ニュース解説
- ウラン開発が前進へ [2008/10/11]

ウラン開発が前進へ
西豪州で自由党政権が誕生
西オーストラリア(WA)州で自由党政権が誕生した。同州で自由党が政権を握るのは2001年2月以来、7年7カ月ぶり。これにより、労働党政権下で禁じられていた同州でのウラン開発が前進する。現在、国内でウランの生産が行われているのは南オーストラリア(SA)州と北部準州(NT)にある計3鉱山だけだが、WA州が加わることで、豪州のウラン開発に弾みがつきそうだ。
◆3鉱山政策の足かせ◆
豪州は自国に原子力発電所はないが、海外の発電所向けにウランを輸出している。豪州のウラン埋蔵量は世界一で、世界全体の23%を占める。国内にウランの生産地を持たない日本は豪州にとって米国に次ぐ輸出先で、日本の原子力発電所で使われるウランの約3割は豪州産だ。
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| エナジー・リソース・オブ・オーストラリアが開発する北部準州のレンジャー・ウラン鉱山(Photo: ERA 2007 Annual Report) |
しかし、豪州は埋蔵量で世界のトップであるものの、生産量ではカナダに次ぐ第2位に甘んじている。これは原子力政策に消極的な労働党が、1980年代のホーク政権時代に打ち出した「ウラン3鉱山政策」(THREE MINES POLICY)が大きく影響している。
3鉱山政策は操業中のSA州のオリンピック・ダムとビバリー、NTのレンジャーの3鉱山以外の新規開発を認めないものだ。これが長年、豪州のウラン開発の足かせとなっていた。
ウランの開発・生産は「州」、輸出は「連邦」がそれぞれ所管している。1996年3月のハワード保守連合政権誕生に伴い、3鉱山政策は連邦レベルでは事実上なくなったが、州が労働党政権であれば、3鉱山政策は残るため、開発は進まない。
この3鉱山政策に変化が出てきたのは2007年4月。労働党は全国大会で3鉱山政策を破棄することを決定した。ただ、新規開発の可否は各州の労働党政権の判断に委ねることにした。当時、準州も含め各州政府は労働党政権だった。
◆生産開始は3〜5年後◆
WA州のカーペンター労働党政権(2006年1月〜08年9月)は3鉱山政策が破棄されて以降も、州内での新規開発(探鉱は可能)は認めなかった。これに対し、9月に国民党の協力を得て政権を奪回したバーネット自由党政権はウラン開発を認める意向を示している。
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自由党政権の発足を受け、豪州産ウランのロビー団体「オーストラリアン・ウラニウム・アソシエーション(AUA)」はWA州への経済効果を試算している。それによると、同州でウラン開発が進んだ場合、2030年までに州内生産は32億ドル(約2,700億円)拡大するとしている。
WA州で現在、探鉱が行われ、埋蔵量が確認されているのは、BHPビリトンのイェリリー(埋蔵量は5万2,500トン)、エナジー・アンド・ミネラルズ・オーストラリア(EMA)のムルガ・ロック(同4万6,500トン)、カナダのカメコと三菱商事の合弁会社が持つキンタイヤ(同3万6,000トン)、パラディン社のメイニーンジー(同1万2,000トン)などがある。
これらウラン鉱脈はそれぞれ探鉱段階であるため、開発としては初期段階。実際の生産に入るには、さらに詳細な探鉱調査が求められる。政府による環境面からの審査も必要だ。このため、バーネット新首相は「企業が操業を始めるには3〜5年はかかる」と強調。AUAも「ウランの開発は複雑で、2011〜12年までは生産に入らないだろう」とみている。
ではほかの州はどうか。ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州、ビクトリア(VIC)州、タスマニア(TAS)州の3州では、これまで大きなウラン鉱脈は見つかっていない。NSW州とVIC州に関してはウランの探鉱自体が禁じられている。そんな中、WA州の次に期待されるのがクイーンズランド(QLD)州だ。
同州では現在、ブライ氏率いる労働党が政権を握っている。昨年9月に首相に就いた同氏は、前任の首相と同様にウラン開発の解禁を否定している。これは労働党が原子力にアレルギーがあることもあるが、同州の場合、世界的な原子力産業の拡大が州の一大産業である石炭産業の衰退につながる恐れがあることも大きい。
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| ■オーストラリアのウラン鉱山 |
しかし、地球温暖化を防ぐ観点から国際社会は二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭をなるべく使わないようにする方向に動いている。また同州の労働党の中にもウラン開発に賛成の声も出てきている。このため、QLD州が解禁に動く日もそう遠くないかもしれない。
◆インドには輸出せず◆
一方、生産面では前進が見られたが、連邦政府が権限を握る輸出面では政権交代を受け、後退の動きが出てきた。昨年12月まで続いたハワード保守連合政権は、世界一の埋蔵量を誇るウランを「切り札」として、中国、インド、ロシアと次々と資源外交を展開した。
中国、インド、ロシアともに自国のエネルギー需要増に対応するため、原子力発電所の増設を急いでいる。しかし、肝心な燃料であるウランがなければ発電できない。
豪州は豪州産ウランを軍事転用や第三国に輸出されないように2国間で協定を結んだ上で、輸出している。このため、豪州産ウランはすべて原子力発電用に使われている。
その2国間協定は、中国とは2007年1月、インドとは同8月、ロシアとは同9月にそれぞれ結んだ。しかし、その後の12月に政権を奪回したラッド労働党政権はインドへの輸出に「待った」を掛けた。
党を問わず豪州の長年の方針として、核兵器の保有を制限する「核拡散防止条約(NPT)」の加盟国だけにウランを輸出している。中国もNPTに加盟しており、中国への輸出は年内に始まる見通し。しかし、インドはNPTに加盟してない。NPTに加盟していないのはインドのほかにパキスタン、イスラエル、北朝鮮などだ。
インド輸出を決めたハワード首相(当時)は「NPT非加盟でも軍事に転用されないことが確認されれば輸出していい」として、強引に押し切った経緯がある。これに対し、労働党はもともと自由党よりも核政策にはセンシティブだ。ラッド政権は「NPT非加盟のインドにはウランは売らない」と断言し、ハワード政権の決定を覆した。
さらにロシアに対しても、労働党が過半数を占めることになった下院議会が反対。協定は議会の批准が必要になるため、協定は発効せず、ロシアへの輸出は大幅に遅れる可能性が出ている。
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