MASUYAグループ 就職最前線
- BOYS BE AMBITIOUS ! 第7回 [2009/1/01]

連載No.7
食、自然、そして人…。本音で語ろう
KEN SADAMATSU
今回のテーマ「私と自然」その3では、食材の宝庫タスマニアの紹介とともに、サーモンの養殖などについて語っていく。
(写真)サーモン養殖場のオーナーと筆者
(Huon Aquaculture Company: www.huonaqua.com.au)
|
| 大自然に囲まれた「グランビュー・チーズ」のチーズ工場(Grandvewe Cheeses: www.grandview.au.com) |
第二部その3
■タスマニアの食材とその魅力
今は10月、これからがベスト・シーズンになるシーフード。ホタテ貝(9月〜12月)、ウニ(10月〜3月)、牡蠣(10月〜1月)、サーモン(10月〜3月)、ロブスター(11月〜4月)…。野菜、フルーツでは日本から栽培技術が導入された「ICHIGO」と呼ばれるブランドのストロベリー、サクランボ、ナシ、リンゴ、玉ネギ、ワサビなどがタスマニアで研究、生産されている。また、穀物飼育ではなく健康的な草を食べさせ、ビーチでジョギングさせながら育てている和牛、各種チーズ、「リースリング」「シャルドネ」「ピノ・ノアール」などのワイン…。
私が最初にこの地を訪れたのは10年前。その時は観光で数日間ホバートに滞在し、豪州最古のブリューワリーである「カスケード」のビール工場や、10月でも雪の残る山に登ってみたりしたが、これと言って印象に残るものもなく、あまり見る所のない土地だなと、正直感じた。でも、大陸から離れて、ひっそりとたたずむタスマニアが好きになった。それは、私自身がミカンの山に囲まれた山奥で生まれ育ったから、惹きつけられるものがあったのだろう。
3年前、大手水産会社「POULOS」の会長が、私をサーモン養殖場と彼の支店のある加工場に招待してくれた。いかにして毎日処理している何百匹ものサーモンの中からより良いものをシドニーに、鱒屋ブランドとして送るかというテーマがあった。その翌日、私は北部ロンセストン近くのウニ加工会社での視察の帰り、道に迷い、北西端のスタンレイまで行ってしまった。必死で車を飛ばし、真夜中ホバートに帰り着いた。その時、大自然の中で少々の恐怖を感じながら、夕暮れ時の山々の、自然の美しさに私は感動した。また、山奥にあったガソリンスタンドの店頭に売られていた巨大なラズベリーを食べて、そのおいしさに驚いた。
その後、訪れるたびに変わりゆくタスマニアがある。ホバートのサラマンカ・マーケット通りに連なる地元のアーティストたちのショップ、マッコーリー・ワーフの昔の建物を生かしながらデザインされたカフェの数々…。大きな産業がなく、人口の少ないこの地では、少量生産ながらも品質にこだわった農産物、水産物を作り、観光客にいかに訪れてもらうかを考えているようだ。レンタカーを借りて北に上がるもよし、内陸部に行くもよし、ぜひ海岸線をワーキング・ホリデー・メーカーや家族旅行の人には走ってもらいたい。
例えば、ホバートから南へA6号線を1時間半行くと、オイスター・コーブの次に、ペパーミント・ベイに着く。そこからホバートまでフェリーも往復しており、すばらしい景色の中にレストラン、ワイナリーがある。また、さらに下ること30分、山の中にあるチーズ工場の「グランビュー・チーズ(Grandvewe Cheeses)」。高台からはタスマン海が一望でき、工場の周りで羊、ヤギが穏やかに草を食べている。その後、海岸線を走り、ベーコン&エッグ・ベイを通過すると、絶景としか言いようのない場所が次々と現れてくる。…思わず深呼吸…。私は日本の「天の橋立」とどちらが美しいのだろうと、そんなことを思ったりした。ワーキング・ホリデー・メーカー、学生諸君、ぜひ彼女、彼氏とドライブしてみてください。さらに3時間ほど南下すると、私が視察に訪れる「ヒューオン・アクアカルチャー・カンパニー(Huon Aquaculture Company)」へと到着する。
■サーモンのお話
舗装されていない道を30分、こんな所に会社があるのか ? もしハンドルを切り損ねたら崖下に落ちてしまう。小さな標識に「Go to Heaven」と書かれている。もうちょっとで南極なのに、なぜかそんなに寒くない。
オーナーであるピーター・ベンダ氏に会う。彼は父親とともに牛の飼育をしていたが、20年前にこの地で鮭の養殖を思いつき、直径15メートルの円形のケージを2カ所に設置し、研究を始めた。夫婦で始めた養殖は今では設備投資額25億円。80カ所のケージを有し、300万匹以上のサーモンが育てられている。水深20メートルでもコンピュータ管理され、1匹1匹のサーモンの状況がカラー・モニターで見えるようになっている。この地は、潮の流れは早いが、水深5メートルくらいでもクリスタルのように底が透き通って見える。汚染されていない空気、海、そして山々から川に伝い海に入る自然の栄養分。驚くのはこんな辺境地に養殖場を作り上げたピーター・ベンダ夫妻の開拓者魂…。
この地の周りでもいたるところにアンガス種の牛が飼われており、ワイナリーがある。特にピノ・ノアール種が有名だ。川の上流にはトラウト(マス)釣りのスポットもある。ところで、ホバートからA10号線を2時間、内陸部を走るとニュー・ホーフォークに着く。ここはオーストラリアのサーモン発祥の地。Salmon&Trout Ponds Museumがある。約110年前、英国からこの地に、サーモンが遠路はるばる持ち込まれて放流されたとのこと。私はそこで稚魚のトラウトを成長させている施設を見学した。
今、オーストラリアのサーモンは値段が他国産より高いため、日本マーケットではなかなか苦戦しているとのこと。私どもは、1キロ約12ドル50セント程度で仕入れているが、脂分を控えめにしたオーストラリア・サーモン、またはタスマニア北西部「Petetuna」社が養殖しているオーシャン・トラウトは絶品の寿司ネタだと思うが、いかがでしょうか ? 商社の方々にご意見をお伺いしたい。
■あなたにもできる豪州でのレストラン経営
ところで、どんな業種でも商売として成功するのは全体の10%。本当に伸びるのは1%だと私は考えている。100店中10店だけの成功…。オーストラリアに移住してきた日本人、そのバックグラウンドの経歴は、観光会社、銀行員、看護師、農業など、人それぞれ。しかしその経験を生かしながらできる商売が日本の食文化を利用した飲食業だと思う。
私は20年前、キッチンハンドから始めたが、そのレストランで私は6カ月後にほとんどの料理を作っていた。その時思い付いたのは、自分は独立してレストラン経営ができるということだった。私は23歳だった。その店のメニューと同じメニューに加え、自分のオリジナル・メニューを提供すればよい。あとは情熱と経営能力だと考えた。読者のみなさん、私の考えは間違っていますか ?
また、自分でできないことはほかの人と一緒にやってみる。「1+1=2」だが、これは機械である。「1+1=2プラスα」にできるのが人間。鱒屋の店長ヒロコさんと調理のトモミさん、接客のリサさん、あるいは武蔵のサトミさん、調理のミユキさんとマリーさん。女性3人で組み、独立して店を経営してみてください。3人のスマイルで店は大繁盛します。あるいは、私の下で9年、7年と働いてくれているサジャール、ロイは、日本人スタッフの永井君、宮本君とスタートしてもいい。必ず自分たちの力で理想の店を作るという夢を持ってほしい。
『人の行く裏に道あり花の山』。オーストラリアに来た日本人が忘れそうになっているもの。それは「開拓者精神」−Frontier Spirit ! だと思う。
次回、「私と自然」最終その4では、11月に旬を迎えるシドニー・ロック・オイスターの成育を紹介するとともに、NSW州全域をカバーしながら、北はバイロン・ベイから南はベガまで、主要なオイスター産地5カ所を私の思い出とともに案内していく。みなさん、オイスターが2000年前のローマ帝国の時代から人々を虜にしてきた食材であることを知っていましたか ? 今日はこれまで。Have you enjoyed ?
■刺し身よりおいしいサーモン料理レシピ
サーモン・グラブラックス
Salmon Gravlax(スカンジナビア料理)
<材料>
新鮮なサーモンの半身 1.5kg
塩 50g
砂糖 55g
ディルのみじん切り 30g
<作り方>
皮付きのサーモン半身の身側に刻んだディルと塩、コショウ、砂糖を振りかける。身をラップでピッタリと巻いて冷蔵庫で24時間置く。薄くスモーク・サーモンのようにスライスして、皿に盛る。ブラック・ペッパーとオリーブ・オイルをお好みで少々振りかける。レモンをかけても良い。ワインに合う格別の料理。

筆者プロフィル
本名:定松勝義。鱒屋レストラン・グループ社長。1961年12月5日生まれ。愛媛県北条市出身。84年、ワーキング・ホリデーで来豪。85年、オーストラリア移住。現在、シドニー市内で「武蔵」「誠」「鱒屋」のレストラン3店舗を経営。「1年間にわたり、連載をさせていただくにあたり、食の仕事を通じての20年間の思い出、自然、人とのかかわりを3部構成にして語っていきたいと思います」
|
その他の注目記事: |


































