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特集
いまや国民の半数が肥満問題を抱える、肥満大国オーストラリア

オーストラリアの社会問題

肥満と痩せ 〜体型の二極化〜

 世界では富める国と貧しい国の二極化、急激な経済成長による所得格差が進んでいる。そんな中、先進国でのみ起こっている「太り過ぎ」たり「痩せ過ぎ」るという問題。肥満が国民病と言われるオーストラリアでも、例外なく肥満と痩せという「体型の二極化」が起こっている。政府は国民の健康管理に乗り出しているが、果たしてその成果は――。

●先進国の肥満
  アメリカと並び、肥満大国と呼ばれるオーストラリア。なぜ、こんなにも国民の間に肥満が蔓延してしまったのか。
  技術の向上や経済の発展、それによる生活習慣や食生活の変化。ファスト・フード店が立ち並び、どこでも誰でも食べたいものは何でも手に入る先進国で、人々は高カロリーの食品を好んで口にし、加えてオーストラリアはアルコールの消費量も高い。経済の肥大化にともない進行してきた肥満は、先進国に起こって当然の病気だと言える。
  オーストラリア統計局(Australia Bureau of Statistics)が2005年2月に発表した全国健康調査(National Health Survey 04/05)によると、オーストラリア人成人男性の62%、女性の45%が肥満または太り気味。さらに子どもの肥満も深刻で、NSW州で5〜16歳の生徒を対象に行われた調査では、男子で25%女子で23%が肥満だという。肥満からくる病気への国の医療負担費は、実に年間30億ドルを超える。政府が肥満問題解決に躍起になる理由はここにある。

●肥満対策への政府の取り組み
  政府は05年から4年間で1億1,600万ドルをかけ、積極的に肥満対策に乗り出している。特に深刻な子どもの肥満に対し、運動を奨励するCMや、肥満の原因の1つとされるファスト・フードのテレビCMの規制など、メディアを使ってのキャンペーンを展開。また、QLD州のスマート・チョイスに代表されるように、学校内での高カロリーの食品やスナック菓子、砂糖を多く含む清涼飲料水の販売規制など、学校や地域で子どもたちへの「食育」に対する取り組みが本格化している。
  しかし政府が警鐘を鳴らしているにもかかわらず、自らを肥満と認識している人は男女とも全体の3割程度に留まっており、改善傾向にはないのが現状。同じ先進国でも日本などと違い、低カロリーの伝統食を持たない点や、加えて、細かいことは気にしないおおらかな国民性も災いしていると思われる。糖尿病や心臓疾患など、さまざまな病気を引き起こす肥満は非常に危険だということを自覚するところから始めなければならない。今年の8月から08年6月にかけて全国健康調査07/08年度版の調査が行われており、その結果が待たれる。

特集
今年からオーストラリアン・ファション・ウィークにもモデルの体型に関するガイド・ラインが設けられた

●痩せすぎる危険
  その一方で、肥満への過剰反応から摂食障害に陥る人が、この10年で2倍に膨れ上がっている。ファスト・フード店は低カロリーのメニューを売り出し、スーパーにはファット・フリーと銘打った食品が並ぶ。ヘルシーな日本食がブームになったのもここ10年ほどだ。自分の体型に関心を持つ人が増えたとも取れるが、喜んでばかりもいられない。
  昨年9月、スペインで行われたマドリード・ファッション・ショーでBMI値*18以下のモデルはショーへの出演を政府の決定により拒否された。11月にブラジル人モデルが拒食症のため死亡するというショッキングな事件も重なり、人々の摂食障害に対する関心が高まった。死亡したモデルは当時、174センチの身長で体重は40キロだったという。直後の12月には、イタリア・ミラノでもモデルの体型に関するガイド・ラインが設定された。そして、欧米諸国と比較して健康的体型を維持していると言われているオーストラリア人モデルだが、今年の4月に行われたオーストラリアン・ファッション・ウィークでも、初めてヨーロッパに倣いガイド・ラインが設けられた。特別視されてきたファッション界に変化が訪れているのは確かだ。

●美の基準
  そもそも痩せていることが美しいという美の基準は、どこからきたのか。ふくよかなことが富や権力の象徴とされ、魅力の1つと考えられる国もあるが、若年層ではやはり「痩せていることが美しい」という風潮が浸透している。そのために、若年女性たちが太ってもいないのに自分を太っていると評価し、必要以上の食事制限や無理な運動を行い、ひいては摂食障害にまでつながっている。さらには、先に述べたように痩せていることこそが美しいという概念を体現するモデルやスター自身もその体型維持、さまざまなプレッシャーなどから摂食障害に陥ってしまうことが多い。
  さまざまなデザインの服を着こなすスタイルを持ったモデルを必要としてきたファッション業界、それをもてはやし流行にするメディアが美の基準を作っているとすれば、痩せすぎの問題もまた、商業主義が生み出した先進国特有の問題だと言える。貧困のために食事が取れないのではない、飽食の中の餓死という悪循環。
“痩せていることこそ美”という概念、痩せたいという女性たちの願望が急転する可能性は少ない。しかし、痩せすぎモデルの禁止令など政府が動き出した今、「不健康なほどに痩せすぎていることは美しくない」という別の価値観を浸透させるのに、メディアが果たせる役割は大きい。国民も、自身の肥満や痩せすぎ、美の基準を人任せにし、政府やメディアに頼っていてはいけないということに気付いている。健全な肉体と精神が、健全な社会を作る。成果が現れてくるのはこれからだ。

*BMI値(Body Mass Index)…世界保健機関(WHO)が定める肥満の判定基準。体重(キロ)÷身長(メートル)の二乗。標準値は22.0。18.5未満:痩せ、18.5〜25.0未満:標準、25.0〜30.0未満:重量超過、30.0以上:肥満。

 

 


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