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    ■スポーツ・スペシャル
     - 石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味  [2008/3/13]

石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味〜ゴルフの神様が「まだ早いと言っている」〜
取材・文・写真:本紙編集部

 日本人史上最年少プロ・ゴルファー石川遼が2月5日、シドニーのザ・レイクスGC(パー73)でプロ・デビュー戦に挑戦した。参戦したのは、上位4位以内に入れば本戦への出場が確定する「全英オープン最終予選」。プロ初戦にしていきなりの海外メジャー出場なるかと、日本スポーツ界の大きな期待を背負って出場したこの大会。残念ながら、石川は本来の実力を発揮できず予選落ちとなったが、そこかしこに、プロとしての技、気力を見せる場面もあった。
 本特集では、彼のコメントを交えながら、当日の模様を再現する。

Profile●いしかわ・りょう。1991年、埼玉生まれ。6歳からゴルフを始め、2007年5月、初めて出場したプロ・トーナメント「マンシングウェア・オープンKSBカップ」で、15歳245日という世界最年少でのツアー優勝を達成、一躍「時の人」に。08年1月、プロへの転向を宣言。高校生プロ・ゴルファーとして、多くのファンを魅了する。

石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味同組のオージー選手と談笑。英語が得意という遼くんは、地元のインタビューにも英語で答えていた

石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味林の中からのショット。ボールの行方を追う


石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味冴えなかったドライバー。平均飛距離300ヤードを超える怪物くんも今回は意気消沈気味

石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味芝目を慎重に読む遼くん。「パットも思ったように行かなかった」


石川遼、デビュー戦はほろ苦い青春の味8番Hでチップイン・バーディーを狙ったアプローチがホールをかすめ、思わず「くそっ」と雄叫びを上げた


「課題」はドライバー
 真夏にもかかわらず肌寒い朝を迎えた当日、石川はアウトの10番ホールからスタートした。いつ泣き出してもおかしくない、どんよりとした雨雲がその後の調子を見透かしていたかのように低く垂れ込めていた。 
 日本からのマスコミが大挙して押し寄せ、彼の一挙手一投足にシャッターが切られる。その横では在住の日本人のギャラリーが50人ほど、彼を取り囲むように見守っている。「ギャラリーの(日本)人がたくさんいたので、びっくりしました。雰囲気も堅くなく、応援してくれる態度や反応が新鮮で、日本と違ってやはり外国なんだという気がしました。最後の最後まで応援してくれて、とても感謝しています」
 そんなプレッシャーを受けてか、石川の顔は緊張でややこわばっていた。直前まで入念なフォーム・チェックをしてからアドレスを決めた。放たれたプロ第1打は大きく左へ。
「やはり課題はドライバーです。朝イチの出だしが悪かった。1打目が真ん中に行くのと、左に行くのとでは、その後のスイングの流れにも影響するので…。きっと、アドレスが悪かったんです。今まで、回ってきた中で一番嫌なスタート・ホールでしたね」
 1打目のドライバーが影響してか第1ホール(H)はボギー。厳しい船出となった。さらに2H目のティー・ショットは左のバンカーへ。「アプローチはたくさん練習してきた」という石川は、不安定なドライバーをカバーするようにアイアンで寄せていくガマンのゴルフを展開。3連続パーで1オーバーをキープ。初バーディーは5H目、14番のロング・ホールだった。池越えの2ndショットは見事グリーン側を捕らえ、楽々とバーディーを取った。「ロング・ホールがカギとなる」と語っていた石川はその後、緊張がほぐれてきたのか、7H目でボギーをたたくも、8H目のロング・ホールでもバーディーを奪った。雨が持ちこたえたように、大崩れのないまま1アンダー、10位タイで前半を終えた。
「こうして大きな舞台(全英オープン)に挑戦できたこと自体は満足しています。また、こんなキレイなホールでプレーしたい」と語った16歳は、海外メジャーへの手応えを掴んでいたのかもしれない。

ロストとともに集中力も消失
 後半に入ると、雲行きがまたしても怪しくなってきた。雨は降らないまでも、強い風が吹き付けている。石川は昼食を軽くすませると、ドライビング・レンジに向かった。ボーダーラインの4位との差はわずか1打差。後半のチャージ次第では、日本のスポーツ紙各紙が1面を差し替えなければいけない快挙が待っている。とは言え、悪天候の中の2ラウンド、疲労が気になるところだ。「どこかが疲れると、すぐにスイングが乱れてしまう」という石川は、まだ成長段階の16歳。後半が本当の勝負となる。
 1H目でバーディーを獲得し、好スタートを切ったが、2H目のティー・ショットをまたしても左に大きくフックさせてしまう。2打目は目の前に枝の細い低木が視界を遮るピンチ。しかし、このピンチを迎えてからのショットに石川の光明を見ることになる。フェアウェーに戻すために選んだクラブはなんとスプーン(3W)だった。
「『通す』のではなくて『通ってくれ』と念じながら打つというのは、日本ではあまりないことですね。スプーンでチョイ出しする人もなかなかいないと思います(笑)」
 ボールは枝をすり抜けて、フェアウェーに戻った。ギャラリーから歓声が上がる。結果はボギーだったが、リカバリーの上手さを見せつけた。その後、雨と風に調子を崩し、ハーフを回って4オーバー(通算3オーバー)。この時点で、全英オープンは遠くなった。しかし、若き16歳プロは、良くも悪くもここから見せ場を作る。
 後半ハーフの10番Hでは、またしてもドライバーが左のブッシュへ。ところが、このボールがロスト・ボールに。おまけに、ボールを捜している間に後続のパーティーに順番を譲るという、スキップまでも体験してしまった。
「あれ?って思いましたね。試合でも(スキップして)いいんだって(笑)。このホールで集中力が途切れてしまいました。その後は、下半身が上手く回らず、どうすればいいのか分からなくなってしまいました」
 それでも、プロとして魅せるところは魅せた。圧巻だったのは、後半2H目の11番ロング・ホール。池越えを狙った第2打は、きれいな弧を描いて、ピン側1メートルのところにポトリ。パットも慎重に決めて、プロ初イーグルを達成。キャディの加藤大幸さんと拳を合わせて喜ぶ。ようやく会心の笑顔が飛び出した。また、13番Hミドル・ホールでは吹っ切れたのか、右方向に曲がっていく難解なコースをショート・カットする、330ヤードの豪快な1打を披露した。1オンにならずともグリーン・エッジ手前に落ちるスーパー・ショットだった。
「タイガー(・ウッズ)を意識して、思い切りスイングすることを心掛けました。当たりも一番良かったのでよく飛びましたね」
 後半、出入りの激しいプレーで終えた石川は最終ホールのパー・パットを沈めると、サンバイザーを脱いで、観客に一礼をした。プロとしての初戦が終わった。

プロ初戦を終えて
 クラブハウスに戻って来た石川は披露困ぱいといった様子だった。「体力がないですね」とポツリ。それでも、4大メジャーをかけたプロ初戦で、高校1年生が海外で戦ったという満足感もあるようだ。
「自分の弱さが露呈した1日でしたが、ムダではなかったと思います。収穫? 今はまだ悔しい気持ちが大きくて考えられませんが、得たものは必ずあると思います。どんな天候、体調でもいいスイングができるようにこれからも練習します」
 唇を噛みしめながら質問に答える石川には16歳の少年という面影は見られない。プロとしての悔しさが口を突く。
「ゴルフの神様に『お前はまだまだ(出場するのは)早い』と言われたような気がします。絶対にこの試合を忘れない」
 初戦こそ、本領を発揮できなかったが、今年はまだ全英オープン予選へのチャンスがあるほか、6月には全米オープンの日本予選も控えている。そして、もちろん国内ツアーにも参加しプロ初優勝、心・技・体ともにまだまだ成長する遼くんの動向に目が離せない。

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