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    豪で輝く30'sキーパーソン
     - 豪で輝く30'sキーパーソン  [2008/5/28]

豪で輝く30'sキーパーソン

日豪プレスも今年で31歳 ! ということで、オーストラリアで活躍する30代に、“活き活きと輝く”ための秘訣を聞く。

第1回

「一番星」オーナー・シェフ 
武藤恵二さん

出会い、決断、努力

豪で輝く30'sキーパーソン
武藤さんの唯一の宝物は真っ白なベンツ

10年で年商3ミリオンの繁盛店に
 シドニー市内中心部、日本の大型書店や若者に人気のファッション・ブランド店が入店し、買い物客で絶えず賑わうギャラリーズ・ビクトリア。このショッピング・ビルにいつも満席状態のラーメン店がある。この4月で創業10周年を迎えた「一番星」だ。人気メニューはゴマ風味が食欲をそそる坦々麺に、本格醤油スープが売りの東京ラーメン、それにたっぷりとネギが載ったネギミソ・ラーメンや、ホウレン草を練り込んだ緑色の麺が珍しいつけ麺など。懐かしい日本の味を求めてやって来る日本人客が多いと思いきや、店内はアジア系を中心とした地元オーストラリア人がほとんど。「スシ」「テンプラ」「テリヤキ」と同様、日本の味である「ラーメン」が、ここオーストラリアでもかなり浸透していることがうかがえる。
 そしてこの繁盛店を経営するのが37歳の若きオーナー・シェフ、武藤恵二さんだ。「10年前はラーメンという食べ物を知らない人がほとんど。食べ方が分からずスープだけ飲んで帰る人もいました(笑)。けど、今はフォークをくださいっていうお客さんもずいぶん少なくなりましたね」とその浸透ぶりを振り返る。
 武藤さんは約50人のスタッフとともに、このギャラリーズ・ビクトリア店のほか、シドニーのボンダイ・ジャンクション店とゴールドコースト店、計3店舗 150席を切り盛りし、1日に800食ものメニューを提供、年に3百万ドルを売り上げる。

23歳、ワーホリとして来豪
 1994年、当時、都内のホテルでバーテンダーとして働いていた武藤さんが、ワーキング・ホリデー・ビザを利用して来豪したのが23歳の時。観光ブームに沸くオーストラリアには土産店などの働き口がいくらでもあり、来豪は「軽い気持ちだった」という。
 半年ほど経ったころに働き始めたラーメン店がビジネス・ビザのサポートをしてくれ、そして武藤さんは、3年目にその店舗を買った。商売に見切りをつけたオーナーが店を売りに出したのだ。「やり方次第でラーメンはもっと流行るはず」と確信し、購入資金の3万ドルをかき集めた。それが現在のボンダイ・ジャンクション店。98年、27歳の時だった。
 以降は99年にシドニー市内の「ストランド・アーケード」に出店、続いて2001年にゴールドコースト店を出店と着実に店舗数を増やし、ついに03年、ストランド店の規模を拡大するためギャラリーズ店をオープンさせた。まさに「飛ぶ鳥を落とす勢い」の快進撃。誰もがうらやむサクセス・ストーリーだ。
 この成功の秘訣はいったい何なのか。マーケティング戦略、ヒット商品の開発、人を集める店舗作り…。そんな答えを想像していると、「もちろんそれも大切なことですが、よくよく考えると、さまざまな巡り合わせがあったから。つまり運が良かった」。



豪で輝く30'sキーパーソン

社員旅行は毎年の恒例行事。写真は今年のイースター・ホリデーに訪れたハンター・バレー

最大の幸運は人との巡り会い
「一番星」を立ち上げた時に心に決めたこと。それが「本当に美味いラーメンは日本人以外にも分かってもらえる」という信念のもと、味づくりにこだわり抜くことだった。しかし武藤さんはラーメン作りについて知らないことばかり。ならばその道のプロに尋ねるしかない。そして武者修行するつもりで何度も日本に向かい、その度に多くの人に助けられることになる。
 チャーシューや餃子の調理のポイントを惜しげもなく教えてくれた中華料理店の職人、スープのたれの調合法をアドバイスしてくれた食品会社の研究者、自家製麺の打ち方のコツを教えてくれた製麺店の工場長…。高校時代のアルバイト先やホテル勤務時代の知り合いのつてだけが頼りだったが、思いもよらず、いろいろな親切な人に巡り合うことができた。武藤さんはこの時のさまざまなアドバイスやヒントを基に自己研究や改良を重ね、現在の一番星の味を完成させることができたのだ。まさに幸運としか言いようがない。
「それだけではありません。そもそも、ワーホリ先をゴールドコーストに決めていた私にシドニーを薦めてくれた知人の存在がありますし、前のオーナーが店を手放そうとした時に私がちょうど働いていたというのも偶然と言えば偶然」。ギャラリーズ店をはじめ、ストランド店やゴールドコースト店を出店する際も、タイミング良くこれぞという物件が見つかったのだと言う。
「でも、私が本当に自分が幸運だと思うのは、一緒になって店を盛り上げてくれる仲間と巡り会えたことなんです」。店舗をテキパキと動き回るスタッフを見ながら、武藤さんはそう断言する。
 店舗拡大は数十万ドルもの資金が必要な大きな投資だ。どの場所にどんな規模の店舗を出すべきか、判断は容易ではない。武藤さんはそのような重大な決断はすべて、創業以来の主要メンバー6人全員の意見が合わない限り出さないと言う。「投資額が大きいだけに1つ間違えれば致命的。それまでいくら調子が良くても、事業はそこで終了してしまいます。だからこそ、全員が納得する答えを出すために、皆で何回でも何日でも意見を戦わせて決めるんです」。
 武藤さんにとってはそんな彼らは今や家族同然の間柄なのだそう。10代、20代で加わった社員は今や30歳を超え、家庭も築いている。一番星がすべての社員やその家庭の生活の糧であることを思うと大きな責任を感じるが、互いを信頼し合う堅い絆で繋がった仲間と一緒に、仕事に情熱を注ぐことがこの上ない喜びと言う。
 その武藤さんとスタッフの目標は、あと10年で年商を今の10倍にすることだ。

仕事人間のオフタイムの楽しみは…
「とても質素です」とキッパリ言い切る。趣味は、毎週土曜の休暇日に健康のために始めた奥さんとのウォーキングだ。1時間ほどかけて自宅から近くのビーチに向かい、海からは海岸線沿いの遊歩道を数キロにわたってひたすら歩く。遊歩道が終わるビーチにあるカフェでひと休みしたら、今度は復路。自宅に向かって来た道を戻る。1日がかりだが、普段は忙しくてあまり話す機会のない奥さんとの貴重なコミュニケー ションの時間。とても楽しいという。
 ただし、大切にしている“宝物”はビッグだ。2年前に新車で購入したメルセデス・ベンツSクラス。20万ドルはくだらない。「これは本当に宝物。僕が唯一お金をかけているものです。若いころからベンツに乗ることが目標だったんです。これに乗るために仕事をガムシャラに頑張ってきた、というのが本音かもしれません(笑)」。
 社員それぞれが目標を持ち、その目標を実現するために力を注げる職場がある。単純明快。美味いラーメン作りを追求し、1人でも多くの人に美味しさを知ってもらい、オーストラリアで一番輝く星にする。それが武藤さんが始めた「一番星」だ。


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