ニュース解説
- どこまで続く金利高、約12年ぶりの高水準 [2008/5/01]

ローン返済に重荷−景気の急減速も
時事通信社シドニー支局:犬飼優
オーストラリアの中央銀行である豪州準備銀行(RBA)が3月上旬、市場金利の基準となる政策金利を引き上げた。政策金利7.25%は、1996年7月以来、11年8カ月ぶり。先進国の中ではニュージーランドの8.25%に及ばないが、それに次ぐ高い水準だ。金利の引き上げは急激に進行する物価の上昇をストップさせるのが目的。しかし、行き過ぎればリセッション(景気後退)を引き起こしかねない。
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| オーストラリアの政策金利の推移 |
根強いインフレ
RBAは3月4日、政策金利を7.00%から7.25%に引き上げると発表した。政策金利の引き上げは2月に続く2カ月連続で、利上げが始まった2002年5月以降では12回目。当時は4.25%だったため、この6年間で3%も上昇したことになる。
ちなみに景気低迷が長引いた日本の金利は現在、0.5%(無担保コール翌日物)。豪州との金利差(6.75%)に着目し、日本の個人投資家が外貨預金などの形で積極的に豪ドルに投資しているのはこのためだ。
通常、景気が良ければ、人手不足→賃金高→物価上昇(インフレ)が起こる。豪州の場合、鉄鉱石や石炭など「資源ブーム」を背景に恒常的な人手不足が続いている。
2月の失業率は4.0%と1974年以来、34年ぶりの低い水準。豪統計局によると、成人労働者の平均賃金(07年11月時点、残業手当除く)は前年同月比4.7%増の週1,110.20ドル。給与が増えれば、国民は消費を活発化させ、これが物価高につながる。物価上昇を測る消費者物価指数(CPI)は年3.6%(昨年第4・四半期のコア・インフレ値)だ。
RBAはインフレ目標制度を採用している。これは、望ましいCPIの上昇率をあらかじめ設定し、それを目指して金融政策を行う手法。RBAはインフレ目標を「2−3%」に設定している。簡単に言えば、CPIがこの2−3%以内で推移していれば、金利は据え置かれ、それを超えれば、利上げが実行される。
CPIの年3.6%はインフレ目標の上限である3%を超えている。確かにガソリンや食料品は値上がりしているし、住宅価格も都市部では高水準。RBAはCPIが年内にもう一段上がるとみて、2月、3月と連続利上げに踏み切った。
住宅コストが増加
金利を引き上げることで過熱気味の景気にブレーキを掛ける。好景気なのに、なぜそのような必要があるかは、インフレを放置すれば、物価はとめどなく上がり、逆に国民の生活を圧迫する恐れがあるためだ。物価を安定させることが中央銀行の大きな役割の1つとなっている。
利上げで国民生活に最も影響があるのは、住宅費。ローンを借りて住宅購入を検討していた人は金利が高くなれば、買い控えするようになる。また住宅ローンを抱える人は金利の上昇で返済額が増えれば、余分な消費を控えるだろう。
デイリー・テレグラフ紙によると、35万ドルのローンを組んでいる場合、3月の利上げで毎月の返済額は60ドルの増加。6年前と比べると、毎月の支払いは660ドルも増えている。
投資物件としてアパートなどを賃貸しているオーナーもローンを組んでいれば同様に負担増となる。ある不動産投資会社の試算では、50万ドルの物件で、賃貸価格が週450ドルであれば、負担増は週25ドルになるという。
さらに、家の購入を控える人が増えれば、賃貸物件が不足気味になり、家賃の値上がり要因となる。
これら住宅関連のコスト高は家計に大きくのしかかる。借金のない富裕層や、物価上昇と同時に給与も上がっている中高所得者を除き、通常の庶民の生活はきつくなる。財布の紐が締められ、余分な支出を控え始める。
消費マインドが落ち込み
実際、消費行動に変化が出てきそうだ。豪銀大手のウエストパック銀行が毎月消費者に聞き取り調査している「消費者信頼感指数」によると、3月は前月比9.1%低下の88.6となった。
指数は100を上回れば、消費に楽観的な人が多く、100を下回れば、悲観的な人の方が多いことになる。100を割り込んだのは、2カ月連続で、88.6は1993年9月以来の低い数字だ。
ただ、労働力不足は依然として続いている。このため、インフレ上昇圧力は根強く、「一時的な家計の需要減がみられるが、その実態はまだ不透明」(3月4日のRBA声明)だ。今後はこの減速の動きが顕著に現われるかがRBAがさらに利上げに踏み切るか、あるいはそのまま据え置くかのカギとなる。
RBAは1月を除く毎月1回、政策金利を見直しているが、4月24日に発表されるCPI(今年第1・四半期)の数値を見た上で、景気に明確な減速が見られなければ、5月6日にもう一段の利上げを行い、政策金利を7.50%にする可能性がある。
利下げ予想も
RBAは金利を引き上げ、過熱した景気をスローダウンさせ、インフレを抑えるのが仕事だが、一歩間違えると、減速のスピードが急すぎて、景気を悪化させてしまう。
国内だけをみれば、現在の豪州経済はおおむね好調だ。2007年の国内総生産(GDP)の伸び率は前年比3.9%と先進国の中では高水準。景気のけん引役である鉱物資源の需要は2008年度も強い。農業資源経済局(ABARE)によると、同年度の鉱物資源輸出額は中国からの鉄鉱石や石炭などの需要が堅調であることから、前年度比3割増と予測している。
しかし、海外に目を向ければ、米国は低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題に端を発した信用収縮が収まらず、リセッション入りの懸念が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)はRBAとは逆に政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利を相次いで引き下げている。昨年9月以降の利下げ幅は合計3%。現行の政策金利は2.25%まで下がっている。
信用収縮の動きは米国にとどまらず、世界の金融市場に波及している。豪州も例外ではなく、豪株式市場(ASX)は大きく揺れている。株価基準となる「S&P/ASX200指数」は昨年11月に過去最高値(6,828ドル)を付けたが、今年3月中旬時点で3割程度落ちている。
このように信用不安がくすぶる中、RBAが再利上げを行えば、豪景気を必要以上にスローダウンさせる恐れがある。市場では「RBAが年末までに利下げに動く」との見方も出てきている。
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