First Home Saver Accounts, FHSA)が制定され、最初の自宅購入のために貯蓄される預金利息に対して15%の優遇税率が認められる。また、政府は個人のFHSAへの年間拠出額5,000ドルを限度としてその17%を共同拠出する。FHSA口座の残高が7万5,000ドルに達すると、それ以上の拠出はできない。
・2008年7月1日以降、家族手当(パートA)を受給する家族に対して教育費用の50%、最大750ドルの教育税額控除が認められる。
・納税者が小規模事業収入に加えてそのほかの収入を得ている場合において、起業家税額控除の受給資格を制限するために所得テストが導入される。基準となる調整後課税所得額は独身者は7万5,000ドル、家族は12万ドルであり2008年7月1日から適用される。
表1表1


株式オプション制度規制措置
(Share option scheme integrity measures)

 最近、メディアが従業員株式制度規制の規準が強化されると報道していたように、政府は、株式またはオプションの取得年度にその所得が従業員の税務申告に含まれていない場合、税法の繰延措置の適用があると発表した。
 雇用者から、市場価格よりディスカウントされた株式またはオプションを受け取った従業員は、株式またはオプションを資本勘定で保有したい場合、受け取った年度の税務申告に当該割引を含めることを選択することができる。
 この発表によって、従業員が自分に有利な税務結果になると分かった時点でディスカウントによる利益を過年度に遡って修正申告することが認められなくなる。
 従業員持株信託を利用している従業員持株制度に関しても発表があったが、政府がビジネス側の意見を取り入れ、その意図に合致させるよう法案を準備していることを示したことは歓迎すべきことである。
 変更案は、従業員受益者がオプション行使後に株式を受け取った場合、従業員持株信託の受託者がキャピタルゲイン課税の対象となる可能性があり、さらに、従業員持株制度規則の下でも従業員が課税の対象となることから生じる二重課税を取扱っている。

フリンジ・ベネフィット・タックス
(Fringe benefits tax (FBT))

 予算案の措置により、直ちに、従業員サラリーパッケージの下でFBT非課税として受け取ることのできたベネフィットが減少した。さらに、より以下のベネフィットに対してFBTが課税されることになる。

* 主たる用途が業務用ではないノート型パソコン、ブリーフケースおよび個人用デジタル機器関連措置により、従業員がこれらの品目の減価償却費を個人所得税の控除としてクレームすることができなくなり、税務上の二重ベネフィットが排除される。
* 従業員と関連者との共同保有投資資産に関連して発生した関連者分の費用負担
* サラリーパッケージの一部として敷地内にて提供される食事

 優秀な人材を確保するための手段として、今までこれらのベネフィットを従業員に対して提供してきた雇用者は、他の方法を考慮する必要がある。
 また、保育料税金還付金額の増加により、多くの従業員にとって、雇用者の敷地内にFBT非課税の保育施設がある利点は少なくなる。

▼ビジネス税制 (Business Taxation)

発表された措置(Announced measures)
 
 予算案には、金融商品関連課税(TOFA)に関して以下の新ビジネス税制についての発表が含まれていた。

* TOFA 第3および第4ステージ−政府は、金融商品課税のタイミングに関して、TOFA税制改正案を、納税者が早期適用できる選択肢をなくし、代わりに2009年7月1日以降開始する税務年度より適用することを提案している。適用日が繰延されることにより、納税者は新税制の導入に余裕をもって準備ができ、また、財務省と各利害関係者が、他の所得税法との整合性等未解決の問題を税制実施前に継続して協議する時間も確保できる。
* 投資元本保証借入(Capital protected borrowings) −直ちに、投資元本保証借入に適用される基準金利を変更する。一般に、基準金利を使用して借入金利の内の投資元本保証のコストを算定するため、この変更によって、当取引における資本コスト(損金にならない部分)が上昇するという影響がある。
* アッパーティア2金融商品(Upper Tier 2 instruments)に対する経過措置の延長−政府は、オーストラリア金融監督庁の管轄下にある金融機関が発行しているアッパーティア2や類似の資本的金融商品が、税務上債務としての取扱いを受ける期間を2008年6月30日まで延長した。政府は、規制草案を協議にかける予定である。
* 為替差損益税制−政府は、為替差損益に関する税制について、遡及的遵守コストの低減や関連条項が意図したように機能するように技術的修正を行うことを確認した。これらは関連当事者と協議の上進めていく予定である。

 新ビジネス税制に対する以下の発表も行われた。

* 投資信託(managed investment trusts)がオーストラリアを源泉とする(配当、利子、ロイヤルティー以外の)所得を非居住者に分配する際に、最終課税ではない30%の源泉税を控除する制度が最近導入されたが、これを最終源泉税制度に変更する。
 オーストラリアが実効的情報交換協定(effective exchange of information arrangement)を結んでいる国の投資家への分配については、最終課税ではない22.5%の源泉税率が(投資家の費用控除後の)分配金に対して2008/09年度から適用される予定である。この制度の実施は段階的に行われる。
 2009/10税務年度には、最終課税としての15%の源泉税率に引き下げられる。また、 その翌年以降には7.5%の源泉税率になる。最終課税としての源泉税は2009/10年以降、費用控除を勘案せずに一定の税率で適用される。この源泉税率の減少幅は、政府の選挙公約であった、30%から15%への引き下げのさらに先を行くものである。
 最終課税である30%の源泉税率は、オーストラリアが実効的情報交換協定を結んでいない国の投資家への分配に適用される。
* インハウス・コンピュータ・ソフトウエアの定額減価償却期間を2.5年から4年に延長する。これは、2008年5月13日午後7時:30分以降に発生した費用から適用になる。
* 2007/08税務年度より、小規模事業者CGT優遇措置の適用範囲が拡大され、関連者が行っている事業で使用されるCGT資産を所有する納税者やパートナーシップ事業で使用されているCGT資産を所有するパートナーにも適用される。

 ファミリートラストについては以下の発表があった。

* ファミリートラストを使用して、欠損金を利用することによって所得税を低減させる余地を縮小する。
* 2008年7月1日以降、ファミリートラスト選択規則におけるファミリーの定義を変更し、テスト個人(test individual)、またはテスト個人の、配偶者の直系の子孫である子または孫に限定する。
* ファミリートラスト選択で特定されたテスト個人の変更が1回に限り可能であったが、2007/08年度以降は(離婚の場合を除き)禁止される。
* 政府は、オーストラリア税務当局(ATO)に対して、大規模事業および富裕層を対象の中心とするコンプライアンス活動を強化するために2008/09から4年間にわたり、2億5,690万ドルの追加財源提供を約束した。このATOの活動に対する追加支援によって、4年間にわたって19億8,000万ドルの歳入増が見込まれている。


前政権によって発表されたその他のビジネス税制措置の現状
(Status of other previous Government announcements)

 政府は、前政権によって発表されたが法律として成立していない税制措置に対する姿勢を明らかにするとともに、自身が最近発表した税制措置に対するコミットメントを再確認した。
 政府は、特に下記のビジネス税制措置に対処する法案を2008年に上程する予定である。

* 連結納税(Tax consolidation)−改正案は、配賦可能原価(Allocable cost amount)および税務価値の再設定の計算、CGT税制との相互関係およびその他の諸問題に関連する連結納税制度の整備を目的とする。
* 過少資本税制(Thin capitalisation)−改正案が導入されると、過少資本税制の対象となる企業は、現在過少資本税制の計算を行う際に使用しているオーストラリア国際会計基準(AIFRS)に従う会計処理からの特定の逸脱が可能となる。
* 医療保険会社の株式会社化により当該医療保険加入者が取得した株式に対するキャピタルゲイン税の繰延措置の遡及的導入。
* 「Commissioner of Taxation v McNeil [2007]HCA5」における最高裁判所の判決を受け、長年にわたる株主割当発行(rights issues)に関する税務取扱を復活させる。

 政府は、特に下記に対処する法案を2009年以降に上程することを計画している。

* フランキング・クレジット取引における所有期間および支払規定に関する改正。
* 税務欠損金の繰越控除規定に関し、2002年7月1日に遡及し、特定状況下で株主継続性テスト(COTテスト)を満足させやすいようにする改正および2007年7月1日に遡及しCOTテストにおける“議決権”の定義を明確にする改正。
 政府は、下記の問題については最終的な決定は下していないが、早急に決断することを発表した。

* 現在税制審議会にて検討中である国外源泉所得に対する税の繰延防止規定に関する提案。
* 見直しが進行中である諸問題は以下の通りである。
* 税務機密および開示規定
* 所得税法上のさまざまな選択
* 税務申告書における無制限更正期間
* 所得税法上の国税庁長官の裁量権
* 所得税法上の租税回避防止規定
* 支払能力条項付の劣後手形の税務取り扱い
* 外国政府およびその投資機関のソブリン免税
* 租税条約上非居住法人となる場合の居住法人規定改正


▼間接税 (Indirect Taxation)

GSTと不動産の売却 (GST and the sale of real property)
 
 前政府は、マージン・スキーム(Margin scheme)を利用して不動産の売却に伴うGST納付額をさらに減少させるような取引を防止する税制措置を2005年に発表したが、その施行は延期されていた。
 この問題は、住宅開発業者が不動産をゴーイング・コンサーン(継続的活動体)のGSTフリー供給(ゼロレート)として購入、または農場をGSTフリー供給として購入し、完成した開発物件(典型的な例として、住宅地)をマージン・スキームを利用して売却する際に発生する。
 開発業者の意図は、GST納付額をGSTフリーの購入額と完成した開発物権の売値との差の11分の1と計算し、最終売却におけるGST納付額を減らすことにある。前政府は、このような解釈はGSTの対象となるべき不動産に対する付加価値の全額がGSTの対象とはならないため、マージン・スキームが意図した効果に反するとの考えであった。
 政府は連邦予算案の中で、政府が表現するところの「より対象を絞った(better targeted)」方法ではあるが、これらの改正を再導入する意向を示している。連邦予算案の発表からは「より対象を絞った」改正の正確な範囲は明確ではないが、将来的に下記のような場面では、マージン・スキーム改正規定によって、サプライ・チェーンを通じての付加価値の全額に対してGSTが課税される可能性がある。

* ゴーイング・コンサ−ンまたは農場のGSTフリー措置を適用して不動産が開発業者によって購入され、完成した開発物件がマージン・スキームを利用して売却される場合
* 連邦政府または州・地域が未開発の土地をGSTフリー供給として開発業者に提供し、後ほどマージン・スキームを利用して当該物件が売却される場合
* 顧客への最終売却にマージン・スキームを用いるのに先立ち、関連企業間での不動産の分割や関連企業への同様の不動産分配を含むGST非課税供給が、GST登録企業間で行われた場合
 また、政府は現行のマージン・スキーム規定に既に含まれている租税回避防止措置を補完するために、特定の当該措置を導入することを指摘している。
 これらの改正は、法律が制定され勅裁を受けてから適用となる。勅裁を受けた日から住宅開発業者がマージン・スキームを使用して売却される不動産にこの改正が適用されるか、または勅裁を受けた日以降にマージン・スキームを利用して売却するために開発業者が(GSTフリーもしくは非課税として)購入する土地に対してこの改正が適用されるかは明確ではない。以前この措置が発表された際の批判の1つは、この導入が事実上過去に遡って適用されることに対するものであった。
 政府の発表によって、既に論争が起こりやすく政策意図が不透明であるマージン・スキーム規定に関する議論がさらに加熱するだろう。

高級車税の増加 (Luxury car tax increases)

 連邦予算案に先立って政府によって発表されたように、高級車課税最低額(現在5万7,123ドル)を超える車に対して適用される高級車税の税率は25%から33%に増加する。
この税率増加は即座の導入予想に反し、連邦予算案では、2008年7月1日からの適用となっていることは驚きである。これによって、高級車の大掛かりな前倒し需要が現在から2008年6月30日の間に発生することが予想される。
 製造業者・カーディーラーおよび顧客に対して影響を与える問題は、現状の税率が2008年6月30日以前に注文された車に対して適用されるのか、または2008年6月30日以前に顧客にデリバリーされることが必要なのか、という点である。大部分の高級車税の対象となる車が輸入車であることを踏まえると、製造業者やカーディーラーが避けられないであろう需要の急増に対応できるか興味深い。新しい税率が実際に適用される際のさらなる詳細については、法案の発表を待つ必要がある。

以前発表された間接税の現状
(Status of previously announced indirect tax measures)

 以前に発表された税制措置の現状には以下の間接税問題が含まれる。

* GST還付金と4年間更正規定−政府は2008年5月6日に、「KAP Motors Pty Ltd v FCT[2008] FCA 159」についての連邦裁判所での判決を受けて、GST還付金規定の適用を制限する為にGST 法を改正する旨を発表した。
 興味深いのは、政府が5億ドルに上る額をKAP Motorsの判決を受け予算に計上していることが連邦予算案において明らかになったことである。2008年5月6日に発表された財務省のプレスリリースによると、還付金を受ける納税者と支払義務がある納税者との間での一貫性を持たせるため、還付金を4年間に限定する規定も改正される見込みであることが示されている。当該法案が国会に上程された時点で、KPMG は上記の改正についてのGSTブリーフを作成する。
* グローバル・ローミングと電気通信−前政府は、グローバル・ローミング・サービスがGSTフリーであることを確かにするため、GST 法を改正する旨を発表していた。新政府もこの改正を推進することを再確認しており、当該法案は国会の春会期に上程される見込みである。
* GSTと清算・管理下企業(Incapacitated entities)の代表者−政府は、GST 法がどのように清算・管理下企業の代表者(清算人や破産管財人等)に適用されるかを明確にするためのGST 法への改正を進めるかどうかを決定していない。
* チャリティーに対するGST救済措置−前政府は、チャリティーやその他非営利団体のGST会計を簡素化するため、当該団体の供給がGSTフリーであるかどうかを決定する際、全部原価計算およびプーリング方式の使用を認可できるようにGST 法を改正する旨を発表していた。現政府はこの改正は必要ないものと決定した。
* Pay-As-You-Go (PAYG)分割納税とGST納付および報告義務−前政府は、任意でGSTに登録している納税者(年間売り上げが75,000ドル以下)に対するPAYG分割納税とGST納付および報告義務を統一する旨を発表していた。新政府はこの措置の導入を2009年7月1日まで延期することを決定した。

関税・物品税 (Customs & Excise)

 政府はコンデンセイトの原油物品税からの免除を2008年5月13日の深夜(オーストラリア東部標準時)付けで取り下げることを決定した。これによって、以前原油物品税を免除されていた油田が同物品税の対象となる可能性がある。


この連邦予算案2008について、ご質問などがありましたら、下記まで。 KPMG Japanese Practice in Australia シドニー Rick AsquiniTel: (02) 9335-7185 Email: rasquini@kpmg.com.au 八郷泉Tel: (02) 9335-8913 Email: htippett@kpmg.com.au 山田友美Tel: (02) 9335-7755 Email: yujimoribe@kpmg.com.au ブリスベン 池広政久Tel: (07)3233-3221 Email: htanaka1@kpmg.com.au


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