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     - オーストラリア経済の動き(2007/11〜12)  [2007/12/29]

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オーストラリア経済の動き(2007年11月〜2007年12月)

三重苦に立ち向かう新政権
シドニー総合サービス代表 鳥居育雄

 昨年11月の総選挙で勝利したケビン・ラッド労働党政権は、経済政策的には極めて困難な局面でスタートすることになった。豪州経済は、現在、インフレの亢進、膨れ上がる貿易収支の赤字と企業収益の悪化という、三重苦に直面している。
 これらの問題の根底には、原油価格の高騰、労働力の払底、干ばつ、豪ドル高、社会的インフラの不足や労働生産性向上の停滞などの要因が複雑に絡み合っており、それらを解きほぐして解決し、豪州経済を正常な軌道に戻すことは容易ではない。

 マクロ経済政策は、基本的には連邦準備銀行(連銀)が担当しており、連邦政府は、最適な資源配分や所得再分配を目標として財政政策を発動する役目を担っている。
 金融政策と財政政策は錯綜した関係にあり、政策目標に向けての効果は時として衝突する。
 例えば、インフレ対策としての個人所得税の減税は、個人消費の増加を誘発し、金利の引上げとなり、さらには豪ドル高をもたらし、貿易収支の赤字を増大させることになる。もちろん、現実の経済では、教科書通りのプロセスをたどるのではなく、海外要因や市場の動きも関係して、複雑に展開する。いずれにしても、金融政策と財政政策は、お互いに独立しながらも、豪州経済をより良い状況にするために密接に連携する必要がある。
 ケビン・ラッド連邦首相(50歳)は、外交官の出身であり、経済政策の手腕は全くの未知数である。他方、主として経済政策を担当するとみられるウェイン・スワン連邦財務相(53歳)は、2004年以降労働党の経済政策を担当する影の内閣財務相であるが、大学講師の職歴があるだけで、専ら労働党内で仕事をしており、経済政策の手腕や実行力はこれからの課題となろう。
 スワン連邦財務相は、正式な就任に先立って連銀を訪問し、グレン・スティーブンス連銀総裁と懇談した。現在の難しい局面を打開するために、金融政策と財政政策の調和を早めに打ち合わせたものとみられる。
 スワン連邦財務相の最初の仕事は、地球温暖化への対策と連邦予算編成となる。地球温暖化対策は、環境問題であるとともに経済問題でもあるという彼の認識は、正当と評価できよう。
 ラッド連邦首相とスワン連邦財務相は3歳違いであるが、ともにQLD州ナンブアーという、小さな町で生まれている。今までは、トップの多くがNSW州やVIC州という大州の出身者で占められていただけに、新鮮な感じと、合わせて、本当に大丈夫かという懸念もある。三重苦に立ち向かう2人のこれからの手腕が注目される。

21世紀は資源の時代−鉱業企業の統合の行方

 農産物や鉱産物で形成される国際商品市況(Commodity Price Index)の推移は、構成される商品、表示通貨や作成者によってかなり異なる。
 概して言えば、戦後1970年代初めまでは横ばいで推移し、第一次石油ショックを契機に大幅に上昇した後、2004年ごろまでは、小さな動きはあったものの、大きな上昇はなかった。
 しかし、2005年以降は急上昇している。連銀が出しているRBA商品市況指数(2001-02年度=100)を豪ドル表示でみると、2005年3月には97.9であったものが、同年6月には113.9、2005年6月には142.9へと1年間で25%以上も上昇した。2006年10月に145.4と最高値となり、豪ドル高によりその後は緩やかに下落している。
 一方、米ドル表示でみると、2006年10月まではほぼ同じような上昇を続けた後、その後も緩やかに上昇し続け、直近の2007年10月が最高値となっている。
 おそらく、この商品市況の動きに最も大きな影響を及ぼしているのは原油価格であろうが、それに引きずられる形でほかの鉱産物価格が上昇し、また、それとは違う要因もあって農産物の価格も上がっているものとみられる。
 社会主義体制崩壊の混乱から、1997年には国家経済の破産状態まで落ち込んだロシア経済が現在、空前の繁栄を謳歌できるようになったのも、世界最大の輸出量を誇る石油と天然ガスの恩恵であり、ロシアを含むBRICSと呼ばれる、ブラジル、インドや中国が生産や消費を急上昇させているのが国際商品市況の上昇の背景である。
 20世紀までは、資源に恵まれた国や地域が必ずしも経済的に発展したわけではなかったが、21世紀に入ってこの状況が変化し、資源に恵まれた国が相対的に優位に立つ可能性があると言える。地球温暖化の影響やそれへの対策という点で、この傾向は鉱産物に止まらず、農産物にも及んでこよう。
 このような資源ブームのうまみを味わったのが鉱業企業である。鉄鉱石や石炭の価格は、ここ数年毎年大幅に値上がりし、世界的な鉱業企業は、棚からぼた餅式に大きな利益を上げた。価格決定の力が需要者側から供給者側に移ったからである。
 供給者側が寡占になれば、これをさらに確かなものとすることができる。この典型例が鉄鉱石の価格決定である。従来、鉄鉱石の価格交渉は、需要者側の代表である日本の鉄鋼メーカーと供給者側の代表であるBHPビリトン社やリオ・ティント社の間で行われ、そこで決定された価格が国際的な標準価格となっていた。その後、世界最大の鉄鋼生産国となった中国の企業が需要者側の代表となって、価格が決定された年もあった。
 しかしこの間に、世界3大供給者であるブラジルのCVRD(最近VALEと改名)とBHPビリトン社やリオ・ティント社がほかの企業を買収したことにより、寡占状態が一段と進行し、鉄鉱石の世界生産の7割以上を3社が独占することになり、価格決定力は、供給者側へと移っていった。
 もちろん、需要者側もこれに対抗して、世界の鉄鋼生産の約1割を占めるアルセロール・ミタル社の誕生など、経営統合が進んでいるが、鉄鉱石や原料炭に関する限り、供給者側が優位に推移していると言える。
 以上の世界的鉱業企業3社に続く、アングロ・アメリカン社(英)やエクストラータ社(スイス)も含めて、世界的企業による企業買収が進む中で飛び出して来たのが、BHPビリトン社によるリオ・ティント社への買収申し込みである。
 経営統合の理由として、経営効率の向上や開発コストの削減が指摘されている。確かに、採掘場は年々遠く、深くなり、また、新たな鉱山の開発には膨大なコストを必要とするので、それなりの合理性はある。しかしもう1つの狙いは、寡占による価格交渉力の強化であろう。その証拠に、BHPビリトン社の動きが伝えられると、アングロ・アメリカン社やエクストラータ社にも経営統合や買収の話が続出した。アメリカの新興投資ファンドによるリオ・ティント社買収も報道されている。さらには、中国やインドの鉄鋼メーカーによる買収申し出も噂されている。
 BHPビリトン社によるリオ・ティント社への買収については、リオ・ティント社側が、買収価格が低過ぎると拒否し、事態が長引くのを警戒して英国合併委員会に早急な決着を申し入れており、BHPビリトン社側が、自社株式の3倍交付という現提案を改定して、引き続き統合を模索することが予想される。現在(2007年12月15日)の買収申し出価格の総額1,500億米ドルという額自体、莫大なものであるが、最終的には、これを相当上回る額になろう。
 資源という実体のある企業であり、今後ますます資源の重要性が見込まれるので、十分に引き合う買収となる。資源ブームの恩恵により、世界的な鉱業企業は豊富な資金を蓄えている一方で、新たに投資ファンドなども参加して、予想もできないような事態が発生する可能性もあろう。

過熱気味の豪州経済

 昨年12月5日に連邦統計局から発表された国民所得統計によると、昨年9月四半期の国内総生産(GDP)の増加率(経済成長率、季節調整値)は1%、年間では4.3%となり、前期(6月四半期)とほぼ同じ大きな成長となった。
 成長の原動力になったのは個人消費であり、この四半期に1.2%増加した(季節調整値。以下同じ)。収入の伸びや個人所得税の減税の影響もあり、実質可処分所得はこの四半期で1%、年間では5.1%増加した。この可処分所得の増加が個人消費を押し上げたのである。
 豪州経済の現状を考えると、個人消費ではなく、企業設備投資や輸出がGDPを押し上げる力とならなくてはいけないが、相変わらず、個人消費が主力エンジンとなっていることに問題があると言える。ただ今回、良い傾向と言えるのは、家計部門の貯蓄率がプラスに転じたことである。今までは収入以上の消費を行い、足りない部分は借金でまかなっていたものが、今回は、収入内で消費を行い、余った部分は貯蓄に回せたことである。つまり、身の丈に合った生活をしたことになる。国民所得の計算上、全部門(家計、企業、政府)の貯蓄から全投資を引いたものが経常収支となるので、経常収支を好転させるためには、貯蓄の増加が必要である。その意味で、良い傾向が現れており、これを持続できるかどうかが重要であろう。
 もう1つの新しい傾向は、輸出価格と輸入価格との比率を示す交易条件(Terms of Trade)が2001年以降初めて下落に転じたことである。連邦統計局の数字を見ると、01年初め以来、交易条件は改善に向かい、特に05年以降は、世界的な資源ブームの追い風により輸出価格の方の上昇が輸入価格を上回るようになり(指数が100を超える)、これが昨年6月四半期まで継続し、指数では120まで上昇した。今回、これが0.8%ポイント下落したので、さすがの資源ブームも一息ついたものとみられる。
 重要なことは、史上稀な交易条件の改善の中でも、貿易収支が赤字を続けたことである。所得収支(利子や配当の支払い)は大幅な赤字であるから、貿易収支が黒字にならない限り、経常収支の黒字は見込めない。そして、経常収支が改善されない限り、対外債務は増加し続けることになる。
 全体として、豪州経済はかなりのスピードで拡大しており、価格上昇の勢いも強い。したがって、12月に発表される消費者物価の動向次第で、1月にも公定歩合の引上げがあるものとみられる。米国では、サブプライム問題の影響を断ち切るのに躍起となっており、昨年12月にも政策金利が0.25%ポイント引き下げられた。豪州が逆に引き上げれば、金利差はさらに開き、豪ドルの上昇が予想される。しかし、それにもかかわらず、貿易収支の赤字額次第では、豪ドルの下落もあり得る。外国為替相場の動きは予想し難くなっている。

 このほかの経済ニュースとしては、最後に残された大きな政府資産とも言うべきNSW州の電力設備(発電、送電、配電)が民営化されること、以前にアメリカの地方銀行を買収したものの、住宅抵当会社の経営破綻から撤退していたナショナル・オーストラリア銀行が農業関連の地方銀行を買収し、再び市場に参加したことや、カンタス航空や英国航空などのカルテル行為が指摘され、米国司法当局との司法取引を行うことなどが大きな話題となった。

主な経済指標の動き(2007年11月)

All Ords
$US / $A
TWI
¥/$A
日経ダウ
Topix
先月末
6779.1
92.16
72.2
106.57
16737.63
1620.07
月 末
6593.6
88.75
68.9
98.03
15680.67
1531.82
最 高
6853.6
93.14
72.9
108.97
16870.40
1635.78
最 低
6392.4
87.64
68.0
94.68
14837.66
1437.38

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