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新世代のヒーローが世界を赤く染める
来豪独占インタビュー
浦和レッズ 阿部勇樹(MF)
Profile

あべ・ゆうき
1981年9月6日、千葉県生まれ。178センチ、75キロ。MF・DF。中学1年生で市原ジュニア・ユース入りした後、ジェフユナイテッド市原・千葉に入団。16歳10カ月でのJリーグ・デビュー以降、ユース代表などでも活躍。03年、日本代表初選出。04年、アテネ五輪代表メンバーでオリンピック出場を果たす。05、06年ヤマザキナビスコ・カップを連覇、ベスト・イレブン賞受賞。07年、浦和レッドダイヤモンズ移籍。Jリーグ通算214試合出場36得点(2006年最終節現在)。日本代表14キャップ(1得点)。

 アジア最強クラブを決める「AFCチャンピオンズ・リーグ(ACL)」は3月21日、1次リーグE組第2節計2試合を行った。シドニー市内オージー・スタジアムで行われた「シドニーFC VS 浦和レッズ」はドロー(2−2)に終わったが、浦和は21日現在、勝ち点4でE組首位をキープした。ACLで日本クラブ初制覇を目指す浦和が、日本人国内最高額の移籍金(推定、金額は未発表)を投じて獲得したのが阿部勇樹(MF・前ジェフ千葉)だった。本紙はACL出場を移籍の理由に挙げていた阿部にフォーカスし、彼の試合直前のインタビューとともに当日の試合の模様を再現する。

■赤の軍団
  その赤はアウエーの地で、普段にも増して赤く燃えているように見えた−−。3月21日、オージー・スタジアムのゴール裏に陣取った浦和レッズ・サポーター軍団のことである。現地報道によれば、日本から大挙したサポーターは約2,000人。ブルーで埋められたシドニーFC(SFC)のホーム・グラウンドにおいて、その「赤」はまさに異彩を放っていた。

喉がさけんとばかりに、叫ぶ浦和サポーターたち
喉がさけんとばかりに、叫ぶ浦和サポーターたち

  開始45分前、浦和の選手たちがピッチに現われた。日本代表でもおなじみの顔が並ぶ。小野伸二( MF)、田中マルクス闘莉王(DF)、坪井慶介(DF)、鈴木啓太( MF)、日本代表の縮図とも言えるスターたちの登場だ。その中にもちろん阿部勇樹がいる。日本代表の中でもメキメキと頭角を表しているMFは、移籍からわずか2カ月とはいえ、すっかりチームに馴染んでいるようだ。坪井と組んでアップを開始する。
「レッズはチームの雰囲気が本当に明るい。練習でも、その場にいて楽しいからすぐにみんなと仲良くなれました。特に山岸(範宏・GK)さん、坪井さん、啓太とは仲がいいですね」
  サポーターたちの声援は試合の前から既に絶頂を迎え、ホームのサポーターを圧倒していた。横断幕には熱烈なメッセージ、腹と耳に鋭利に響く太鼓とホイッスルの音、波のようにうねる大旗の数々、サポーターたちがそろった声と動きでスタジアムの神に叫ぶ。We're Reds !! We're Reds !!

阿部は終了間際、逆転への望みをかけ、一気にドリブル突破を図った
阿部は終了間際、逆転への望みをかけ、一気にドリブル突破を図った

■J王者、シドニーで窮地に立たされる
  初戦は、ホームで迎えたペルシク・ケディリ(インドネシア)を3−0と退けた。だが、完全アウエーの格下相手に24本のシュート浴びせながらの3得点という内容に、阿部は反省している。
「もっと点を取って勝ちたかったし、僕自身、もっと前に出て行っても良かったと思います」
  ここ2年、守備的MFながらJリーグで2ケタ得点をマークしているだけに、この試合で阿部のACL初ゴールを期待したいところだ。キックオフの笛が鳴る。阿部は左サイドバックでの先発。開始55秒後のことだった。SFCのマーク・ミリガン(DF)が放った30メートルのパスが浦和DF陣の間をすり抜けていった。デビッド・カーネイ(MF)が左足でそれに合わせると、ボールは瞬く間に浦和のゴール・ネットを揺らした。赤い軍団が落胆の悲鳴を上げた。
「一昨年の世界クラブ選手権(現FIFAクラブ・ワールド・カップ)にも出場している強豪チーム。体が大きいだけではなく、足元もしっかりしている」
  と、SFCの印象を語っていた阿部は決して油断していたわけではないだろう。しかし、痛い立ち上がりとなった。
  その後もSFCがボールを支配したため、阿部の仕事が増える。浦和は、ワシントン(FW)の動きを封じるブランコ・クリナSFC監督の戦術がピタリとはまり、攻撃の糸口がつかめない。さらに23分、坪井(DF)のタックルからPKに。ウフク・タライ(MF)が軽々と決め2−0。しかし、チームには落胆の表情はなかった。Jリーグ王者としての誇りが彼らの目には宿っていた。

■一進一退の攻防
  反撃に出たい浦和は、SFCのDF陣が見せた一瞬の隙に乗じることになる。30分、山田暢久(MF)からパスを受けたポンテ(MF)がシドニーDF陣のスペースを突いて柔らかいシュートを放ち、ゴール。1点差に詰め寄る。これを機に浦和に流れが来た。小野を起点として前線にパスが入り始めたのだ。さらに、37分、ヒザのケガで戦列を離れ2週間前に復帰したばかりの長谷部誠( MF)が投入された。オジェック監督は前日の記者会見で「90分を11人で戦うことが理想的だ。(サブの)長谷部を使うかどうかは試合の状況による」とコメント。その状況の変化をオジェック監督は見抜いていた。徐々に、シドニー陣営でボールが動くことが増えてきた。
  一方、阿部はDFラインを保っていた。前試合の反省点である「前に上がる」動きはどこで見られるのか。
「今後は、点の取れる選手になりたいですね。そのためには、日々のトレーニングの中で、どんどんコミュニケーションを取って、コンビネーションを高めていけばいいと思っています」
  と語っていた彼だけに、チャンスと見るや最後列から一気に上がってくるに違いない。

毎試合、豊富な運動量でチームの最終ラインを守る阿部のプレーは常に献身的だ
毎試合、豊富な運動量でチームの最終ラインを守る阿部のプレーは常に献身的だ

  後半10分、ポンテの上げたファー・サイドへのクロスはゴールマウスへ。慌てたクリント・ボルトン(GK)がキャッチし損ねた瞬間、永井雄一郎(FW)がねじ込み同点に。浦和サポーターの歓喜の声でスタジアムが揺れる。SFCイレブンに焦りが見え始めた。SFCのサポーターにも赤い炎が燃え移ったようで、両サポーターの声がスタジアムを埋め尽くした。いよいよゲームのクライマックスがやってきた。SFCがスティーブ・コリカ(MF)−デビッド・ズドリリッチ(MF)のラインで浦和の右サイドを突けば、浦和は小野が放つ中央からの華麗なパスでつなぎ、ワシントン、ポンテ、永井らが得点を狙いに行く普段通りの攻撃をしかける。
  激しい攻防の中、終盤、イエロー・カードが立て続けに飛び出した。65分闘莉王、70分長谷部、76分ニコライ・スタンレー(SFC)。サポーターもかなりヒート・アップしてきた。Jリーグでも圧倒的に数が多く、熱狂的なファンが多いことで有名な浦和サポーターのブーイングと拍手の嵐。
「(浦和サポーターの声援を聞いて)これまで以上に、がんばらなければいけないですね。レッズのサポーターは本当にサッカーをよく知っています。だから、まずは結果を求められると思うので、その期待に応えたいです」
  赤い軍団の声が届いたのか、89分、ようやく阿部が動いた。自陣のペナルティー・エリア前でボールを奪取した後の動きは見事だった。約30メートルのドリブル突破。マークするSFCのDFを意に介さないようなタフさで、左サイドを強引に駆け上がる。しかし、彼はゴール前で足を止めると、ゆるいグラウンダーでパスをつないだ。阿部のパスはゴールにはつながらず、結果はドロー。表面的には、阿部は結果を残せなかったことになるが、チームへの信頼とチームに献身的だからこその運動量がその一連のプレーに表れていた。

1次リーグ突破のための天王山と見られたこの試合。2人の負傷退場が出るなど激しいゲームとなった(写真中央は浦和DF・ネネ)
1次リーグ突破のための天王山と見られたこの試合。2人の負傷退場が出るなど激しいゲームとなった(写真中央は浦和DF・ネネ)

■そして世界へ
  ジェフ千葉のキャプテンとして、攻守にわたって活躍してきた阿部の浦和移籍(1月22日)は、今季Jリーグ最大の“人事”ニュースとなった。ユース時代からジェフ一筋で活躍してきた彼がなぜ !? と思う人もいただろう。ザルツブルグにレンタル移籍したアレックス(三都主アレサンドロ)の穴埋めと見る向きもあるかもしれない。だが、その誤解を解くカギがこのACLにある。移籍発表の記者会見で阿部は「ACL出場が移籍の理由」と断言している。ACLが12月に日本で開催される世界最強クラブ決定戦「FIFAクラブ・ワールド・カップ」のアジア代表を決める大会であることを知れば、千葉のファンも納得できるのではないか。彼はレッズの一員として、世界を目指している。
「この大会が(FIFA)クラブ・ワールド・カップにつながっていると思うと、ACLに出場できることはとても光栄ですし、新しい目標に向かっていくことができます。(国代表の)ワールド・カップ は確かに目標の1つではありますが、それを最高の目標としているわけではありません。レッズでクラブ・ワールド・カップに出ることが、今の大きな目標です」
  アジアの頂点を狙う浦和、そして浦和のメンバーとして世界を目指す阿部は今、Jリーグ全体を世界に広めるという大きな役割を担っていると言えよう。また、代表戦ばかりがフィーチャーされがちな日本サッカーにおいて、クラブ・チームで世界を目指すというJリーグの新たな魅力を生み出そうとしているニュー・ヒーローの活躍に、今後も目が離せない。

【AFCチャンピオンズ・リーグ1次リーグE組第2節 結果】
シドニーFC2(前半2−1)2浦和レッズ
得点:1分カーネイ、23分タライ、30分ポンテ、54分永井
観衆数:2万1,000人
<E組その他の試合>
ペルシク・ケディリ1−0上海申花

【1次リーグE組スタンディング】3月21日現在

  試合 勝ち点
浦和レッズ 2 1 1 0 5 2 4
シドニーFC 2 1 1 0 4 3 4
ペルシク・ケディリ 2 1 0 1 1 3 3
上海申花 2 0 0 2 1 3 0

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